「信号待ちのバイクのすり抜け」は“違反”とは一言も書いてない! ならばやりますか? 弁護士の見解は
- 乗りものニュース |

適法とは言い切れない「信号待ちのすり抜け」
信号待ちのクルマの車列をバイクがすり抜け、停止線の前に出ることが結構あります。また、かつては停止線前方に「バイク用停車スペース」がよく設けられていたこともあり、合理的にも思えるわけですが、実際はどうなのでしょうか。
車列をすり抜け、停止線先へと向かうバイク(画像:写真AC)
この信号待ちでの「バイクのすり抜け」の道路交通法上の定めについて、ベリーベスト法律事務所・小川達也弁護士に聞きました。
本題に入る前にまず、小川弁護士から「すり抜け」「追い越し」「追い抜き」の定義について解説してもらいました。
「まず、道路交通法には『すり抜け』という言葉はなく、一律に禁止する条文もありません。そのため、『バイクがクルマの前に出た』という結果だけでは、違反かどうかは決まりません」
ただし、交差点付近では次のようなルールが適用されるため、違反に当たる場面は少なくないのだそうです。
●「追越し」と「追抜き」は別物
「道交法でいう『追越し』は、前車に追いついて進路を変え、そのクルマの横を通って前に出ることをいいます(2条1項21号)。これに対し、進路を変えずに横を通って前に出ることは、一般に『追抜き』と呼ばれ、区別されています」
●交差点の手前30m以内は「追越し」禁止
「交差点、横断歩道・自転車横断帯と、その手前30m以内の場所では、『追越し』が禁止されています(30条3号)。ただし、優先道路を走っている場合の交差点は例外です。クルマの左側へ進路を変えて前に出る行為などは、これに当たる可能性があります」
●横断歩道の手前30m以内は「追抜き」も禁止
「横断歩道・自転車横断帯とその手前30m以内では、進路を変えない『追抜き』であっても、走っているクルマの横を通ってその前に出ることが禁止されています(38条3項)。ただし、信号機のある横断歩道で、歩行者用信号が赤のときは、この規制は適用されません」
●信号待ちで止まっているクルマの前に出る場合
「止まっているクルマの横を通ること自体は、ただちに違反ではありません。ただし、次の点に注意が必要です。
まず、赤信号など法令に従い止まっているクルマの前に割り込むことは禁止されています(32条)。
そして、横断歩道の直前で止まっているクルマの横を通ってその前に出るときは、前に出る前に一時停止しなければなりません(38条2項)。信号待ちで、歩行者が横断歩道を渡れる状態のときが典型です。赤信号では、停止線を越えて進むことはできません。先頭の車の前に出て、停止線を越えた位置で止まれば、信号無視になる可能性があります」
※ ※ ※
小川弁護士によると、「すり抜け」は、どこで、どのように前に出たかによって、違反になるかどうかが分かれるといいます。「『すり抜け』は適法と言い切れるものではないため、交差点の手前でクルマの前に出る行為は、違反に当たる可能性があると考えてください」とのことです。
停止線の前の「バイク専用のスペース」への“誤解”
言い換えれば、信号待ちで連なるクルマを横目に「かったるいから停止線まで進んじゃお!」というバイクの行為は、なんらかの違反にかかわるものだ、というわけです。
信号待ちのクルマの車列をすり抜け、停止線の先へとバイクがスルスルとすり抜ける場面は多い(画像:写真AC)
他方、近年の首都圏ではほとんど見かけなくなった、信号手前の「バイク専用退避スペース」はどうなのでしょうか。「なんらかの違反にかかわるすり抜け」を助長するようなスペースのようにも思います。
「『バイク専用待避スペース』は、正式名称を『二段停止線』といいます。1992年の標識令の改正で『道路標示』として正式に位置づけられたもので、『大型車などが左折するときに二輪車を巻き込む事故を防ぐこと』『二輪車を四輪車から見えやすくすること』を主な目的として運用されたものでした。つまり、法的な意味は、二輪車などが止まる位置を、四輪車より前に設定したということです。二輪車などは、四輪用の停止線を越えて前の停止線で止まっても、信号無視にはなりません」(小川弁護士)
しかし、これは「クルマの横をすり抜けて前に出て良い」という許可ではない――といいます。
「車列の後ろに着いたバイクが、前の停止線まで進まなければならないわけでもありません。本来『バイク専用待避スペース』運用で想定されていたのは、信号が赤に変わったときにバイクが先頭にいる場合などです。ただし、ご指摘のとおり、実際にはこの停止線がすり抜けを誘発する面があり、見直しが進みました」
小川弁護士によると、二段停止線は警察庁のデータではピークの1996年度に全国で約9000か所あったものが、2022年度末には約2500か所まで減っているといいます。
クルマをすり抜け、停止線前方に出たバイクにとっては、「地域によっては『バイク専用退避スペース』がまだあるじゃないか! だったらクルマの前に出たって良いだろう」と思いがちですが、そういう主張は通用しないようです。
こんなに危険なバイクの「すり抜け」 過失割合でも不利
小川弁護士は、交通事故の相談などを受ける際、「交差点付近のすり抜け」が起因する事故も一定数あると言います。
「典型的な場面の1つ目は、左折車による巻き込みです。特に大型車は左側の死角が大きく、曲がるときに後輪が前輪より内側を通るため、左側にいるバイクに気づかないまま曲がってくることがあります。
2つ目は、渋滞中の車列が対向車線の右折車に道を譲り、そのすき間から出てきた右折車と、車列の左側を走ってきたバイクがぶつかる、いわゆる『サンキュー事故』です。お互いにクルマの陰になって、相手が見えずに起こる事故です。
3つ目は、止まっている車の陰から出てくる歩行者や自転車、急な車線変更、停車中の車のドアが開くことなどです。横断歩道に近いほど危険は高まります」(小川弁護士)
これらに加え、最後に「すり抜け中の事故」はバイク側の過失も大きく見られやすいとも解説してくれました。
「すり抜け中の事故では、たとえ相手のクルマに落ち度があっても、バイク側の過失も大きく見られやすく、責任割合の観点から、本来受け取れる賠償額が減り、場合によってはほとんど受け取れなくなってしまうリスクがあります。交差点の手前では車列の後ろで待つことが、交通事故防止に役立ちます。信号待ちの車列であっても、急がず無理に前に出ないで待つようにしてください」(小川弁護士)
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