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沈む軍艦は誰のもの? 露艦「モスクワ」はウクライナの「水中文化遺産」になれるのか

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  • 乗りものニュース
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南の海に沈む旧日本海軍の軍艦がダイビングスポットになっているという話を耳にしますが、現状でそれらの所有権はどこにあるのでしょうか。そうした、沈んだ軍艦と「水中文化遺産」をめぐるお話です。

巡洋艦「モスクワ」を「水中文化遺産」に

 2022年4月21日、ウクライナ国防省は自身のFacebookページ上で、ロシア海軍黒海艦隊の旗艦であり、同年4月14日に沈没した巡洋艦「モスクワ」について、これを「水中文化遺産に登録した」と発表しました。

Large 220517 mos 012009年頃の巡洋艦「モスクワ」(画像:George Chernilevsky、Public domain、via Wikimedia Commons)。

「水中文化遺産」とは、2001(平成13)年の国連教育科学文化機関(UNESCO)総会において採択され、2009(平成21)年に発効した「水中文化遺産保護条約」で定義されているものです。ウクライナ国防省によると、「モスクワ」はウクライナにおける2064番目の水中文化遺産にあたるとのことです。

 同条約はそもそも、トレジャーハンターによる沈没船やその積載物の違法な取引への対応として起草されており、商的利用の禁止や原位置保存(移動や引揚げできない)を原則としています。

「モスクワ」はウクライナ軍の攻撃によって沈没したとされていますが、しかしそれでもれっきとしたロシア海軍の軍艦です。そのような「モスクワ」をウクライナが、引き揚げできない水中文化遺産に登録することなどできるのでしょうか。

沈没した軍艦の扱いはどうなっているのか?

 国際法上、軍艦は民間船舶とは異なり、その所属する国家の主権を体現した存在として、旗国(艦艇に掲げられている旗の国)以外の管轄権(国家が一定の人や物に対して有する権限)に服することはありません。これを「免除」といいます。これは、どの国にも属さない公海上はもちろん、他国の領海や港においても認められ、たとえば他国の警察官が軍艦に勝手に乗艦して乗員を逮捕することなどは許されません。

 そしてこの免除は、たとえ軍艦が沈没したとしても失われることはありません。旗国が明確にその軍艦に関する権利を放棄するなどしない限りは、どの国の領海内に沈没したとしても、引き続きその軍艦は旗国に属することになります。そのため、たとえば平時に他国が勝手にその軍艦を引き揚げたり、あるいは艦内のものを勝手に持ち出したりすることは、基本的にはできません。

Large 220517 mos 02ハワイ沖に沈む、真珠湾攻撃に際して使用された特殊潜航艇「甲標的」(画像:Public domain/Lone Wolf Productions提供)

 ちなみに、たとえば武力紛争中に一方の国が敵国の軍艦を海上で捕獲した場合、その軍艦に関する権利は捕獲した側に移ります。そして、そこで何らかの要因によってその軍艦が沈んだ場合、それは捕獲される前の旗国ではなく沈没時の旗国、つまり捕獲した国の軍艦として取り扱われることになります。ただし、一度沈んでしまった敵国の軍艦を捕獲することはできず、捕獲というためには当該軍艦が水上に浮かんでいるときにそれが行われなければならないと考えられています。

かつて沈んだ軍艦の「所有者」は誰?

 このように、軍艦は沈没してもなお引き続きその国に属するものとして扱われるため、この軍艦に関する権利も引き続きその旗国が有し、さらにそれは単に年月の経過によって失われるものでもありません。たとえば、太平洋戦争中に沈没した旧日本海軍の軍艦に関しても、日本政府が放棄するまでは基本的に引き続き日本の国有財産として取り扱われます。

 実際に、1943(昭和18)年6月に山口県の周防大島沖で爆沈し、1000名以上の乗員が命を落とした旧日本海軍の戦艦「陸奥」に関して、それから約30年後の1970(昭和45)年から開始された作業により民間のサルベージ会社がこれを引き揚げた際には、まず「陸奥」という国有財産の払い下げ契約が結ばれ、そののち引き揚げが行われています。

Large 220517 mos 03米西戦争時代のアメリカ軍戦艦「メイン」号(画像:アメリカ海軍)。

 また、世界随一の海軍力を有するアメリカについても、たとえば1898(明治31)年2月15日にキューバのハバナ湾で爆沈した戦艦「メイン」号を含む、米西戦争中に沈没したアメリカ海軍の軍艦に関して、1908(明治41)年にキューバ政府がそれらの内の自国領海内に沈没した軍艦に関する権利の所在をアメリカ政府に確認したところ、アメリカが引き続きそれらに関する所有権を有すると回答しています。

「モスクワ」の水中文化遺産「登録」はどうなる?

 さて、話を「モスクワ」に戻しますが、ウクライナによる「モスクワ」の水中文化遺産登録という主張は妥当なものなのでしょうか。結論からいうとこれは、法的にはかなり問題があります。

 まず、「モスクワ」は沈没前にウクライナ軍が捕獲したわけではなく、したがってこれは引き続きロシアに属しています。そのため、ウクライナがロシアの軍艦を勝手に自国の水中文化遺産と主張することはできません。

 そしてなにより、「モスクワ」は沈没してからまだ1か月ほどしか経過していないため、「川や海に沈んでから100年以上が経過した遺跡や船など人類の歴史的な遺産」とするこの条約上の水中文化遺産の定義には当てはまらないのです。加えて「水中文化遺産」とは登録申請する類のものではなく、水中に没し100年を経過した時点で自動的に水中文化遺産となる、という性質のものです。したがって、「モスクワ」に関するウクライナ側の主張は、妥当とはいえないでしょう。

Large 220517 mos 04「国有財産」として民間業者払い下げられ、戦後30年の後に引き揚げられた戦艦「陸奥」。沈没の引き金となった爆発事故の原因は諸説ある(画像:アメリカ海軍)。

 現在、水中文化遺産保護条約は70か国余りが締結していますが、アメリカや日本、そしてロシアなど、商業だけではなく軍事力の一環として海洋を利用する多くの国々がこれに加わっていません。その大きな要因のひとつとして、海底に沈んだ軍艦に対する権利に関する考えの違いなどが挙げられますが、特に日本に関しては、太平洋戦争から100年後の2045年までにどのような進展が見られるのかが注目されます。

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