レアアース眠る「一人で歩いてはいけない島!?」 本土から1860km“日本最東端”の過酷な実態
- 乗りものニュース |

絶海の孤島「南鳥島」は"ひとりで歩いてはいけない”
日本の本州から約1860km離れた日本最東端の離島が「南鳥島」です。民間人は住んでおらず、観光目的でも訪問できない南鳥島は、原則的には国の職員、または調査・取材・役務として認められた人しか立ち入ることができません。ふだん、どのような活動が行われているのでしょうか。
日本の最東端・南鳥島。1.5平方キロメートルの小さな島に、防衛省(海上自衛隊)・国土交通省(関東地方整備局+気象庁)の職員が常駐(画像:気象庁)
南鳥島の面積は約1.5平方キロメートルで、「皇居とほぼ同じ」大きさです。ここで海上自衛隊は周辺の警戒監視を行う一方、地対艦ミサイル装置の一次展開や射撃訓練場の整備を進めています。また、気象庁では「南鳥島気象観測所」を設置し、後述する複数の重要な気象観測を24時間体制で行っています。
これら海上自衛隊・気象庁・関東地方整備局の職員合わせて約25名ほどが南鳥島で職務にあたっているといいます。本州との渡航には海上自衛隊の飛行機を使います。
また、南鳥島には病院がないため、外を歩く際も「1人で歩いてはいけない」と言う厳格なルールがあります。
そもそも島内の道路の大部分は未舗装路。限られた舗装路はサンゴ石を砕いて敷き詰めて固めたもので、いずれにしても転ぶと怪我をしやすいと言われています。そのため、大怪我をしないために複数人で移動をし、細心の注意をはらって生活をしているそうです。
島内に「乗りもの」は結構多い!?
そんな南鳥島にも職員が使う「乗りもの」が複数あります。気象庁の担当者に話を聞きました。
「南鳥島気象観測所には乗用車、マイクロバス、4輪バギー、2tトラック、3tダンプがあり、島内での人の移動や物を運ぶのに使っています。島内の道路の大部分は未舗装路なのですが、特に各施設の点検で海岸の砂地などを移動する際、4輪バギーが活躍しています。
また、南鳥島は視察などで訪れる人や、観測所の観測機器、発電所などの設備点検で訪れる業者は多く、乗用車で乗りきれない場合はマイクロバスを使って移動します。
なお、これら車両のほかに、観測所ではホイルローダー、ミニパワーショベル、ラフテレーンクレーンも所有しており、観測所職員が運転・操縦して観測施設周辺の環境整備、道路の補修、荷役等のため運用しています」(気象庁・担当者)
ちなみに燃料は年に一度船で運び、電気は発動発電機で発電、水は海水から塩分を除去し消毒して使用しているそうです。
また、職員のための食料や物資は週に一度、自衛隊航空機によって輸送が行われており、後述の高層気象観測などで使う水素ガスなどの危険物や大型機材は、年に一度、船で補給されているといいます。
この夏は史上3度目の「全員逃げろ――!!」に
その南鳥島に常駐していた職員全員が、2026年7月30日から8月24日にかけて島外避難することになりました。猛烈な台風第13号が南鳥島に向かって西進し、暴風、高潮・高波によって職員に危険がおよぶことが予想されたからです。
もちろん、本来の職務も一時中止となりましたが、気象庁職員によれば、こういった事態は過去2度ほど経験しているとのことでした。
「台風影響での島外避難は、これまで2006(平成18)年台風第12号、2009(平成21)年台風第10号の2回ありました。
平成18年台風第12号のときは、滑走路や観測所周辺に土砂が侵入するなど被害が大きく、職員が再渡島できるまで時間がかかりました。また、観測所の設備においても地上気象観測をおこなっている露場(屋外)や観測所の1階に浸水があり、さらにライフライン設備に故障なども生じ、観測再開まで約1か月かかりました。
今回台風の強さが猛烈となること、進路が南鳥島に向かっていることから重大な被害が予想されたため、島外避難することになりました。防衛省のご協力で輸送機に乗せてもらい、迅速に本州へ避難することができました」(気象庁・担当者)
南鳥島で行われている重要な気象観測4選
南鳥島の写真で見る美しい景色に反し、かなり過酷であることが伝わってきますが、気象庁はここで以下のような重要な気象観測を行っています。
高層気象観測の様子。1日2回、気球に吊るしたGPSゾンデを飛揚して観測。観測値は衛星回線を使用して、気象庁へ送られる(画像:気象庁)
◆地上気象観測
地上における気圧、気温、湿度、風向・風速、降水量、日照時間などの観測を24時間行う。
◆高層気象観測
気球に吊り下げた測器で上空約30kmまでの気圧、気温、湿度、風向・風速の観測を1日2回、9時および21時に行う。そして、地上気象及び高層気象の観測データは衛星経由で気象庁本庁に送られ、気象の実況監視や予報等で活用される。
◆大気バックグラウンド汚染観測
温室効果ガス、オゾン、日射放射など大気環境の観測を行う。南鳥島は人間活動の影響が極めて小さく、大気環境観測において理想的な場所であることから、世界で33か所ある世界気象機関(WMO)の全球大気監視計画の「全球観測所」に指定されている。
◆遠地津波観測
海底付近に設置したセンサーで海面の高さを24時間観測し、データを衛星経由で気象庁本庁に送る。チリ沖等の巨大地震で発生した津波の場合、本土到達の約1時間半前に検知することができる。
日々観測を重ねることで重要な気象データを蓄積するもの、そして津波や台風などの急を要する防災に関連するものがあるわけですが、いずれにしても全国1300か所あるという気象庁の観測所の中でも、南鳥島気象観測所は重要性が高い要衝と言われています。
だから「南鳥島での観測」が重要!
先の台風による避難の後、安全確認が取れたところで職員は再び南鳥島へと渡り、約1カ月後の8月下旬に気象観測活動を再開しました。
「1000km以上周りに観測点がない南鳥島では、極めて貴重なデータが得られ、日々の天気予報や防災気象情報に役立てられていくのはもとより、人間活動の影響が小さいことから地球温暖化の基礎資料としても重要な観測点となっています」(気象庁・担当者)
こういった過酷な環境での職員の職務・活動によって、日々の気象情報や安全が守られているのだと思うと、改めて尽力する職員の方々には頭が下がる思いです。
また、南鳥島は近年話題の海底に眠っているというレアアース採掘、日本の排他的経済水域(EEZ)を維持・管理する拠点として、また防衛省が整備を進めている国内初の実射訓練場として、今後さらに注目が高まることでしょう。同時に、多くの人が知らない意外な逸話がまだまだありそうだとも思いました。
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