改札から直で明治神宮初詣 最後に 変わる原宿駅 昭和10年代の世相から生まれたホーム
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JR山手線で3つの「鉄道遺産」をもつ原宿駅は改良工事の真っ最中。明治神宮直結の臨時改札は今度の初詣が最後となります。東京都内最古の木造駅舎は解体、建て替えへ。北側の「宮廷ホーム」とあわせて、それぞれの歴史と変化に迫ります。
「駅から直接神宮へ」は今回限りに
JR山手線の原宿駅(東京都渋谷区)には、貴重な鉄道遺産ともいえるものが3つあります。そして、そのうちの2つが2020年に終焉を迎えてしまいます。
都内最古の木造駅舎の原宿駅駅舎(2019年12月、内田宗治撮影)。
ひとつ目は明治神宮と直結する「臨時ホームと臨時改札」。例年初詣の時期だけ利用されてきましたが、今回2020年の初詣の時期をもって最後となります。
普段使われていない臨時ホームは、片側が山手線外回り線路に面し、その反対側は明治神宮の杜の樹木です。現在、原宿駅は駅改良工事中ですが、2年くらい前まで、臨時ホームの背後だけ見れば、山の中のローカル線の駅のような風情を漂わせていました。
臨時ホームの中ほどに臨時改札があり、ここを通ると、そこはもう明治神宮の境内。駅を出た瞬間、樹木がうっそうと繁り神々しい空間にいきなり入り込むといった形です。こうした経験ができるのは、今回限りというわけです。
臨時ホームについては、まだ存在するものの、工事が始まっていた2019年の初詣の時期も使用されませんでした。2020年初詣時期も臨時ホームを使用するわけではなく、この上に設けられた仮設通路を通るだけなので、正確に言えば、今回で本当に最後なのは、臨時改札の利用ということになります。
明治神宮隣接の臨時ホームはいつからあるのか
原宿駅改良工事について、簡単に述べておきましょう。原宿駅は初詣の時期に限らず年間を通して、竹下通りや表参道、代々木公園、明治神宮などを訪れる人で、ひとつしかない通常のホームは大変な混雑となっています。その改善として、現行の通常ホームを山手線内回り専用に変更し、臨時ホームを外回り用に改修。さらに表参道改札も拡張して、混雑緩和を図ろうというものです。2020年3月21日(土)に新駅舎が供用開始され、旧臨時ホームは通常のホームとなり、明治神宮と直結する臨時改札は無くなります。
工事が始まる前の原宿駅。写真左側に臨時ホームが見える(2014年、内田宗治撮影)。
原宿駅の臨時ホームが出来たのには、昭和の前半、戦時色が濃くなってきたという重たい歴史と関わりがあります。
順を追ってみていくと、原宿駅が開業したのが1906(明治39)年、隣接した地に明治天皇を祭神とする明治神宮が造営されるのが1920(大正9)年です。また都内で最古の木造駅舎である現駅舎の竣工が1924(大正13)年。八角形の塔を乗せた英国ハーフティンバー風スタイルで、当時都会に流行った大正モダンの明るい雰囲気を感じさせます。
ところが昭和に入ると不況が長引き、1937(昭和12)年には日中戦争が始まって、戦争の暗い時代に突入します。1940(昭和15)年開催予定のオリンピックが東京に決定していましたが、戦争が泥沼化していき1938(昭和13)年には東京での中止を決定。政府は「贅沢は敵だ」のスローガンを掲げ、資源不足、軍事物資の輸送優先などのため、観光旅行の自粛を呼びかけます。
原宿駅の都内最古「木造駅舎」は解体へ
そうしたなかで開かれたのが皇紀二千六百年記念式典です。1940(昭和15)年が神武天皇の即位から2600年目に当たるとされ、その記念行事とともに、明治神宮、橿原神宮(奈良県橿原市)、伊勢神宮(三重県伊勢市)など皇室の聖地を訪ねる旅行だけが奨励されました。鉄道省はこの年、伊勢神宮と橿原神宮をセットにした割引乗車券などを発売しています。翌年は米国や英国を敵とする太平洋戦争が始まってしまうわけですが、政府は、国民が挙国一致で戦争遂行にあたる精神的支柱として、皇国思想の発揚につとめた時期です。
国民は長く旅行を自粛していたこともあり、これらの神社に全国から多数の旅行者が押しかけました。原宿駅で臨時ホームの使用が開始されたのは、こうした時期でした。
工事中の原宿駅舎。写真左側は明治神宮(2019年12月、内田宗治撮影)。
原宿駅でもうひとつ失われてしまうのが、前述の都内最古の木造駅舎です。2019年11月にJR東日本が解体を発表した際は、テレビや新聞でも取り上げられましたので、ご存じの人も多いでしょう。地元では解体に反対する声も多く上がりましたが、駅周辺は防火地域に指定されていて、現状では法律が求める耐火性を保てないことを理由に解体を決定したといいます。
東京オリンピック後に解体し、防火地域の基準に適した材料を使用して、現駅舎の意匠を再現して建て替えられる予定です。
「宮廷ホーム」は平成時代に入り利用機会が減少
原宿駅での3つ目の鉄道遺産は、当面無くなるものではありませんが、代々木駅寄りに約200m離れてある原宿駅側部乗降場、通称「宮廷ホーム」です。皇室専用なのでこう呼ばれ、上屋のあるホーム、車寄せ、待合室などがあります。
なぜこんな所にあるのかというと、大正天皇の病状悪化のためでした。東京駅での乗降だと人目に付くため、目立たずに乗降できるようにと当地に造られたわけです。
原宿駅宮廷ホームを公道から望む(2019年12月、内田宗治撮影)。
1926(大正15)年8月、大正天皇は初めてこのホームを利用して葉山御用邸(神奈川県葉山町)へと向かわれます。そしてこのホームに戻られることはなく、同年12月に葉山御用邸で崩御されました。
昭和天皇は、崩御前年の1988(昭和63)年でも6回、多い年では20回以上、お召し列車(天皇、皇后、上皇、上皇后、皇太后が乗る特別列車)の乗降にこの宮廷ホームを利用しています。東海道本線・常磐線利用時は東京駅(昭和30年代後半は原宿駅宮廷ホーム)、中央本線・東北本線利用時は原宿駅宮廷ホームでの乗降でした(日本鉄道旅行地図帳編集部編『昭和天皇御召列車全記録』より)。
お召し列車の運転では、他の列車がお召し列車の上を通過してはならない、とされていました。原宿駅宮廷ホーム発着の場合、駒込~田端・上中里間または恵比寿~目黒間でお召し列車の走る山手貨物線の上を山手線電車が通ります。この場合、山手線電車は上記の各駅長の指示待ち停車となり、駅長がお召し列車の通過を確認してから電車の出発合図を出していました(1964〈昭和39〉年の例)。
山手貨物線が埼京線などに旅客転用され、その後も湘南新宿ラインで過密ダイヤ化などもあり、平成時代に入ってからは天皇の利用機会が減少。2001(平成13)年5月を最後に宮廷ホームは利用されていません。
2020年に失われる臨時改札、駅舎とともに、宮廷ホームが今後どうなるかにも注目していたいと思います。
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