日本初「恐竜学部」 どんな授業してるの? 想定されるキャリアは? 福井県立大学が見据える未来
- オトナンサー |

福井県立大学恐竜学部・デジタル古生物学の例
2025年4月、日本初の恐竜学部が福井県立大学(福井県吉田郡永平寺町)に開設されました。本学部では、恐竜や地質学などについて座学で学ぶだけでなく、博物館などと連携した実践的なフィールドワークも行っています。中には、同学部でどんな授業が行われているのか、また、想定されるキャリアについて気になる人もいるのではないでしょうか。そこで、同学部の詳細について、学部長で古生物学者の西弘嗣さんに聞いてみました。
恐竜学部における2つの大きな柱 「自然科学」「デジタル科学」
筆者を含む多くの人は福井県立大学の恐竜学部について、恐竜好きの学生が集い、恐竜についてとことん学んでいると思っているのではないでしょうか。
そこで、同学部における学びの内容を聞いてみたところ、西さんは「恐竜学部には大きな柱が2つあります。1つは『自然科学』で、もう1つは『デジタル科学』です」と教えてくれました。そして、「恐竜のことばかり学んでいると誤解されがちですが、恐竜を通して自然科学やデジタル科学の技術などを学生は学んでいます」と続けます。「恐竜に興味がある人は、好きな恐竜を通して自然科学を熱心に学ぶ傾向があります」と、学生の特徴も教えてくれました。
西さんは「社会に求められる人材を『恐竜を使って』育成することを目的にしています」と、同学部設立の目的を話してくれました。その理由として、「災害時に対応できる人、インフラの整備に携われる人が求められています。地球温暖化や高度経済成長期に集中整備された社会インフラを更新する時期を迎える日本において、こうした分野で活躍できる人を育てることは大切だと思っています」と言います。
西さんは恐竜研究者になることは簡単ではないという現実を踏まえた上で、「『恐竜は窓口』です」と言います。そして、「恐竜や生物の研究ではデジタル科学は常に使われてきました。例えば、恐竜の頭の中をCTスキャンを使って覗き、見えないところをビジュアル化しています」と明かします。
恐竜をCTスキャンで調べた経験は社会におけるさまざまな場面で生かされる機会があるのです。
また、西さんは「研究者にならなくても、恐竜について自分で学び、関わりを持ち続けられます。仕事と並行しながら恐竜について学ぶこともできます」と話してくれました。
筆者自身は文学研究をしていますが、文学だけで生計を立てるのは容易ではなく、悩んでいます。西さんの言葉を聞く中で、恐竜をこよなく愛し、それを学びながら、自分の興味を起点に学びを広げている学生たちに、自身がふと重なりました。そうした思いを西さんに率直に伝えたところ、「登山や高いところを登るのが好きな人の中には、高層階の清掃をしている人もいますよ」と、にこやかな笑顔で教えてくれました。
自分の好きなものだけで生計を立てるのは難しいけれど、好きな分野と結びつけながら、自分も食べていけて、社会に貢献できる仕事に就く方法があると、改めて思いました。
勝山市と連携し、学生に学びを提供
恐竜学部の学生は、2年次以降の本拠地となる勝山キャンパスが所在する勝山市からも温かく見守ってもらっていると、筆者は感じていました。例えば、「福井県立大学恐竜学部生等生活応援事業」では、アパートなどの家賃助成や引っ越し費用の助成など、条件を満たせば受けられます。
西さんにこうした制度について話したところ、「勝山市には、若者が地域活性化に貢献できるため、市に住んでほしいという思いがあります。大学としても、地域の人と交流をすることで新しい発見があると思っています」と事情を話してくれました。
また、恐竜学部は美しく、モダンなキャンパスも魅力の1つですが、設計は国内外で数々の著名な建築を手掛ける建築家の隈研吾さん。ちなみに、福井県立恐竜博物館を設計したのは、隈さんの先輩にあたる建築家の黒川紀章さんです。同学部のキャンパスは博物館に近接する場所にありますが、西さんは「多くの人にキャンパスを見に来てほしいと思っています」と、笑顔で話してくれました。
恐竜学部の目玉となる学びは?
恐竜学部の公式サイトを見ていると「化石・レプリカの作成」「地質調査」「化石の発掘」など、ユニークな講義が多数掲載されています。
恐竜学部における最も目玉となる学びを西さんに聞いたところ、「3年次の海外発掘実習です」と教えてくれました。この研修はタイの恐竜発掘現場を実際に目にするという興味深いものです。
さらに、西さんは「県立大学で恐竜に関する国際学会が2025年に開催されました。学生はアジア各国の研究者と交流し、英語で話す体験もしています」と話してくれました。
未来社会で活躍できる人材を“恐竜”を使って育てたい
恐竜学部では、恐竜を使って実社会で役立つ知識やスキルを学びますが、学生の15年後、20年後を見据えたカリキュラムになっています。
というのも、西さん自身もAIの影響を強く感じており、ホワイトカラー職の将来に危機感を抱いているからです。西さんは「AIではカバーできない部分で貢献できる人材を育てていきたいです」と、教育者としての意気込みを明かしてくれました。
西さんと会話していると、同学部のアットホームな雰囲気を感じるとともに、好きなことを基軸に学び、キャリアを形成していく方法もあると改めて気付かされました。
西田梨紗
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