SNS「知らなかった」 自転車で“飲酒運転”すると「車の免許停止」になるって本当? 弁護士に真偽を聞く
- オトナンサー |
12月20日は「道路交通法施行記念日」です。1960年に道路交通法が施行されたのを記念して制定されたといわれています。12月は忘年会やクリスマスなどでお酒を飲む機会が増える人は多いと思います。2024年11月に改正道路交通法が施行され、自転車の「酒気帯び運転」が厳しく罰せられるようになりましたが、中には罰則強化の件を知らないのか、飲食店でお酒を飲んだ後、自転車で帰宅する人がいるようです。
ところで、SNS上では「自転車で飲酒運転をすると、自動車の運転免許の停止処分を受ける」という内容の情報が上がっており、「知らなかった」「意外と知らない人いるかもね」などの声が上がっています。自転車で飲酒運転をすると、車の免許の停止処分を受けるというのは本当なのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
免許停止の事例も

Q.そもそも、自転車で「酒酔い運転」や「酒気帯び運転」をすると、どのような罰則を科される可能性があるのでしょうか。「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の違いも含めて、教えてください。
牧野さん「そもそも自転車は道路交通法2条11号で、『軽車両』の一つに定義されており、同条8号で『軽車両』は、自動車などと同じ『車両』とされています。自転車での飲酒運転については、道路交通法65条で『何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない』と定めています。自転車もこの『車両等』に当たるので、自転車での飲酒運転も法律違反となります。
飲酒運転というと『酒酔い運転』『酒気帯び運転』という言葉を思い浮かべますが、その違いは何でしょうか。酒酔い運転は呼気中のアルコール濃度は関係なく、運転者の状況で判断され、『アルコールの影響により正常な運転ができない恐れのある状態』で、具体的には『真っすぐ歩けない』『ろれつが回っていない』などの状態を言います。酒気帯び運転は、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15ミリグラム以上検出された場合を指します。
罰則については、『酒酔い運転』の場合、『5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金』(道路交通法117条の2)が科せられる可能性があります。これは自転車も自動車も同じです。『酒気帯び運転』の罰則については、道路交通法117条の2の2に基づき『3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金』が科せられる可能性があります」
Q.自転車で飲酒運転をした場合、自動車の運転免許の停止処分を受ける可能性があると聞きますが、本当なのでしょうか。
牧野さん「本当です。自転車事故の増加で死亡事故にもつながる自転車の危険運転に厳しい目が注がれており、2024年11月の改正道路交通法施行により、自転車の酒気帯び運転が罰則の対象となり、運転免許が停止される場合や取り消される場合もあります。
道路交通法103条で『運転免許を受けた者が著しく交通の危険を生じさせる恐れがあるときは、6カ月を超えない範囲で免許の効力を停止することができる』とあり、これを根拠に愛知県の条例では、自転車で酒酔い運転をした場合、最大で180日間の自動車運転の免許停止処分を受けることを定めています。
実際に、福井県警は2025年11月に自転車で酒気帯び運転の違反をした人に対し、罰則でなく自動車の運転免許停止の行政処分を行っており、2024年11月に改正道路交通法が施行されて以降、自転車の酒気帯び運転による自動車の運転免許停止の行政処分は県内で初であると報道されています」
Q.もし自転車で飲酒運転をしたときに歩行者などにぶつかり、けがをさせてしまったり、死亡させてしまったりした場合、どのような罰則を科される可能性があるのでしょうか。
牧野さん「自転車での交通事故によって他人を死亡させたり、けがをさせたりした場合、刑法209条1項の過失傷害罪(30万円以下の罰金または科料)や刑法210条の過失致死罪(50万円以下の罰金)、刑法211条の業務上過失致死傷罪(5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)に問われる可能性があり、そのほか、民事上の損害賠償責任も負います。酒酔い運転や酒気帯び運転の状態であれば、先述の道路交通法の罰則も同時に適用される可能性があります」
Q.自転車で飲食店に来ている人にお酒を勧めた場合、勧めた側にも法的責任が生じる可能性はあるのでしょうか。
牧野さん「道路交通法117条の2などに規定があり、お酒を勧められた人が自転車で酒酔い運転した場合、勧めた側も3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を科される可能性があります」
Q.自転車で酒酔い運転や酒気帯び運転をした場合、何らかの講習を受けなければならないのでしょうか。
牧野さん「都道府県公安委員会が、酒酔い運転や酒気帯び運転をした人などを対象に、自転車の運転による交通の危険を防止するための講習『自転車運転者講習制度』を行っています。これは、自転車を運転中に信号無視や一時停止違反などの危険行為(16類型)を行い、交通違反として取り締まりを受けた、または、交通事故を起こして送検された者に対し、都道府県公安委員会が自転車運転者講習を受講する旨を命じる制度です。
3年以内に2回以上取り締まりや事故を起こした人が対象で、3カ月以内に受講時間3時間、手数料6150円の講習を受けなければなりません。受講命令に従わなかった場合は5万円以下の罰金に処せられる可能性があります」
オトナンサー編集部
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