退役撤回か スウェーデン軍「グリペンC/D」戦闘機 サーブが可否検討へ その切実な理由
- 乗りものニュース |

スウェーデン空軍の「グリペンC/D」は空自F-2と同世代の戦闘機で、すでに一度退役が決まっていましたが、ここにきてメーカーのサーブがその延期を検討することに。そうする理由と、それが現実的な理由を解説します。
「グリペンC/D」は空自F-2よりも長く働くの? 働けるの?
スウェーデンのサーブは2020年12月21日(月)、同国で防衛装備の調達などを担当している「FMV(国防事業庁)」から、スウェーデン空軍が現在主力戦闘機として運用しているJAS39C/D「グリペン」戦闘機を2035年まで効果的に運用する場合、どのような改修や搭載する兵装の追加などが必要になるかを取りまとめる業務を受注したと発表しました。
スウェーデン空軍の「グリペンC」(画像:サーブ)。
「グリペンC/D」は、サーブが1980年代に開発したJAS39「グリペンA/B」の改良型です。最初に生産された単座型の「グリペンA」は1988(昭和63)年、複座型の「グリペンB」は1996(平成8)年にそれぞれ初飛行しており、1995(平成7)年に初飛行した航空自衛隊のF-2戦闘機とは、ほぼ同世代の戦闘機といえます。
またグリペンC/Dは2020年現在までに、コックピットの近代化や電子戦装置の改良、空中給油機能の追加などが行われており、スウェーデン空軍だけでなく、タイ空軍や南アフリカ空軍などでも主力戦闘機として運用されてきました。
「グリペンC/D」とほぼ同世代のF-2は、次期戦闘機による更新完了が見込まれる2040年代半ばまで現役に留まるものと見られますが、スウェーデン空軍はJAS39の機体を大型化してエンジンも強化し、電子装置なども大幅に近代化した次世代型「グリペン」の単座型「グリペンE」で「グリペンC/D」を更新し、練習機として使用される一部の「グリペンD」を除いて、「グリペンC/D」を順次退役させていく方針を打ち出していました。
そうしたなかでの今回の、冒頭に述べたような「グリペンC/D」を2035年まで運用するにあたって何が必要かを取りまとめる業務の発注です。この業務は2021年12月に完了する予定で、スウェーデン政府はその結果を踏まえて、「グリペンC/D」を2035年まで運用するか否かを決定することになります。
このように、スウェーデン政府が一度は退役を決めた「グリペンC/D」の就役期間の延長を検討するに至った最大の理由は、ロシアの脅威の顕在化にあります。
スウェーデンが重武装化する地勢的な理由
スウェーデンは、ナポレオン戦争が終結した19世紀初頭から冷戦が終結するまで、戦時、平時を問わず、国際関係の上で中立であることを基本とする中立主義を国是としていました。歴史的にも地理的にも同国にとって最大の脅威である、ロシア(ソ連)による侵略には断固、立ち向かうことも国是としており、このため冷戦終結までは国家の規模には不釣合いなほどの軍備を備えていました。このスウェーデンの中立主義は「重武装中立」と呼ばれています。
電子的に自機の囮を作り出す能力を持つとも言われる電子戦装置「AREXIS」の外装型ポッド(画像:サーブ)。
冷戦の終結とソ連の崩壊により、ロシアの脅威が低下して以降のスウェーデンは軍備を縮小し、2010(平成22)年には徴兵制も廃止しました。ところが、2014(平成26)年に起こったロシアによるウクライナ領への侵攻を契機に、ロシアの脅威に対する危機感を強め、2018(平成30)年には徴兵制を復活させています。
スウェーデンのペーテル・フルトクビスト国防相は2020年10月15日に、ロシアがウクライナ、ジョージアへ侵攻したことなどによりヨーロッパの緊張は高まっているとして、2021年から2025年までの防衛予算を270億クローナ(約3375億円)増額すると発表しており、「グリペンC/D」の2035年までの運用期間延長検討も、その一環として行なわれるものと考えられます。
Su-35やSu-57といった最新鋭機の配備が進められるロシアの航空戦力に対し、2000年代初頭に運用が開始された「グリペンC/D」で対抗するのは容易なことではありませんが、サーブは「2030年代にも『グリペンC/D』が敵にとって手ごわい戦闘機であり続けさせるための手段を、スウェーデン政府に提供できます」とのコメントを発表しています。
サーブが「グリペンC/D」を2030年代まで使えると踏むワケ
サーブが「グリペンC/D」を2030年代まで第一線で使用できる戦闘機とすることに自信を示しているのには、当然のことながら根拠があります。
先に述べた「グリペンE」とその複座型の「グリペンF」は、「グリペンC/D」より高性能であるが故に価格も高く、財政的に余裕のない国にとっては「グリペンC/D」に比べて購入のハードルが高くなっています。このためサーブはグリペンE/Fの生産と並行して、クロアチアのような新興国に対しては「グリペンC/D」の新造機の提案も行なっています。
「グリペンC/D」への搭載も想定してサーブが開発を進めている「PS-05/A Mk.4」AESAレーダー(画像:サーブ)。
とはいえ、世界の戦闘機市場での競争は苛烈を極めているため、ただライバルよりも安ければ売れるという訳ではありません。そこでサーブは「グリペンC/D」に市場競争力を与えるための、様々な技術開発に取り組んできました。
「グリペンE/F」には、強力な電波によって敵の戦闘機や早期警戒機、地上のレーダーなどを無力化し、さらに電子的に自機の囮を作り出す能力を持つともいわれる電子戦装置「AREXIS」が搭載されます。サーブはこの電子戦装置について、「グリペンE/F」においては機体に分散配置されている電磁波の送受信装置を一体化し、「グリペンC/D」を含めた既存の戦闘機に搭載できるポッドの開発を進めています。
「グリペンC/D」に搭載されている「PS-05」レーダーは、航空自衛隊のF-15J/DJに搭載されている「AN/APG-63」などと同じ、首降り式の機械式レーダーですが、サーブは「グリペンE/F」に搭載される、機械式レーダーよりも探知能力が高い「ES-05」AESAレーダーの技術を応用した「PS-05/A Mk.4」AESAレーダーの開発も進めており、このレーダーは「グリペンC/D」にも搭載が可能とされています。
F-2戦闘機も、次期戦闘機による更新完了が見込まれる2040年代までの運用を見込んで、一部の機体には「Link-16」ネットワーク端末の搭載や、「ASM-3」対艦ミサイルの運用能力付与などが実施される予定となっていますが、サーブがF-2よりも大規模な「グリペンC/D」の能力向上計画を短期間でスウェーデン政府に提案できるひとつの理由は、グリペンが輸出実績を持ち、現在も輸出を視野に入れた「商品」であるからなのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
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