後継船はもう造れない!?日の丸潜水調査船ノウハウの結晶が消滅か… JAMSTECを直撃!
- 乗りものニュース |
日本の技術の粋を集めて建造された有人潜水調査船「しんかい6500」。ただ竣工から35年近くが経過しており、支援母船「よこすか」とともに老朽化が進行し、後継を新造するのか否かの岐路に立っています。JAMSTEC担当者にハナシを聞きました。
深海調査の分野でも中国が台頭
国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が行う深海での調査活動が、大きな岐路を迎えています。
JAMSTECが保有する有人潜水調査船(HOV)「しんかい6500」(画像:JAMSTEC)。
同機構が保有する大深度の有人潜水調査船(HOV)「しんかい6500」と、その支援母船「よこすか」、双方の老朽化が深刻な状態に陥っており、大深度HOVシステムを構成する両船の運用が停止した場合、サンプリングや作業を行える水深が6500mから現有する無人探査機(ROV)の最大潜航深度4500mまで大きく後退してしまう可能性があります。
このたび、筆者(深水千翔:海事ライター)は詳細な状況についてJAMSTECにハナシを聞くことができました。かなり色々答えてくれたので、4回にわけてお伝えします。
対応してくれたのは、JAMSTEC経営企画部未来戦略課の桐生健斗さん。彼いわく「『しんかい6500』の後継を建造しようにも、当時建造に携わった技術者はすでにリタイアしており、製造設備も撤去されたものがあると聞いている。もし造るのであれば1から技術者を集めたり新たな設備投資をしたりといったことが必要で、その意味では技術は失われつつあり、新造は不可能ではないものの簡単ではない」とのことでした。
「しんかい6500」は1989年1月に三菱重工業神戸造船所からJAMSTECに引き渡されました。船体寸法は全長9.7m、幅2.7mで、空中重量は26.7トン、乗員数は3人です。船価は約125億円。神戸製鋼所で製造された直径2mのチタン合金製耐圧殻の内部にコックピットが設けられており、操縦を行うオペレーターと研究者が乗り込みます。最大潜航深度は船名の通り6500m。通常潜航時間は8時間で、緊急時のライフサポート時間は129時間となっています。
大深度まで潜れるHOVとしてはもちろん日本唯一です。また、この種のHOVを保有・運用しているのは、世界でも一部の国だけ。なかでも6000m級のHOVとなるとさらに限られ、現在では日本、アメリカ、フランス、中国の4か国のみとなります。
とりわけ中国は近年、深海調査に力を入れており、7000m級HOV「蛟竜」や世界で最も深い海底にも到達可能な11000m級HOV「奮闘者」を開発・投入しています。ただし、前出の桐生さんによると「深さだけが性能ではない。例えば、オペレーションや乗組員の快適性といった機能面などで『しんかい6500』は高い評価を受けている」とのことでした。
乗組員の優れたノウハウの蓄積も
また、日本は他国に比べて耐圧殻の安全率を高くとっているため、アメリカの基準に換算すると「しんかい6500」は深度8000mまで潜航可能と話してくれました。
「しんかい6500」の支援母船である「よこすか」。船尾にある青いのが「しんかい6500」揚降用のA字型クレーン(深水千翔撮影)。
「日本は深海大国で、EEZ(排他的経済水域)における深海の割合は、4000m~6000mで44%、なかでも超深海といわれる6000m以深は6%を占めている。6%という数字は少ないように見えるが、世界的には6000m以深がだいたい1~2%くらいしかなく、日本はトップクラスで超深海エリアが広いのが特徴となっている。海洋資源や地質学、地球生命科学といった科学的なニーズに加えて、プレートの沈み込み帯や海底火山などは地震防災に直結することから、社会的にも海底を探査することは非常に大事だ」(桐生さん)
「しんかい6500」は、2012年には推進操縦システムの大規模なアップグレードを実施、メインスラスターを旋回式の大型1基から固定式の中型2基に換装するなど大規模な改造を行い、機能の向上を図っています。
同船の優れている点として、水中での操作性と視認性が挙げられます。前後の2か所に水平スラスターが付いているため縦横斜め方向へかなり機敏に動かせ、その場で回頭することも可能です。また、耐圧殻の斜め下に付いているメタクリル樹脂製の3つの覗き窓は、深海の様子を研究者が自身の目で確認することに大いに役立っています。
さらに、搭載されているマニピュレーターの精度と、その操作を担うオペレーターの技術の双方で日本のノウハウは高いものがあり、双方が合わさって初めて深海という太陽の光が届かない未知の世界で、海底の石や生物を採取する複雑な作業をこなすのにつながっているそうです。
ちなみに、「しんかい6500」がこれまで潜航した回数は35年間で1800回を超えており、活動範囲も日本周辺に留まらず、大西洋やインド洋などの海外でも調査を行ってきており、日本のみならず世界の深海調査研究にとって、なくてはならない存在であることが伺えます。
支援母船「よこすか」にも世界初の技術が
この「しんかい6500」を搭載し、ともに深海調査を担うのが深海潜水調査船支援母船「よこすか」(4439総トン)です。同船を建造したのは川崎重工業神戸工場で、1990年4月に竣工しました。同船には、音波で「しんかい6500」と音声通話が出来る水中通話機や、船上で「しんかい6500」などの整備を行える広さを持つ格納庫、そして空中重量26.7トンにもおよぶ船体を海に入れたり揚げたりすることが可能な巨大なA字型クレーンと着水揚収装置が設けられています。
「しんかい6500」の支援母船である「よこすか」(柘植優介撮影)。
加えて、もう一つ特徴的なシステムとして挙げられるのが、海中の『しんかい6500』から音波を使用して『よこすか』に画像を送る音響画像伝送装置でしょう。
海上の船とケーブルでつながっているROV(遠隔操作型無人探査機)は、カメラの映像をリアルタイムでそのまま見ることができますが、活動範囲はどうしてもケーブルの制約を受けます。
一方、HOVは、自在に動くことができるものの、母船とのやりとりは音声通信で結ばれているとはいえ、深海調査の状況をリアルタイムで共有することは困難です。その課題をクリアするため、JAMSTECは独自にHOVから母船に画像を送る技術を開発しました。
当初は256×240ピクセルの画像を10秒ごとに1枚ずつ送るようなシステムでしたが、2018年度から運用を開始した新型機は同じ画素数の画像を2秒に1枚送れるようになり、これは世界でも類を見ないレベルです。
桐生さんは「有人・無人論では、HOVの安全性を根拠にした無人派からの意見も見られるが、我々は35年間、大きな事故はただの1回も発生させていない。これは造船所や機器メーカー、そして運航を担っている日本海洋事業(株)のプロフェッショナルによるメンテナンスやオペレーションがあってこそで、調査能力や安全性・信頼性は世界トップクラスだと思っている」と胸を張ります。
このように長年にわたって日本の深海探査を支えてきた「しんかい6500」と「よこすか」 ですが、両船の老朽化によって大深度HOVシステムが消滅する瀬戸際に立たされています。
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