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寝台特急が「ドア全開」で5km逆走! 東京の日常だった「客車が先頭」運転 空から捉えた11年前の記録

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「北斗星」の推進回送を振り返る

 推進運転は細かい定義がありますが、一般的には機関車牽引(けんいん)の客車列車において、最後尾の客車が先頭となり、機関車が後ろから押して運転することを指します。例として、営業列車ではスイッチバック構造の線路の走行、非営業列車では車両基地からの回送列車が行き止まりの頭端式ホーム構造へ入るケースが挙げられます。

Large figure1 gallery5上野駅の頭端式地平ホームに進入する「北斗星」回送列車。左は高架ホームへと続く線路。幾度となく行われてきた光景も過去のものとなった(2015年7月13日、吉永陽一撮影)

 また、小湊鐵道の「里山トロッコ」、大井川鐵道井川線、嵯峨野観光鉄道などは、客車列車の最後尾に運転台付き制御車を連結し、片道を推進運転する運用方法を用いています。大抵は機関車+客車数両を一つのユニットとしており、欧州などでも一般的な列車の運用方法で、制御車の運転台は回送用の簡易的なものではなく、電車や気動車の運転台まわりと同じような造りです。

 JR各社ではそもそも客車列車が風前の灯火であり、推進運転が見られるケースはわずかです。客車列車が残存しているのは、JR東日本の「SLばんえつ物語」とイベント用旧型客車、JR西日本の「SLやまぐち号」35系客車、JR九州の「ななつ星in九州」。JR北海道の「ノロッコ号」は2026年10月に運転が終わります。これらはいずれも観光列車であり、ブルートレインに代表される日常利用向けの定期列車は、すでに廃止されています。

 そこで、JRにおいて日常的な列車の推進運転はどのような光景だったのか、2015年に廃止された「北斗星」の推進運転の回送「推進回送」を空からの光景で振り返ります。月日が経つのは早いもので、11年前の上空記録です。

 2015年は「トワイライトエクスプレス」と「北斗星」、二つの寝台特急が去った年でした。始発の上野駅は線路がスルー方式の高架ホームと、頭端式構造の地上ホームの2段構えで、「北斗星」は地上ホームから発着していました。

 かつて、上野駅発着の長距離列車といえば客車列車でした。上野発の下り列車は約5km北側の尾久駅に隣接する尾久客車区、後の尾久車両センターから推進回送で到着し、乗客と荷物を満載にして発車していきました。上り列車はその逆で、尾久に回送される際に、機関車を最後尾にしてホームを去る姿が見られ、日暮里駅や鶯谷駅にいると客車が先頭になって走り去っていく光景が何十本も見られました。

 時代は客車から電車へと発展し、国鉄からJR東日本となってからも、ブルートレインは客車列車が主流で、頭端構造の上野駅へ向け、本線上を客車が推進回送していました。尾久~上野間の推進回送は、全国的に見ても他に例もないほどの長距離で運用されていたのです。

 推進回送では先頭の客車貫通路が開け放たれ、「ラッパ屋」と呼ばれる推進運転士が前方を注視します。推進運転士の手元にはブレーキ弁や警笛を備えた携帯用制御盤が置かれ、この警笛音がラッパに似ているから、推進運転士がラッパ屋と呼ばれる所以だとのことです。

 2015年、推進回送の行う客車列車は24系「北斗星」と、E26系「カシオペア」でした。これらの列車は不定期運転とはいえ、季節臨時列車として最後の活躍をしていました。E26系は車端部が展望スイートルームです。最後尾の推進運転士は展望ガラス内側のため、空撮してもほぼ分かりません。そこで「北斗星」の24系ならば、通常閉ざされる貫通路が開放され、推進運転士が乗務する光景が空からでも見えるので、推進回送だと判別できます。

 推進運転は15時台です。夕方のため斜光となって影が出やすくなる時間帯ですが、7月半ばならば影も出にくいです。尾久車両センター内でEF510形電気機関車が連結され、推進回送が発車。上空から眺めると、客車が先頭なので逆走しているように見えますが、一瞬で切り取った一枚で、客車が先頭を走る姿を表現せねばなりません。先頭でドアを開放している24系に注目します。

「北斗星」は鶯谷駅を横目に通過し、速度を緩めて大きくカーブします。その先は2段構造の上野駅構内。複雑なダブルスリップポイントを通過し、高架ホームの直下に潜り込んでいきます。「北斗星」は地上ホーム13番線へと、ゆっくり停車していきました。

 2025年6月にはE26系カシオペア車両が引退し、都内で見られる推進回送は過去帳入りしました。ラッパ屋の存在も鉄道の歴史の1ページとなっていくことでしょう。

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