実は「〇〇式」の命名ルールはない!? 16式機動戦闘車や装輪装甲車、命名バラバラな理由 基準はないの?
- 乗りものニュース |

なぜ「中距離多目的誘導弾」には○○式と付かない?
2026年8月31日、防衛省が2027年度予算の概算要求として8兆8908億円を計上したことが話題となっています。
2016年度予算で調達が開始された16式機動戦闘車(武若雅哉撮影)
概算要求の中身を見てみると、新装備を数多く調達する予定であることがわかりますが、陸上自衛隊の装備には「25式高速滑空弾」や「25式偵察警戒車」、さらには「24式装輪装甲戦闘車」など、名称の頭に「〇〇式」という冠称が付いているものがある一方、「装輪装甲車(人員輸送型)AMV」や「中距離多目的誘導弾」など、「〇〇式」と付かないものも多数あります。
この違いは何なのでしょうか。そもそも、どのような基準で装備名は決まるのでしょうか。
まずは、「〇〇式」という装備品です。この「〇〇式」という装備品の名称は、2007(平成19)年8月まで施行されていた「制式」という制度によって「制式化」された装備品に対し命名されてきました。
防衛省における制式とは、装備品の諸元、主要な構造、装備品の型式の統一に必要な事項を記載した「制式要綱」という文書を根拠として、防衛大臣(かつては防衛庁長官)がその装備品を「制式化」していました。つまり、制式化された装備品が「〇〇式」と命名されていたわけです。
この「○○式」という冠称は、「その年度の防衛予算から調達が開始されたこと」を示しています。そのため、90式戦車は1990年度予算から調達が開始されたので、「90式」と命名されています。よって、たとえば完成まで数年かかるような装備品の場合、調達が開始されたとしても実際に配備されるのは数年先になるため、この数字は、イコール「配備された年度」にはなりません。
しかし、この制度は2007(平成19)年9月に「装備品等の部隊使用に関する訓令」が施行されたために廃止されています。そのため、これ以降に採用された装備品には、「制式化」は行われていません。
では、制式化が廃止されたあとは、一体どのようにして、装備品の命名を行っていたのでしょうか。それは、「部隊使用承認」という形で行われてきました。
30年前から○○式と付かない「高機動車」
「部隊使用承認」とは、まず自衛隊のあらゆる装備品について、業務車などの防衛専用以外の車両や、築城器材、営舎内の備品等の「通常装備品」と、それとは別に、航空機、火器、弾薬、防衛専用車両、水中武器、電波器材、通信システム、指揮統制システムなどの、国防に必要不可欠な「重要装備品」の2種類に区分します。
1990年度予算で調達が開始された90式戦車(武若雅哉撮影)
次に、そのなかで特に重要装備品に区分される装備品については、陸海空の各幕僚長が防衛大臣に対して、部隊において使用するための承認を得るために、使用申請をします。この申請内容には、重要装備品に関する「名称」「諸元」「構造」などの型式を統一するために必要な項目が記載されています。
この申請を受けた防衛大臣は、その内容を審査して、部隊での使用が認められると判断した場合に、その装備品の「部隊使用承認」を行っているのです。よって装備品の名称は、(制式制度に関わらず)この部隊使用承認を受けることによって命名されるともいえます。
ちなみに、この部隊使用承認は制式制度があった時代にも行われていて、通常装備品と重要装備品の全ての装備品が部隊使用承認を受けています。それには、制式化された90式戦車なども含まれており、すなわち「制式要綱」と部隊使用承認という、ふたつの文書・手続きを根拠として90式戦車を名乗っていたともいえるでしょう。
一方で、たとえば制式化制度廃止以前の車両であっても「○○式」となっていない装備品があります。1993(平成5)年から調達された高機動車や、2001(平成13)年から調達された軽装甲機動車などがそれに該当します。
前出の説明だと、これらも部隊使用承認の申請をする時点で諸元や構造などが決められているはずで、一見して「制式要綱」に必要な情報は揃っているようにも思えます。では、これらはなぜ制式化されていないのでしょうか。
「統一の型式にまとめる必要のない装備品である」と判断するか否か
理由は、それらの装備品が民生品の部品を流用するなどしてコストの削減などを図っていることから、特に制式化して、統一の型式にまとめる必要のない装備品であると判断されているためです。
2022年度予算で調達が開始され、国内でライセンス生産している装輪装甲車(人員輸送型)AMV(武若雅哉撮影)
つまり、厳密に制式化する必要がある装備品については制式化されましたが、そうでない装備品(民生品流用など)は制式化されていない、ということになります。そのため、たとえば高機動車は「〇〇式高機動車」という命名がされなかったのです。
しかし、こうして解説していくと、ある矛盾に気が付きます。それは、制式制度が廃止されたあとに登場した「〇〇式」という装備品の存在です。たとえば、「16式機動戦闘車」や「25式高速滑空弾」です。制度が廃止されたのに、なぜ「〇〇式」が付いているのでしょうか。
結局のところ、制式化を廃止した後にも「〇〇式」という命名方法については慣例として残ったからです。それは2010(平成22)年度予算で調達された10式戦車や、2025(令和7)年度予算で調達が開始された25式偵察警戒車などを見ても明らかです。これは、制式制度の廃止による経過措置であると解釈することができます。
注目したいのが、2015(平成27)年10月1日に改正された「装備品等の部隊使用に関する訓令」の附則3項の記載事項です。「旧訓令はこの訓令の施行後も、なおその効力を有し、当該制式の廃止については、従前の例による」と明記されているのです。
つまり、これまでの制式制度に則った装備品については、それが廃止されるまで、これまでどおりのルールで扱われるということを示しています。すなわち、制度変更の過渡期である傍証といえるかもしれません。
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