え、ドイツを「GCAP」に入れるの!? 首相も歓迎、可能性が急浮上のワケ 日独伊の新戦闘機プロジェクト
- 乗りものニュース |

GCAP「他国の参加は可能」と大臣発言
イギリスのウェス・ストリーティング国防大臣は2026年9月29日、リバプールで開催された政府与党、労働党のイベントで、来場者からの質問に答える形で、現在同国とイタリア、日本の3か国が共同で進めている次期戦闘機開発計画「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」について、他国の参加は可能だと語りました。
2026年7月のファンボロー・エアショーで展示されたGCAPのモックアップ(画像:GCAP)
GCAPに関しては2026年7月にカナダが「オブザーバー」として参加することが決定しています。カナダの参加は将来の開発資金拠出や生産への参画を視野にいれて、そのための機密情報の提供を受けるというものですが、現時点で日英伊の開発の枠組みに大きな影響を与えるものではありません。
GCAPで開発される有人戦闘機は、現在航空自衛隊が運用するF-2戦闘機の更新を予定しています。F-2の退役開始は2035年を予定しており、このため日本は、カナダのようなオブザーバー資格ではなく、より本格的に開発に参加し、開発の枠組みに大きな影響を与える他国の参加に消極的な姿勢を示してきました。
その一方、GCAPで開発される有人戦闘機による更新が予定されているイギリス、イタリア両空軍のユーロファイター戦闘機は、今のところ退役開始時期が明確にされていません。このためイギリス、イタリア両国には2035年より多少遅れても、資金と技術力を持つ国をメンバーに加えるべきだとの声が根強く存在します。
その資金と技術力を持つ国と目されているのがドイツで、複数の海外メディアは、イギリス政府がドイツ空軍とドイツ産業界の要望を受けて、GCAPの産業分担をドイツと協議する意向を示していると報じています。
有人戦闘機計画が空中分解してからの動向
ドイツは2019年6月に、フランス、スペインと共に新戦闘航空システム「FCAS」(フランス語ではSCAF)の中核となる有人戦闘機「NGF」の共同開発に合意していましたが、フランスとドイツ、スペイン両国の有人戦闘機の要求のギャップと、独仏両国の開発主導権争いなどから、2026年6月にNGFの共同開発計画はキャンセルされてしまいました。
その後、ドイツ、フランス、スペイン3か国の動向には国際的な注目が集まっており、エアバスを通じてドイツと同国と密接な関係にあるスペインは特に筆者(竹内修:軍事ジャーナリスト)も注視していました。
一部の海外メディアはドイツ、スペイン両国がGCAPのメンバーに入るのではないかとの見解を示していましたが、実のところ筆者は「ドイツは無いわ」と考えていました。
方針が煮え切らないドイツ!
ドイツはNGFの共同開発中止が決まって早々、NGFに代わる第6世代戦闘機を開発する企業連合プロジェクト「Team Gen 6」の立ち上げを発表していますが、ドイツのフリードリッヒ・メルツ首相はこのプロジェクトの主導権はドイツが握るべきだと述べています。
またメルツ首相は2026年3月に政治ポッドキャスト「Machtwechsel」に出演した際、「20年後も有人戦闘機はまだ必要なのか」「そんな高コストで開発する必要があるのか」と述べています。ボリス・ピストリウス国防相も、第6世代戦闘機を開発するのではなく、CCA(有人戦闘機と協働する無人戦闘機)の統御能力が高いF-35の追加調達も選択肢の一つだと述べています。
こうした事情から筆者はドイツのGCAPへの参加はないと考えていたのですが、あるイベントに出席して、考え方を改める必要があるのではないかと思いました。
英から働きかけた?
2026年9月29日と30日の両日、在日ドイツ商工会議所(AHK Japan)が東京都内で「日独防衛・セキュリティ産業フォーラム」を開催し、筆者は30日にその一部を見学する機会を得ました。
日独防衛・セキュリティ産業フォーラムで講演するペトラ・ジグムント駐日大使(公式Xより)
その中で、あるドイツの要人が「われわれにはユーロファイターでイギリス(とイタリア)と組んだ経験がある」と述べ、GCAPへのドイツの参加に前向きであるという印象を受けました。
イギリスは2026年6月末、今後4年間で総額2980億ポンド(約17兆円規模)を投じる新たな国防投資計画(DIP)を発表していますが、この計画策定と発表の遅れから、GCAPを開発する合弁企業「エッジウィング」へのイギリスの資金拠出が危ぶまれました。この問題はイギリスがギリギリのところで国防投資計画の発表に踏み切ったので、GCAPの共同開発は継続されることになりました。
しかし、イギリスの現労働党政権は安定しているとは言い難く、このような事態はいつまた起こっても不思議ではありません。このため筆者はドイツ要人の自信ありげな発言は、イギリスからドイツに何らかの働きかけがあったが故のものではないかと勘繰ってしまったというのが、正直なところです。
その可能性やっぱアリ…米はどう見る?
イギリスのアンディ・バーナム首相は2026年10月8日にベルリンでドイツのメルツ首相と会談した際、ドイツのGCAPへの参加を前向きに考えたいと述べています。メルツ首相がこの会談でGCAPについて明言していなかったのに対し、バーナム首相がわざわざこの話を持ち出してきたあたりから見て、やはりイギリス側からドイツに持ちかけた話なのかもしれません。
日独防衛・セキュリティ産業フォーラムで筆者は、旧知の日本人軍事ジャーナリストとは話す機会を得たのですが、その方はあるアメリカの大手航空機メーカー関係者の言として「GCAPは上手くいくはずがない」と語っていたと述べていました。
アメリカは日英伊はもちろん、ドイツにとっても重要な同盟国です。ただ、アメリカ製の防衛装備品に過度に依存しなければ安全保障が成り立たないという状況は望ましいとは筆者には思えません。
その事態を避けるためにはGCAPは成功させなければならないと思いますし、そのために体制の変更も柔軟に考える必要があるのかもしれません。
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