「これは鎖骨を刀で斬られた江戸時代の侍の骨」子どもたちが人骨から推理! 「ドコモ未来フィールド」のアカデミック体験レポ
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なんと通常は一般公開されていない「国立科学博物館 筑波研究施設」で学べるーー!? 国立科学博物館全面協力のもとNTTドコモが企画した「ドコモ未来フィールド×国立科学博物館企画」に、マイナビ子育てが潜入! 人類学の研究者によるワークショップや収蔵庫見学ツアーを通して、子どもたちがプロのセカイに触れてきました。
人骨が並ぶ部屋で、子どもも大人も興味津々
3月29日正午すぎ、つくばエクスプレスのつくば駅に集まったのは20組40人の参加者のみなさん。応募総数1,628組の中から抽選で選ばれた当時4年生から6年生の子どもたちとその保護者は、みな一様に緊張感のある面持ち。これから向かうのは、一般公開されていない場所だからでしょうか。
駅前からバスに乗り込み「国立科学博物館 筑波研究施設」に到着すると、入口の「関係者以外立入禁止」の文字が緊張感をよりいっそう煽ります。
国立科学博物館 筑波研究施設に入館!
まずは、今回アテンドしてくれる国立科学博物館 人類研究部(イベント当時) 研究員 森田航さんによるあいさつと、スライドを使った人類学の解説です。
頭蓋骨を前に解説する森田さん。研究分野は「歯の人類学」だといい、歯の形態を筑波の施設で研究したり、海外へ発掘研究に行ったりしているそう
スライドで展開した「類人猿とヒトでは顎や歯の大きさが異なる」理由について、森田さんは「どうしてだと思う?」などそのつど質問。子どもたちは「頭の重さが違うから?」「四足歩行をしているから」など積極的に発言し、正解に導かれていきました。
思わず大人も引き込まれてしまうような、わかりやすい人類の進化についての講義のあと、いよいよワークショップです。
本物の人骨を並べる!? 骨からヒトを学ぶ
4班に分かれた子どもたちの前に、それぞれ箱が置かれます。蓋を開けると、バラバラと骨が出てくるではないですか。子どもたちは本物の頭蓋骨をじっと見つめたり、ためらいながらそっと触れてみたり、まだまだ消極的な様子です。
森田さんから「実際に生きていた人たちの骨です。敬意を持って扱ってください」と大切なアナウンスがありました。この骨で何をするのかというと、人の全身を再現していくというのです。でも目の前にある骨は、頭蓋骨以外、単なる棒のようにも石ころのようにも見えます。
初めての人骨を前に、戸惑う子どもたち
するとスタッフが「これは?」と指さした大きな骨を見ると、「あ! 腰だ!」ととたんに沸く子どもたち。それからはどんどん前のめりになり、「これは足じゃない?」「骨盤ってこんなに大きいかな? 違う場所の骨かな」と初対面にも関わらずみんなで話し合って組み合わせていきます。
スタッフがヒントを出すと「このくぼみにはまりそう!」など、どんどんひらめきが加速する
しばらくすると、理科室にあることでおなじみの骨格標本が登場。真剣な眼差しで人骨を手に標本と比べにいき、どの部位の骨なのかを探り当てていきます。「もー! 全然わからん!」など子どもらしい発言が見られつつ、なんとか人の形に近づくと、お次はゴリラやチンパンジーの骨が登場。人骨とのさまざまな違いに子どもたちは素直に驚いていました。
人骨と標本を前に集合写真! プログラム終了後、写真は記念品として持ち帰ることができるそう
「みなさん、そろそろ次のプログラムです」
森田さんからそう声がかかると、「えーー!」「まだ完成していない!」「やっと人になってきたのに!」と声をあげる子どもたちも。いつの間にはワークショップ開始から1時間が経過していました。完成を見守っていた大人も、熱心に森田さんの話を聞いていた大人も、ちょっぴり名残惜しそうでした。
収蔵庫で貴重な標本や剥製をゼロ距離観察
次は、こちらも普段は一般公開されていない収蔵庫の見学ツアーへ。ただでさえ広い建物ですが、森田さんが「標本が多すぎてさらに新しい棟を作った」と解説、研究資料の膨大さを物語ります。そしてやってきたのは「人類標本室」。ナフタレンの匂いが漂う明るい部屋には、床から天井までの棚がズラリ。棚の中には古い頭蓋骨が整然と並んでいます。
この収蔵庫だけで2万体近くの人骨が大切に保管されているそう
森田さんがあらかじめ用意してくれたネアンデルタール人の化石の埋葬レプリカを前に、どうやって埋葬されたのかを解説し、「野蛮だと言われがちだったネアンデルタール人ですが、こうした骨の様子から、亡くなった子どもをきちんと埋葬していたことがわかります」と、化石からわかる時代の特徴について解説します。
さらにここで森田さんが伝えたいのは、歯から時代背景が紐解くことができる、ということ。
「この人骨は歯が抜けていますが、この時代のこの地域の人は、下の前歯だけをめちゃくちゃ抜いているんです。これは虫歯じゃなく、明らかに意図を持って抜いています」と森田さんの話に、熱心な表情の子どもたち
