ハイテク戦闘機がローテク無人機に苦戦!? ドローンの欠点「遅さ」を逆手に取った“攻撃ヘリ”の逆襲
- 乗りものニュース |

高速の戦闘機を悩ますドローンの“遅さ”
近年の戦争で最も顕著な変化のひとつは、安価な無人機が戦場の様相を一変させたことにあります。従来は高価な巡航ミサイルや弾道ミサイルが用いられていた長距離攻撃の分野でも、数百万円から数千万円程度で調達可能な自爆型ドローンが、数十億円規模の地上の航空機あるいは重要な軍事インフラに対して深刻な脅威を与える時代が到来したのです。とりわけ近年の中東やウクライナにおける戦訓は、従来の防空思想だけではこうした新たな脅威に対処できない現実を浮き彫りにしました。
高速の戦闘機では鈍足のドローンを相手にするにはオーバースペックだった(画像:アメリカ空軍)
興味深いことに、自爆型ドローンの短所である「低速性」は、時として迎撃側を悩ませる要因となっています。
広く使用されているイラン製の自爆型ドローン「シャヘド136」の巡航速度は150~200km/h程度です。航空兵器としてはきわめて遅く、第二次世界大戦時のレシプロ戦闘機よりも低速といってよいでしょう。一見すると容易に撃墜できそうに思えますが、実際には事情はそれほど単純ではありません。
現代のジェット戦闘機は、極めて高度なセンサーと強力なミサイルを備えているものの、低速目標の迎撃には必ずしも適していません。例えば、最新鋭の戦闘機であっても失速を避けながら飛行できる最低速度は、おおむね時速300~400km/h前後です。つまり、自爆型ドローンよりも大幅に高速で飛行していることになります。
この速度差は迎撃において深刻な問題を引き起こします。戦闘機はドローンを発見しても、あっという間に追い越してしまい、照準を維持する時間が極めて短くなるのです。まして機関砲による射撃では、接近速度(両者が近づく速さ)が大きすぎるため、命中させること自体が困難であるだけではなく、衝突による墜落のリスクも伴います。
また、機関砲ではなく空対空ミサイルでドローンを撃墜することは可能ですが、高価なため費用対効果の面では決して理想的とは言えません。
実はドローン迎撃に最適!? 攻撃ヘリコプターの再評価
そこで再び脚光を浴びているのが攻撃ヘリコプターです。攻撃ヘリコプターは固定翼機と比較して著しく低速で飛行できます。巡航速度は時速200km/h程度であり、これは自爆型ドローンの速度域に近く、目標との相対速度を小さく抑えながら追尾できることを意味します。つまりドローンの速度に合わせて「伴走」しながら攻撃できるのです。
アメリカ陸軍の主力攻撃ヘリコプターAH-64E「アパッチ・ガーディアン」。対ドローン迎撃という新たな役割で注目を集める(画像:アメリカ陸軍)
対イラン戦争ではこの特性を活かし、イランが発射した自爆型ドローンの迎撃において、AH-64「アパッチ」攻撃ヘリコプターが実戦投入されています。とりわけ有効な兵装とみなされているのが、機首下部に装備されたM230チェーンガンです。
M230 30mm機関砲はもともと地上の攻撃に適した兵装であるものの、毎分625発の連射能力を有し、空中の低速目標への射撃に適しています。さらに近年では、近接信管を備えた30mm弾の運用が注目されています。この種の砲弾は目標近傍で自動的に炸裂し、多数の破片を飛散させるため、直撃しなくともドローンを破壊できる可能性があります。小型なドローンに対して、至近弾でも効果を発揮できることは極めて大きな利点です。
タンクキラーからドローンキラーへ
攻撃ヘリコプターの対ドローン能力は中東だけで確認されている現象ではありません。ウクライナでもMi-24攻撃ヘリコプターが無人機迎撃に活用されており、その有効性が広く認識されるようになりました。
30mm機関砲弾を装填する「アパッチ・ガーディアン」(画像:アメリカ陸軍)
かつて攻撃ヘリコプターは戦車を狩る「タンクキラー」として発展を遂げましたが、携行型地対空ミサイルの普及等によって脆弱性が露わとなり、その存在意義が問われる場面も少なくありませんでした。
しかし、戦争の歴史は兵器の価値が新たな戦術によって再定義されることの繰り返しでもあります。低速であることは長らく攻撃ヘリコプターの弱点と考えられてきました。ところが、自爆型ドローンという新たな脅威の出現によって、その低速性こそが長所へと転化したのです。
空を支配するのは、必ずしも最も速い戦闘機だけとは限りません。時として、ゆっくり飛ぶことのできる兵器こそが、新しい戦争において最も合理的な迎撃手段となるようです。
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