デンタルフロス、歯間ブラシを使うのは「歯磨き前」or「歯磨き後」? 歯科医師からの意外な回答とは
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デンタルフロスや歯間ブラシの正しい使い方とは?(画像はイメージ)
歯周病や虫歯を予防する際にデンタルフロスや歯間ブラシを使う人は多いと思いますが、歯磨きの前に使うべきか、歯磨き後に使うべきか迷った経験はありませんか。
デンタルフロスや歯間ブラシは歯を磨く前に使うのが正しいのでしょうか。それとも、歯を磨いた後に使うのが正しいのでしょうか。医療法人社団D&J ひらの歯科医院(新潟市西区)理事長で歯科医師の平野大輔さんに聞きました。
「前」派と「後」派、それぞれの考え方
Q.デンタルフロスや歯間ブラシは歯を磨く前に使うのが正しいのでしょうか。それとも、歯を磨いた後に使うのが正しいのでしょうか。
平野さん「結論からお伝えすると、私は『前でも後でも、どちらでも構わない』と考えています。どちらが絶対に正しい、という決まりはありません。
歯科医師や歯科衛生士の間でも、考え方は分かれます。私が聞いたところでは、予防歯科が進んでいることで知られるスウェーデンでは、先にフロスや歯間ブラシで歯と歯の間をきれいにして、それから歯ブラシで全体を磨く、という順番が一般的なのだそうです。
この『前』派の考え方は、『一番磨きにくく、いちばん虫歯や歯周病になりやすい場所から先に手をつける』というものです。歯磨きの最後になると、疲れや眠気で歯間のケアを省略してしまいがちですが、先にやってしまえばその心配がありません。また、先に歯と歯の間の汚れを取り除いておくことで、そのあとの歯磨きで使う歯磨き粉のフッ素が、歯と歯の間にも行き渡りやすくなるという考え方もあり、実際に、フロスを先に使ったほうが歯と歯の間の汚れがよく落ち、フッ素も残りやすかったという研究報告もあります。
一方、『後』派の考え方は、『まず歯ブラシで全体の汚れを大まかに落としておき、最後に、歯ブラシで取り切れなかった大事なところを仕上げる』というものです。全体がきれいになってから歯と歯の間に集中できるので、どこが磨けていないかが分かりやすい、という利点があります。
どちらにも理にかなった理由があり、国や考え方によって推奨される順番が違うのは、そのためだと思います」
大事なのは「順番」より「両方を念入りに」
Q.普段、歯ブラシやフロス、歯間ブラシについて、どのような使用法をアドバイスしていますか。
平野さん「私が患者さんにお伝えしているのは、順番よりもずっと大事なことがある、ということです。それは、歯ブラシも、フロスや歯間ブラシも、どちらも念入りに行うことです。
歯ブラシは毎日のお手入れの基本ですが、歯ブラシだけで口の中のすべての場所を磨くことはできません。歯ブラシだけでは、歯の表面のおよそ7〜8割程度しか清掃できないといわれています。残りの汚れの多くは、歯ブラシの毛先が届かない、歯と歯の間に残っています。どんなに上手に歯磨きをしても、歯ブラシだけでは限界があるのです。
そのため、できるだけ毎日、フロスや歯間ブラシを使っていただきたいと思っています。『前』か『後』かで迷うよりも、ご自身が続けやすい順番を決めて、習慣にしてしまうこと。それがいちばんの近道です。
私がそう強く思うようになったきっかけの一つに、ある患者さんのケースがあります。その人はとても熱心にフロスを使ってくださっていて、右下、左上、左下と、毎日きちんとフロスを通していました。ところが、右上だけは『手が入れにくくて、やりにくいから』と、ずっと使っていなかったそうです。そうしたところ、右上の歯と歯の間にだけ、虫歯ができてしまいました。
フロスをしていた場所には虫歯ができず、していなかった場所にだけ虫歯ができた。その結果を目の当たりにして、私は改めて、『やっぱりフロスはしっかりやるべきだ』と実感しました。やりにくい場所ほど、汚れが残りやすい場所でもあります。苦手な場所を後回しにせず、『やりにくいところこそ丁寧に』という意識を持っていただけるとうれしいです」
フロスと歯間ブラシの正しい使い分け
Q.そもそも、デンタルフロスと歯間ブラシの違いについて、教えてください。
