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「500系って今でも『日本最速の新幹線』なんですか?」 その驚異のスペックを知っているか? 今は「最高の普通車座席」が乗り得!

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300系では空路に勝てない…ならば!

 1997(平成9)年に登場した500系新幹線は、JR西日本が自社開発した現時点で唯一の新幹線車両です。

Large figure1 gallery1JR西日本の新幹線500系(安藤昌季撮影)

 営業運転の最高速度が長らく210km/hだった新幹線は、1985(昭和60)年に200系が東北新幹線で240km/h、1990(平成2)年に上越新幹線の大清水トンネルで下り勾配を利用して275km/h運転を開始。そして1992(平成4)年に東海道新幹線で300系が270km/h運転を実現しました(200系の275km/hと300系の270km/hは、ATCでブレーキがかかる速度を最高速度にするかどうかの違いで、実質同じ)。

 300系「のぞみ」は、山陽新幹線では新大阪~博多間を2時間33分で運転。しかし、博多側は福岡空港が市街地に近い便利な立地であることから、ライバルの航空機に勝るとはいえない状況でした。

 こうしたことから、JR西日本は500系電車900番台、通称「WIN350」を1992(平成4)年に製造。その名の通り350km/hを目標とした試験車両で、同年に350.4km/hを達成しています。しかし、騒音基準を超えてしまうことや、車体傾斜装置を実用化できなかったことで、曲線通過時の遠心力を抑えられず、乗り心地に問題があったため、500系量産車の営業最高運転速度は320km/hとされました。

 もし、350km/h運転が実現していたら、新大阪~博多間が2時間以内の可能性もあった意欲的な取り組みだったといえます。その後、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災をきっかけに非常制動距離の厳守が求められるようになり、計画は最高300km/hになりました。

 なお、500系量産車は速度制限などを考慮しない最高速度の「均衡速度」が365km/hであり、これはE5系新幹線の360km/hを上回ります。また、山陽新幹線区間内での速度種別では、N700系がU43(10‰勾配での均衡速度が343km/h)、500系がU49(同349km/h)で、現在でも日本最速の新幹線です(ただし、8両編成化時に補助変圧器や補助圧縮機を一部車両に増設したことから、重量が増加し、現在では最高速度285km/h以上を出せても騒音基準に抵触します)。

近未来的デザインでも人気に

 500系は全電動車で、出力は300系の1万2000kwを上回る1万8240kw(W2編成以降は1万7600kw)にも及びました。現行の九州新幹線用N700系が全電動車8両編成で9760kwなので、倍の16両として考えると1万9520kw。。これにはやや劣りますが、現在でもトップクラスです。

 外観も異彩を放っていました。高速運転時のトンネル微気圧波を減少させるために、先頭車両のノーズ部分は15mもの長さ。さらに車体断面を円形に近くすることで、車体断面積を縮小しています。

 ドイツの工業デザイナーであるアレキサンダー・ノイマイスター氏が意匠設計を担当し、それまでの新幹線では見られなかった未来的なデザインとなり、人気を集めました。完全引退していないにもかかわらず、京都鉄道博物館ですでに保存展示されているのも、そのあらわれといえます。

 また、「プラレールカー」「エヴァンゲリオン新幹線」など、様々なコラボが行われた車両であり、2018(平成30)年に登場した「ハローキティ新幹線」も2026年春まで運行される予定です。

 ただし、高速性能追求は様々な問題も発生させました。最大の問題は「先頭車両の扉位置が異なる」ことです。ロングノーズを採用した500系は、座席数を確保するために普通車の座席間隔を300系の1040mmより狭い1020mmにしたり、洗面所を減らしたりしたほか、先頭車両の扉を1か所のみにしたのです。これは2003(平成15)年から設けられた「のぞみ」の自由席で乗降時間増加の原因となりました。

 また、車体断面が円形のため荷物棚が狭くなり、ビジネスユースの多い東海道・山陽新幹線では不評でした。

 1997(平成9)年、500系は新大阪~博多間の臨時「のぞみ」として営業運転を開始しました。所要時間は2時間17分。これはいまだ破られていない記録です(現状の最速は新神戸停車込みで2時間21分)。

 筆者(安藤昌季:乗りものライター)は当時の世界最高速度だった300km/h運転を体験したくて、東京からわざわざ乗りに行きましたが、風の音、車体を叩く振動の感覚が300系とは全然違うことに驚きました。インテリアも洗練されており「なんてカッコいい新幹線なんだ」と感動したものです。「座席鉄」としては、2+3列の普通車は座席形状が良く、好感を持ちました。

 2+2列のグリーン車は、柔らかい枕が当時では珍しく、快適性に驚いた記憶があります。ただ、当時はグリーン個室や食堂車など豪華さに振り切った100系が主力車両だったため、それと比べると500系は物足りず「質実剛健」という印象を受けました。

新大阪~博多間を2時間17分で結ぶ

 1998(平成10)年、東京~博多間の「のぞみ」に投入され、同区間を4時間49分で結びました。これは現状最速の上り東京行き最終「のぞみ64号」の4時間45分には劣りますが、5時間を切ったことは驚きでした。

 なお、「のぞみ64号」の4時間45分は、500系時代はなかった新神戸・新横浜・品川停車が加わるため単純比較はできません。編成出力では500系が上ですが、車体傾斜機能やデジタルATCによる無駄のない加減速、加速力の増加、東海道新幹線内での最高速度向上といった積み重ねの結果です。最新のN700S「のぞみ」の停車駅が500系「のぞみ」と同じなら、東京~博多間は4時間36分程度と考えられるため、技術の進歩も感じます。

 その後、山陽新幹線では300km/hで駆ける700系・N700系も登場し、500系は2007(平成19)年から余剰車両が発生します。2008(平成20)年には8両編成化が始まり、その際に4~6号車が2+2列の普通車指定席化されます。

 4・5号車は700系「ひかりレールスター」と同じ座席で、6号車は元グリーン車から枕とフットレストを撤去した座席でした。どちらも普通車としては現在の目で見ても素晴らしい座席です。特に6号車は座席間隔も広く、新幹線最高の普通車座席だと感じられます。なお、最高速度は285km/hに低下しています。

 2010(平成22)年には「のぞみ」から撤退し、16両編成も消滅。8両の「こだま」運用が中心となります。現在は、500系と700系を置き換えるためにN700系の8両編成化が進められています。

 500系は2027(令和9)年に完全引退することが発表されています。現役では新幹線最古参の形式となりつつも、洗練されたデザインにより今でも「一番カッコいい新幹線」に挙げられることが多い500系。最後の活躍を見るなら今だと思います。

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