隣に寝るのは魚雷!? 狭小住宅より狭く、身体を動かすことも難しい、潜水艦の“ライフスタイル”とは
- 乗りものニュース |

魚雷と肩を並べて就寝!? 想像以上に狭い潜水艦の暮らし
海上自衛隊では現在、「おやしお」型、「そうりゅう」型、「たいげい」型の3タイプ、約25隻の潜水艦を運用し、常に日本近海で任務にあたっています。さて、この潜水艦という乗りものに、皆さんはどのようなイメージを持っていますか。「暗い」「狭い」「窮屈そう」……まさにその通りです。暗く、狭く、窮屈な潜水艦での生活。その一端をのぞいてみましょう。
海上自衛隊が誇る海の精鋭、潜水艦部隊。艦内生活はかなり大変?(画像:海上自衛隊)
海上自衛隊では発足当初には、アメリカ海軍から供与された潜水艦を運用していました。これらは水上艦による対潜訓練の標的艦として使用されていたといいます。
その後、標的としてだけでなく対潜哨戒任務も担うようになると、数をそろえることを目的に、「はやしお」型や「なつしお」型など、基準排水量1,000トン以下の小型潜水艦が数多く建造されました。
しかし、装備の増加とともに対潜任務が本格化した現在では、基準排水量約3,000トン級へと大型化が進みました。また、長時間浮上せずに任務を遂行できる独自の燃料電池も開発され、潜水艦は現代の対潜任務に欠かせない存在となっています。
潜水艦の性能が向上し、長期間にわたって海中で任務を遂行できるようになった一方で、乗組員の苦労も大きくなっています。かつての排水量1,000トン以下の小型潜水艦では、隊員が少し移動しただけで船体のバランスが崩れ、海中を真っすぐ航行することさえ難しかったといいます。船体が大型化した現在では、そのような苦労は少なくなりましたが、それでも外部から隔離された狭い空間で、大勢の人が共同生活を送る大変さは変わりません。
数少ない楽しみは「食事」。驚きの食材収納術も
任務中は基本的に3交代制で、乗組員は24時間体制の警戒監視にあたっています。他国海軍の潜水艦では、ベッドを2人で共有し、1人が任務中にもう1人が眠るという運用をしている例もあります。しかし海上自衛隊では、基本的に1人につき1台のベッドが用意されています。
乗員用の2段ベッド。慌てて起きたら頭をぶつけそうな狭さ。しかし、隊員たちにとっては唯一のプライベート空間(画像:凪破真名撮影)
とはいえ、そのベッドは寝返りを打つのがやっとという細長い三段ベッドです。艦内スペースの都合から、魚雷保管庫の隣に設置されることもあり、魚雷と肩を並べて眠る隊員もいるそうです。
休憩時間であっても激しい運動は禁止されています。何しろ酸素は貴重です。そのため、水上艦で行われている艦上体育も潜水艦では基本的に実施できません。
また、音が外部に漏れることも避けなければならないため、大声で笑ったり歌を歌ったりすることもできません。音楽を聴く際も、イヤホンを使用して小さな音で楽しみます。このように娯楽が極めて少ない環境で長期間生活する乗組員にとって、数少ない楽しみが食事です。
海上自衛隊には調理を専門に担当する給養員という職種がありますが、潜水艦に配属されるのは特に腕の良い隊員だといわれています。それほどまでに、潜水艦での食事は乗組員にとって重要なのです。
一方で厨房は非常に狭く、わずかな音や振動でさえ敵に情報を与えるおそれがあります。そのため、調理中も細心の注意が必要です。ごく小さな音にも気を配りながら、限られた設備でおいしい食事を提供する。
それが潜水艦給養員の任務なのです。艦内の冷蔵庫や食料庫も決して広くありません。そのため、食堂の長椅子の内部に収納スペースを設け、ニンジンやジャガイモなどの食材を保管しています。まるで狭小住宅の収納術のようです。
個室があっても休めない。潜水艦艦長の過酷な日常
この狭い艦内で唯一個室を与えられているのが艦長です。とはいえ、個室といってもソファ兼用のベッド、執務机、折り畳み式の洗面台があるだけの小さな部屋です。ここで寝起きし、洗面台でひげを剃って身支度を整え、執務も行います。
潜水艦で唯一個室が与えられているのが艦長。写真奥のソファが寝るときはベッドになる(画像:凪破真名撮影)
しかし、一度任務に就くと艦長にはほとんど睡眠時間がありません。乗組員は3交代制で勤務しますが、艦長には交代要員がいないためです。
さらに、8時間ごとの当直交代には必ず立ち会わなければならず、休憩中でも不測の事態が起これば直ちに現場へ向かい、指示を出さなければなりません。潜航中は常に緊張を保ち続ける必要があり、潜水艦勤務のなかでももっとも過酷な任務のひとつといえるでしょう。
さて、このような潜水艦での生活を実際に体感できる施設があります。広島県呉市にある「てつのくじら館」です。
ここには、かつて海上自衛隊で実際に運用されていた潜水艦「あきしお」が陸上展示されています。艦内の一部は資料展示室となっていますが、細い通路や狭い居住区画などは当時のまま残されており、潜水艦乗組員の暮らしや苦労を身近に感じることができます。
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