平野さん「どちらも『歯と歯の間』をきれいにするための道具で、歯科では歯ブラシを補う『清掃補助器具』と呼んでいます。ただ、得意とする場所がそれぞれ違います。
【デンタルフロスは『すき間のない場所』が得意】
デンタルフロスは、細い繊維を束ねた糸状の清掃用具です。歯と歯がぴったりと接している部分(歯科では『接触点』や『コンタクト』と呼びます)にも糸を通すことができ、歯の側面に沿わせて動かすことで、汚れをこすり取ります。
歯と歯が重なり合っている部分や、すき間がほとんどない部分は、歯間ブラシの毛先が入りません。こうした場所をきれいにできるのは、フロスだけです。そして、この接触点のすぐ下は、汚れがたまりやすく、虫歯ができやすい場所でもあります。歯と歯の間の虫歯は外から見えにくいため、気づいたときには大きく進行していた、ということも珍しくありません。歯茎が引き締まっている若い人や、歯並びが重なり合っている人には、まずフロスをおすすめしています。
【歯間ブラシは『すき間のある場所』が得意】
歯間ブラシは、細いワイヤーにナイロンの毛がついた、小さなブラシのような形をしています。歯と歯の間にある程度のすき間がある場合に、その空間に差し込んで前後に動かして使います。
すき間が空いている場所であれば、清掃する力(清掃効率)は歯間ブラシの方が優れています。歯の根元はくびれた形をしているため、まっすぐな糸であるフロスでは届きにくい凹みがありますが、歯間ブラシはそうした部分にも毛先が当たり、汚れをかき出してくれます。歯周病の治療後や、年齢とともに歯茎が下がってすき間が目立ってきた方、ブリッジを入れている方などには、歯間ブラシが向いています。
【どちらを選ぶかは『すき間の広さ』で決める】
つまり、『フロスと歯間ブラシ、どちらが優れているか』ではなく、『歯と歯の間のすき間がどのくらいあるか』で使い分けるのが基本です。すき間がほとんどなければフロス、すき間があれば歯間ブラシ。そして同じ一人の口の中でも、場所によってすき間の広さは違いますから、前歯はフロス、奥歯は歯間ブラシ、というように両方を組み合わせて使うのも、ごく自然なことです。
歯間ブラシには太さの違いがいくつもあり、合わないサイズを使うと、汚れが落ちなかったり、歯茎を傷つけたりします。ご自身にどの道具が合っているか、どのサイズがよいかは、かかりつけの歯科医院で一度確認してもらうことをおすすめします」
インプラントの周りは「やさしく」が鉄則
Q.インプラント治療の歯にデンタルフロスや歯間ブラシを使う際の注意点について、教えてください。
平野さん「最近、インプラント治療を受けている人も増えてきました。インプラントの周りも、天然の歯と同じように清掃が必要です。
インプラントの周りに汚れがたまると、『インプラント周囲炎』という、歯周病に似た病気を起こし、インプラントを支える骨が失われてしまうことがあるからです。ただし、インプラントの周りの歯茎は、天然の歯の周りの歯茎とは性質が異なります。天然の歯には、歯の根と歯茎をしっかりと結びつける線維がありますが、インプラントの周りにはこの結びつきがなく、歯茎が表面に寄り添っているだけに近い状態です。
そのため、外からの力で歯茎とインプラントの間がはがれやすく、一度傷つくと細菌が入り込みやすいといわれています。また、海外では、インプラント周囲炎を起こした部位から、フロスの繊維がちぎれて残ったものが見つかったという報告もあります。フロスを強く押し込んだり、こすりつけたりすると、繊維が引っかかって残り、それが炎症のきっかけになる可能性が指摘されているのです。
インプラントの周りにフロスを使う場合は、歯茎の奥まで強く押し込まず、やさしく表面をなでるように動かすことが大切です。すき間があれば歯間ブラシ(ワイヤー部分がコーティングされたものがより安心です)を使う方法もありますし、インプラントの形や本数によっては、専用の清掃用具をおすすめすることもあります。インプラントのお手入れ方法は、治療を受けた歯科医院で、ご自身のインプラントに合った方法を教わってください」
オトナンサー編集部
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