「撮り鉄」の迷惑行為を最新技術が防ぐ!? 鉄道写真にも生成AIの波 相鉄とアドビが体験イベント
- 乗りものニュース |
写真撮影で写り込んでしまった不要なものも、最新の生成AI技術なら編集や除去ができてしまいます。今回、相鉄とアドビが、この生成AIを活用する体験イベントを開催しました。
最新車両の貸切列車で車両基地へ
鉄道写真にも、生成AIを活用する時代がやってきました。
参加者はレールファンから親子連れまで多士済々(2024年11月24日、栗原景撮影)。
2024年11月24日、相模鉄道とアドビがコラボレーションしたワークショップイベント「楽しく撮り鉄!生成AIで鉄道写真もっと簡単に!」が開催され、164組の応募の中から抽選で選ばれた31人が参加しました。
近年の生成AIの進化により、写真を手軽に、かつ高い精度でブラッシュアップさせる編集機能が充実しています。そこで今回のイベントでは、鉄道写真の撮影時に写り込んでしまう不要なものを、最新の生成AI技術によって編集・除去する体験をしました。
より楽しく、安全に鉄道写真に親しむ方法を提案することが主な目的です。同時に、昨今一部で問題になっている、撮影のために線路沿いの樹木を無断で切るといった迷惑行為を防止し、周囲に迷惑をかけずに鉄道写真を楽しむ方法の啓発も兼ねています。
イベントは、13時に相鉄本線星川駅(横浜市保土ケ谷区)でスタート。使用するアプリ(Adobe Express)を設定したあと、星川駅4番線から、21000系21109編成による貸切列車でかしわ台駅(神奈川県海老名市)へ向かいます。
車内ではくじ引きで選ばれた参加者5人による車内放送体験が行われました。くじ引きで「やりたい!」と言って見事当選したのは、お母さんと参加した吉田美知花さん(6)。「まもなく、やまと、やまとです」と、駅到着のアナウンスを上手に放送しました。
14時53分、団体列車はかしわ台駅に到着。隣接する車両センターに移動し、まずは車両基地に並ぶ車両の撮影会が行われました。検修庫に収まる12000系12006編成をはじめ、21000系、10000系、9000系といった相鉄の車両がずらりと並ぶ姿は壮観で、参加者は思い思いに撮影を楽しみました。
参加者が「乗務員の消去」に次々と成功
15時50分から、車両センターの会議室でワークショップがスタート。アドビの岩本崇マーケティングマネージャーを講師に迎え、サンプル画像を使って、「Adobe Express」による画像編集の基本を学びます。横浜駅のホームを歩く乗務員をなぞって「削除」をタップすると、画像から乗務員だけがきれいに消えました。参加者も次々に「乗務員の消去」に成功。先ほど車両センターで撮影した写真を使った編集にもチャレンジします。
ワークショップには、『日本のもじ鉄』の著者でグラフィックデザイナーの石川祐基さんもゲストとして登壇し、「Adobe Express」の編集を実演しました。12000系甲種輸送時の写真では、後部標識と、乗務員室に置かれた相鉄公式キャラクター「そうにゃん」の消去にチャレンジ。後部標識を消すなんてもったいない気もしますが、いずれもきれいに消せました。
アドビと相鉄の架け橋となったグラフィックデザイナーの石川祐基さん(2024年11月24日、栗原景撮影)。
実は今回のイベントは、石川さんがアドビに相鉄を紹介する形で実現したそうです。
「相鉄の方はとてもフレンドリーですし、“YOKOHAMA NAVYBLUE”をはじめとするデザインブランドアッププロジェクトに取り組まれていることから、アドビさんとの親和性が高いと考えて提案しました」(石川さん)
参加者による作品の講評に続いて、現役運転士から「電車に向けてフラッシュを使用しない」「私有地に入らない」「ホームから手や身を乗り出さない」「ホームに脚立や三脚を持ち込まない」「車両や機器類に触らない」「大きな声を出さない」といった撮影時の安全啓発のお話があり、17時に終了となりました。
今回のイベントについて、相模鉄道経営統括部で広報を担当する飛川和範さんは「イベントを通じて、鉄道の安全啓発につなげることができました。AIという新たな技術を使って、安全に鉄道と写真を楽しんでいただきたいですね」と総括。
アドビマーケティング本部の吉原淳さんは、「簡単に編集を楽しんでいただけたことはとても大きいです。私たちは“クリエイティブの民主化”を目指していて、多くの方に作品作りを楽しんでいただきたいと考えています。今までなら捨ててしまった写真を、新しい技術で甦らせるお手伝いをできたらと思います」と語りました。
いよいよ、鉄道写真の世界にもやって来た生成AIの技術。うまく活用すれば、シャッターチャンスが今まで以上に増えるかもしれません。
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