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「通勤特急が山を登るの!?」 わずか1編成のみの「万能すぎる異端児」健在! “いいとこ取り”な出自とは

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通勤特急なのに“山登り”!

 南海高野線の特急は、世界遺産・高野山への観光輸送を担う「こうや」と、沿線の通勤輸送を担う「りんかん」の2種類があります。それぞれに専用の車両が用意されていますが、この両方の性格を併せ持つ31000系電車が存在します。どのような経緯で誕生したのでしょうか。

Large figure1 gallery2南海31000系電車(安藤昌季撮影)

 31000系は、1999(平成11)年に登場した特急用車両です。4両1編成のみが製造され、特急「こうや」「りんかん」の両方に使われています。

 この車両は、「りんかん」の11000系によく似た外観を持ちながら、急勾配の山岳区間へ乗り入れる性能を持っています。いわば「11000系を山へ登れるようにした」ような車両で、まさに観光特急と通勤特急の“いいとこ取り”をした存在です。なぜこのような車両が生まれたのか、高野線特急の歴史を紐解きます。

 南海高野線の特急「こうや」は、1951(昭和26)年に運転を開始しました。翌年には本格的な座席指定特急となり、戦前に貴賓車として造られた展望室付きの豪華車両クハ1900号が投入されるなど、高野山への観光輸送を担う看板列車としてスタートしました。

 その高野線特有の事情から生まれたのが「ズームカー」です。高野線は、大阪市内の平坦な区間では高速性能が求められる一方、橋本~極楽橋間の山岳区間では最大50パーミルもの急勾配を登る必要があります。この相反する性能を両立させた車両を、カメラのズームレンズになぞらえて「ズームカー」と呼びました。1958(昭和33)年に登場した21001系は、その名を冠した高性能車両でした。

 そして1961(昭和36)年、初の本格的な専用特急車である20000系「デラックスズームカー」が「こうや」用に登場します。スイスの特急列車を意識したデザインで、内装は高島屋が担当。国鉄の一等車並みの回転式リクライニングシートや自動ドアを備える豪華車両でした。しかし、この20000系は1編成しか製造されなかったため、車両検査時には運休したり、一般車両が代走したりと、運用上の余裕が全くないという課題を抱えていました。

観光と通勤、それぞれの進化

 20000系の後継として1983(昭和58)年に登場したのが30000系です。この車両は4両編成が2本製造され、1編成しかなかった20000系の問題を解消。「こうや」の通年運転が可能になりました。この30000系は現役です。

 30000系は運用に余裕が生まれたことで、難波~橋本間の通勤需要を対象とした特急、通称「H特急」にも使われました。その後、高野線沿線では橋本林間田園都市などの開発が進み、通勤需要がさらに増大します。これを受け、1992(平成4)年にH特急は正式に特急「りんかん」と命名され、専用車両として11000系がデビューしました。

 ここでおもしろいのが、車両のサイズです。「こうや」用の30000系は、急カーブが連続する山岳区間を走るため、車体長が短い17m級となっています。一方、「りんかん」用の11000系は、平坦な橋本駅までしか走らないため、一般的な20m級の大型車体を採用できました。こうして「30000系=極楽橋まで登れる17m級の観光特急」「11000系=橋本までの20m級の通勤特急」という役割分担が明確になったのです。

 この2種類の特急の考え方を融合したのが、1999(平成11)年に登場した31000系です。この車両は既存車両の置き換えではなく、「こうや」の増発や、「りんかん」の8両編成化といった輸送力増強を目的として製造されました。

 外観は通勤用の11000系に似ていますが、山岳区間を走行できる17m級車体という条件は観光用の30000系から受け継いでいます。つまり、見た目とサービス面では11000系「りんかん」の流れを、走行性能と車体サイズでは30000系「こうや」の流れを汲む、まさに両者をまとめた「増備車」なのです。

 また、前頭部に貫通路を備えているため、11000系や30000系と連結することも可能です。座席は定員を重視した回転式リクライニングシートで、手堅い座り心地を提供します。なお、製造コストを抑えるため、一部に廃車発生品が流用されており、VVVFインバータ制御が主流だった当時としては保守的な「抵抗制御」が採用されているのも特徴です。

 南海高野線では、31000系のほか、1983年生まれの大ベテランである30000系も特急「こうや」として今なお現役です。最近では新型観光列車「GRAN天空」も登場しましたが、現在のところ、特急車両の新型車製造は発表されていません。これは、既存の車両がそれだけ「よくできた」車両であることの裏返しともいえるでしょう。

 今後、車両の置き換えがあるとすれば、現在発表されている関西空港特急「ラピート」の後継車両が登場した後になると思われます。過酷な山岳路線で活躍する31000系が、これからも末永く活躍することを願ってやみません。

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