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だから日本は「自国にエネルギーを運ぶ船」を作れなくなった――経済の急所LNG船 国内建造再開への高い壁 「この7年間、何もできていない」

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経済安保の観点からも重要視「LNG船の国内建造」

「いま、日本の造船所で、日本の皆さんが必要なものを運べないのは『LNG』だけだ」――国内でのLNG(液化天然ガス)船建造に向けた機運が高まる中、日本船主協会の長澤仁志会長(日本郵船会長)が2026年6月26日の会見でこう述べました。

Large figure1 gallery27川崎重工業で2019年に竣工し、商船三井が管理するJERA向けのモス型LNG船「総州丸」(深水千翔撮影)

 背景には、政府が2026年6月に公表した官民投資ロードマップ(工程表)案などで、造船分野に関してLNG船の国内建造再開の方針が示され、「2035年以降に年3―5隻建造の安定的供給体制構築」が掲げられたことがあげられます。

「LNG船の建造技術を獲得・保持することは、経済安全保障上の観点から重要」――ロードマップではこのように指摘されています。しかし近年、LNGを運ぶ大型の外航船は日本で建造されていませんでした。

 日本は経済活動に必要な電力の約7割を化石燃料による火力発電に頼っており、その中で天然ガスは約3割を占めています。LNGの年間輸入量は約6500万トン。全て船舶によって運ばれており、当然ながら日本郵船、商船三井、川崎汽船といった邦船大手が運航に携わっています。

 かつては三菱重工業や川崎重工業などがLNG船を手掛けていましたが、2019年の引き渡し船を最後に建造が途絶えています。2026年のLNG船新造シェアは受注ベースで韓国が60%、中国が40%となっており、この2か国が世界のLNG輸送を支えている状況です。

 そもそも日本の造船所は、球形タンクを載せたモス型(球形独立タンク方式)と呼ばれるタイプのLNG船を得意としていました。川崎重工が最後に建造し、2019年12月に引き渡したLNG船「MARVEL PELICAN」もモス型です。

 しかし近年はタンクの内部を薄くてしわがあるステンレス鋼「メンブレン」で覆ったメンブレン型のLNG船が主流になっています。これは箱型の形状をしており、スペース効率が高いため、より多くのLNGを積載することができるというメリットを持ちます。前出のロードマップでは、日本はメンブレン型のLNG船について設計・建造ノウハウを持っておらず、建造に必要な設備も整備されていないという指摘がされていました。

「LNG船以外は全て日本の造船所で作ることができる。日本人が必要なのに、日本の造船所が建造できないということを前から言っていた。2019年に最終船がデリバリーされてからこの7年間、何もできていない。建造を再開するには、いろんなことを詰めていく必要がある」(長澤会長)

 ではなぜ、日本が得意としていたモス型ではダメなのでしょうか。

“世界の潮流”に乗れるのか?

「メンブレンとモスの一番大きな経済的な差は、運河の通航料が全然違うというところがある。メンブレンの方が安く、世界中のトレーダーがメンブレンを選んでいる。サイズも17万立方メートルから20万立方メートルぐらいになるため、その潮流を外れたものを作ったところで、全く使い物にならない。今回もクリアに『メンブレン』ということで、韓国との連携も踏まえてやっていくということになるのではないか」(長澤会長)

Large figure2 gallery28会見する日本船主協会の長澤会長(深水千翔撮影)

 日本の造船所もメンブレン型のLNG船を建造した経験はあるものの、採算が合わず少数にとどまっています。IHIとJMU(ジャパンマリンユナイテッド)は独自にSPB(自立角形)タンクを開発しましたが、実際の建造で巨額の損失を出し、JMUは同方式の大型LNG船建造から撤退しました。

 長澤会長は「日本の造船業はLNG船に関して競争力を失っていったということだと思う。メンブレンは労働集約的。この部分で韓国に大きな差をつけられて、いわゆる国際競争力のある価格を提示できなくなった」とLNG船の建造が途絶えた理由を語ります。

「今でも日本の海運会社はLNG船の運航に関しては、相当高い地位を占めており、現在も発注はしている。韓国・中国に対して発注する意欲はあっても、それに日本の造船所はなかなか応えきれなかった。それは品質の面と、やはり価格の面で応えられなかった。これがクリアできれば、当然発注を行う」

 LNG船の新造船価は17万4000立方メートル級で2億5000万ドル前後を推移しています。しかし、日本の場合はLNG船のサプライチェーンが途絶しており、再び立ち上げるには初期投資コストがかかり、船価は高めになるでしょう。

 それに加えて設計・建造双方で、専門的な作業を必要とするため、そのための人材育成が1000人規模で必要です。果たして再び日本でLNG船が建造できるのか、まだ不透明な状況となっています。

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