子どもたちは骨の語りに、「縄文人は、宗教上の理由で歯を抜いていた?」「大人になる儀式ですか?」と鋭い考察を繰り広げます。さらに縄文、弥生、古墳、鎌倉、室町、江戸と各棚に並ぶ頭蓋骨を比較し、時代により骨が変化することも学びました。
さらにその後、剥製の収蔵庫へ。
案内してくれるのは、「モグラが好き」だといい「モグラ博士」の異名を持つ哺乳類分類学を研究する川田伸一郎さんです。扉を開けると、小学校の体育館より何倍も広そうな収蔵庫に、大きな動物の剥製がズラリ。ライオン、ホッキョクグマ、トナカイ、アザラシ、キリン……と動物園でおなじみの動物や、見たこともない動物の合間をぬって歩いていると、あまりの迫力に思わず保護者にしがみつく子どもの姿も。
ここにある剥製は、個人の剥製収集家であるハワイの実業家で故ワトソンT・ヨシモトさんより寄贈された約420点ほか、全国の動物園で亡くなった動物などさまざま。川田さんも「2年前くらいに数えて全部で1,740点くらいでした。正直言って、着任当初は知らない動物ばかりでしたね」と言うほどです。
「普段こんなに間近で動物を見られないと思うので、角のつき方や足の数などを比較してみるといいですね」と、川田さんは子どもたちに剥製の見方を教えてくれます。
さらに大人には、「奄美のクロウサギを自分で剥製にしていますが、最近ではいっきに20個とか冷凍で届くから大変」「剥製師に依頼すると×万円かかる」とこっそり教えてくれるサービス精神も見せてくれ、大満足の収蔵庫ツアーでした。
子どもたちが鋭い考察で導き出す、昔の人々の生前の姿
収蔵庫ツアーを終えると、休憩時間にも関わらずみな人骨に集まり夢中で議論。
ある小学4年生の男の子は「さっき完成させられなかったから、名残惜しくて作りに来たんです」と、細かい指の骨を手に熟考しています。さらに小学6年生の女の子も骨の前から離れません。もともと理科が好きだったのかと聞くと、「いや、お母さんに言われて来たんです。いままで触れたことのない話題だったからあまり興味がなかったんですが、今はすごく興味が湧いています。帰ったら理科の勉強をがんばりたい」と熱く話してくれました。
たった数時間前とは目つきがあきらかに違う子どもたち、その吸収力のすごさを目の当たりに
再度班に分かれて観察を開始しますが、ここからはさらに骨の人物像に焦点を絞っていきます。「男の人と女の人では頭蓋骨の形が違う」「歯が黒く塗られているのは、お歯黒という文化」「後頭部や腕に刀傷がある」「肋骨辺りの色が違う」……などの手がかりから、性別、年齢、さらに死の間際まで浮き彫りになっていきます。
最後に、それぞれの班の人骨の人物像を発表します。「骨盤が広がっているから、この骨は女性です」「第3大臼歯が生えているので18歳以上だと思います」という考察に、「よく観察していますね!」「鋭い!」と森田さんは合いの手を入れていきます。
みんなの前で発表。恥ずかしがりつつ、マイクを持つと理路整然とこれまで学んだことを話す子どもたち。頼もしい!
ある班が「頭蓋骨に傷がついているので、逃げながら頭のうしろを斬られ、鎖骨辺りにも傷があるので、とどめを刺されたんだと思います。これは江戸時代の人骨なので、侍だと思います」と発表すると、森田さんが「すばらしい! 殺人事件のストーリーが骨から判明したようですね!」と盛り上げるのでした。
気づくと終了予定時間をオーバーしていましたが、誰一人飽きずに知的好奇心を満たした時間だったよう。森田さんは「みなさんの洞察力がすばらしかった」「自分がどういう存在なのか、人間がどうなっていくのか考えるきっかけになってほしい」と話し、全プログラムが終了しました。
お土産は撮影したばかりの記念写真のほか、科博オリジナルのクリアファイル、ボールペン、手帳、そして6月15日まで上野の国立科学博物館で開催中の『古代DNAー日本人のきた道ー』の無料観覧券など
森田さんに聞く! 研究者に向いているタイプの子って?
最後に、森田さんにインタビューを敢行。そこには、親が知りたい子どもの「ミライ」へのヒントが溢れていました。
国立科学博物館 人類研究部(イベント当時) 研究員 森田航さん
ーー森田さんが研究者を志したのはいつごろですか?
森田さん 中学や高校のころから、マヤ文明やアンデス文明などにすごい興味を持っていて、中米や南米の考古学をやりたいなと思っていました。最初に発掘調査に参加させてもらったのは学部生のころで、場所はエルサルバドルでした。そのとき、初めて掘ったのがたまたま埋葬後の遺跡で、人骨がたくさん出てきたんですね。
そのころは、考古学では人骨をあまり扱わないことすら知らなくて。でも僕は土器や石器よりも人骨の方に興味があったので、「僕がやりたいのは考古学ではなく人類学の方なのかな」と思うようになり、自然人類学の道に進みました。
ーー人類の進化の研究をするなかで、一番おもしろいと思うのはどんなところですか?
