【便秘】食物繊維を取りすぎて悪化 隠れた“病気”とは? 消化器外科専門医が教える改善の“コツ”
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便秘のときは食物繊維を摂取するのが望ましいといわれています。便秘気味のときに食物繊維が豊富な食べ物を食べる人は多いと思います。
一方、ネット上では「便秘のときに食物繊維を取ると、かえって症状が悪化する」という内容の情報があります。便秘のときに食物繊維を摂取するのは好ましくないのでしょうか。便秘を改善する方法や注意点などについて、大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック(大阪市北区)外科部長で、消化器外科専門医の所為然さんが解説します。
女性は男性よりも便秘になりやすい
現代社会で多くの人が便秘に悩んでいます。便秘とは、単に「便が出にくい状態」というだけではありません。「排便回数が少ない」「便が硬い」「残便感がある」「強くいきまないと出ない」などの症状が続く状態を指します。
便秘の原因は大きく分けて、生活習慣によるものと病気によるものがあります。生活習慣による便秘の主な原因としては、食生活の乱れや運動不足、ストレス、トイレを我慢する習慣などが挙げられます。特に現代の食生活は野菜の摂取量が少なくなる傾向にあるため、食物繊維や水分が不足しがちになり、便秘を引き起こしやすいです。
また、腸の動きが鈍くなることで起きる便秘もあります。腸の動きが弱くなると、腸の中で便がスムーズに運ばれず、その結果、水分が過剰に吸収されて便が硬くなってしまいます。
便秘になりやすい傾向がある人について、解説します。まず、女性は男性より便秘になりやすいことが知られています。これは女性ホルモンの影響や、妊娠・出産による骨盤底筋の変化が関係しています。
また、デスクワークが多い人や運動不足の人も便秘になりやすい傾向にあります。腸は運動することで刺激を受け、動きが活発になります。そのため、運動不足は腸の動きを鈍くする原因となります。
加齢とともに腸の働きが低下し、食事量が減るため、高齢者も便秘になりやすい傾向にあります。複数の薬を服用している人も、薬の副作用として便秘になることがあります。
食物繊維は「水溶性」「不溶性」の2種類
食物繊維は、私たちの体の消化酵素では分解できない食物の成分です。食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、それぞれ異なる働きを持っています。
水溶性食物繊維は、水に溶けてゲル状になる性質があるのが特徴です。ワカメやリンゴなどに多く含まれています。腸内で水分を吸収して膨らみ、適度な便のかさをつくり、便通を整える効果があります。また、腸内細菌の餌となって、腸内環境を整える働きもあり、便通改善に寄与します。
一方、不溶性食物繊維は水に溶けない性質があり、玄米や野菜の皮、豆類などに多く含まれています。不溶性食物繊維は腸の中で便のかさを増やし、腸壁を適度に刺激することで、腸が波打つように動く運動である「蠕動(ぜんどう)運動」を促進させます。また、便の水分量を調整する効果もあります。
食物繊維は、適切な量を摂取すれば便秘の改善に効果がありますが、効果を実感するまでには時間がかかることがあります。すぐに効果が現れないからといって、急に摂取量を増やすと一時的に症状を悪化させる可能性があります。
その理由は、主に3つあります。まず、食物繊維は水分を吸収する性質があるため、十分に水分を摂取していないと腸内の水分を奪ってしまい、かえって便を硬くしてしまう可能性があります。
また、食物繊維は腸内細菌によって発酵されますが、急に摂取量を増加させると過剰な発酵を引き起こし、おなかの張りやガスの増加を引き起こす可能性があります。
そして、腸が急な食物繊維の増加に適応できず、腸の運動機能が追いつかないことで、かえって便の滞留時間が延長してしまう可能性があります。
便秘にお勧めの食べ物は?
食物繊維を効果的に摂取するためには、段階的な増量が重要です。突然、摂取量を増やすのではなく、1週間ごとに少しずつ増やしていくことをお勧めします。現在の摂取量から1日1~2グラム程度増やすのが適切です。
また、食物繊維の摂取には十分な水分補給が欠かせません。食事の際はコップ1杯の水を飲むことを心掛け、1日の水分摂取量は「体重(kg)×30ミリリットル」を目安にしましょう。例えば、体重が60キロの人の場合、計算式は「60×30ミリリットル」となり、1800ミリリットルの水を摂取するのが望ましいです。
食物繊維は、水溶性と不溶性をバランスよく摂取することが大切で、最初は水溶性食物繊維の摂取から始めるのがお勧めです。果物やヨーグルトなど、普段から食べ慣れているものから取り入れていきましょう。
食物繊維を摂取する際の注意点は?
腸閉塞(へいそく)の既往がある人や腹部手術後の人は、食物繊維の摂取に特に注意が必要です。腸が狭くなっている場合、食物繊維の過剰摂取は腸閉塞を引き起こす可能性があります。
腸閉塞の患者に対しては、腸管内に詰まった内容物を出すために「イレウス管」と呼ばれる管を鼻から挿入します。私が専攻医だったころ、腸閉塞の患者のイレウス管を洗浄すると、ワカメやシイタケなどが入っているのをよく見つけました。
ここで特に強調しておきたいのは、急に便秘になった場合や、便秘の症状が今までと異なる場合は、大腸がんの可能性も考える必要があるということです。特に、次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
【大腸がんの疑いがある主な症状】
・便が細くなった
・血便がある
・原因不明の体重減少がある
・便秘と下痢を繰り返す
・50歳以上で新たに便通異常が出現した
また、過敏性腸症候群の人や慢性的な便秘の人も、急激な食物繊維の摂取は症状を悪化させる可能性があります。このような場合は、必ず主治医に相談の上、個別の対応を検討する必要があります。
腸に負担をかけない、消化の良い食事のことを「低残渣(ざんさ)食」といいます。特に腸閉塞が疑われる場合のほか、腸の検査前や手術前後などに用いられます。
低残渣食の場合、食物繊維の少ない食材を選び、消化しやすい調理法で調理します。具体的には、白米、うどん、パン(食パン)、豆腐、卵、脂肪の少ない肉や魚、煮込んだ野菜などが中心となります。野菜は繊維を断つように細かく刻んで、よく煮込むことがポイントです。
ただし、低残渣食は特別な場合の一時的な食事療法です。通常の生活では、十分な食物繊維を含む、バランスの取れた食事を心掛けることが大切です。
食事内容を変更する際は、体調の変化に注意を払い、必要に応じて医療機関に相談することをお勧めします。急激な変更は避け、徐々に体に合った食事スタイルを見つけていくことが、便秘改善の近道となります。
便秘は単なる症状ではなく、重要な病気のサインである可能性もあります。原因をしっかりと見極めた上で、適切な対応を取ることが大切です。
オトナンサー編集部
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