森田さん 僕は大きくわけて2つのプロジェクトをやっています。ひとつは発掘調査ですが、発掘調査は本当に一期一会というか、ヒトの化石など重要な化石を実際に自分の手で掘り上げたときが、一番興奮しますね。
もうひとつは歯の進化の研究をやっています。進化の過程で歯の形はさまざまに変わってきたのですが、形が変わるということは、その発生過程が変化した結果として生じます。その発生過程で何が起こるのかを知りたくて、スンクス(ジャコウネズミ)という生き物を使って研究しています。そのときに「この遺伝子が効いて歯の形が変わるのか」など意外な発見があると、そこに行き着くまでにすごい時間がかかるのですが、「自分がやっている研究はいい方向に進んでいるんだな」と思い楽しい気持ちになります。
ーー今回、森田さんが印象に残った子どもたちの姿は?
森田さん 人骨を並べたとき、最初の5分や10分でなんとなく人の形に並べていけていたのは「すごいな!」と思いました。あとは、収蔵庫ツアーのとき、縄文時代と弥生時代の人骨を見せながら、「この人たちはどういう生活をしていたんでしょう」と聞いたとき、「稲作をやっていた」など反応が早かったんですよね。子どもたちの頭の回転の早さに驚いたし、おそらく学校で習った知識がちゃんと入っていて、こういう場所でもちゃんと結びついているんでしょうね。
ーー研究者を志す子どもがいたら、いつごろ進路を決めたらいいですか?
森田さん 日本の教育制度でいうと、中学・高校の時点で文系と理系にわかれてしまいますが、僕自身は文系で大学に入っているんですね。考古学は文系にあたるので。でもそのあと、理系の自然人類学に行くことになるんです。そんなふうに、大学院で文系から理系へ、理系から文系へと進路を変更することは普通にありえます。なので、自分がやりたいことが何なのかと考えたときに「◯◯だから文系」「××だから理系」など区分けせずに知りたいことを追求していくのがいいと思います。
ーー研究者になりたい子ども、今回人類学に興味を持った子どもたちにメッセージをお願いします!
森田さん 今回のことで生物学や人類の進化など、人類学に興味を持ってもらえたら僕もうれしいです。博物館にぜひ来ていただきたいですし、人類学を専攻したいと思わないとしても、今回なにかひとつでもおもしろいと思えるポイントがあったとしたら、突き詰めて「これがやりたい」と思えるものを見つけて、それに向かって努力してほしいなと思います。
ーー「突き詰める」は研究者に重要な資質だと思いますが、「僕は・私はそういう性格じゃないし……」と諦めてしまう子どもがいたら、どんな言葉を伝えますか?
森田さん 研究者にもいろいろなタイプの人がいます。たとえば、子どものころから貝が好きで突き詰めて「貝の研究者になりました」という人はたくさんいらっしゃいますが、じゃあ人骨の研究者は小さいころから人骨が好きだったのかといえば、別にそんなことはないわけです。だから、「自分には小さいころからずっと好きなものがない」からと諦める必要はありません。
「おもしろそう」と思うことがパパッと変わっていくスタイルの研究者もいるし、成長して好きなものができることもあるし、そのためにはたくさんアンテナを張るのが大切かなと思います。
ーー最後に、国立科学博物館の楽しみ方を教えてください。
森田さん 哺乳類もいれば爬虫類も昆虫もいて、全部回ろうと思ったら1日じゃ回りきれないくらいの量の展示があります。それを全部見るのも楽しみ方ですが、自分が気に入ったところを狙って見るのもアリじゃないでしょうか。僕は歯の研究をやっているから、動物の歯だけをじっくり見ると思いますが、たとえば足だけを見ると「キリンの足はこうなっているけど、イルカの足ってどこにあるんだっけ? 亀は?」とか、ちょっとマニアックかもしれませんが、1部位だけ見比べるとおもしろい発見があるかもしれませんよね。
ドコモ未来フィールドとは
「ドコモ未来フィールド」は、未来へ歩き出す子どもたちにワクワクする経験の場をつくることで子どもたちを応援していくプロジェクト「ドコモ未来プロジェクト」の中で、「ドコモ未来ミュージアム」「ドコモ未来ラボ」と並ぶ3つの舞台のうちのひとつ。子どもたちがさまざまなプロの世界を体験できる機会を創出し、大切な学びや夢をみつけてもらうためのプロジェクトです。
これまでに野球の阪神タイガース、ボクシングの井上尚弥選手&大橋ボクシングジム、LAPONE ENTERTAINMENTによるダンス体験など、さまざまなジャンルのプロの世界を体験できるイベントを実施。気になった人は、ぜひ最新のイベント情報をチェックしてみてくださいね。
ドコモ未来フィールド
https://docomo-mirai.tda.docomo.ne.jp/field/
(取材・文:有山千春、取材協力:NTTドコモ)
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