有病者も安心して通える歯科を目指して──浦和・たぼ歯科医院多保先生の取り組み

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Hanone（ハノネ）～毎日キレイ歯の本音メディア～
2025年6月23日14時13分

「持病があっても大丈夫」──“医科歯科連携”で支える地域の歯科医療

専門的な知識と体制があるから、有病者でも安心して通える

有病者歯科に力を入れるようになった背景について、多保先生はこう語ります：

「町田市民病院で研修していた頃から、全身疾患のある患者さんを多く診ていました。開業後も、その経験を活かして取り組んでいます。」

多くの開業医では、有病者に対する歯科治療、特に抜歯などの外科処置を大学病院などに紹介するケースが多いといいます。薬の処方や血液データの確認が必要となるため、リスクを回避する意図もあるようです。

「でも、地域にはその“診てもらえない人”が一定数いる。特に高齢者施設の入所者や、複数の疾患を抱える方の訪問歯科では、積極的な治療は難しい現実もあります。だからこそ、診られる体制を自院で整えておく必要があると考えています。」

たぼ歯科医院では、血液データを読み取る知識を持った歯科医師が対応し、施設医師や他科の主治医と連携を取りながら、可能な限り自院での対応を実施。患者さんと医療機関の橋渡しを担っています。

また、持病のある患者さんにとって、歯科治療で懸念されやすいのが「薬の相互作用」や「出血リスク」など。たぼ歯科医院では、そうした医学的な知識をふまえて、薬剤の確認や服薬状況に応じた治療計画の調整を行っているといいます。

「患者さんの服薬内容によっては、出血が止まりにくくなったり、麻酔や痛み止めと併用できない薬があったりします。私たちはそこをしっかり確認しながら診療しています。」

こうした診療体制を整えているからこそ、「病気があるから歯医者に行きにくい」と感じていた人も安心して通うことができます。

「私たちは、ただ“診る”というより、“診るために準備ができている”状態を常につくっておくことが大事だと思っています。」

自らの行動で地域の医科歯科連携を進める

厚生労働省では、医科と歯科が連携し、患者さんの健康を包括的にサポートする医科歯科連携を推進しています。しかし、現実にはまだ医科歯科連携がそれほど機能している状況とは言い切れません。医科歯科連携が進みにくい背景には、医師と歯科医師の知識の差があるのではと指摘する声もあります。
しかし、多保先生は次のような課題を指摘されました。

「医師が血液検査などのデータを出しても、歯科医師はわからないだろうという思い込まれてるところもあるとは思います。でも、一番大きいのは制度の問題じゃないでしょうか。医科はほとんどが保険診療です。医科に紹介状を書くと医科の先生は歯科宛にどのような検査や治療をしたのか、返書を書くこととなります。今は、返書を書くことで医科には保険点数が加算されるようになったんですが、まだその情報が十分に浸透していません。忙しい中で返書を書くのは手間にもなるので、点数に反映されているのであれば対応しやすいですが、点数にならないことに手間をかけても…ということになるのではないでしょうか。」

医科歯科連携が思うように進まない背景には、制度上の問題もあるようです。しかし、「制度が整うまで待つよりも、自分で動いた方がより早く医科歯科連携は進められる」と多保先生は判断されました。そこで、多保先生は、地域の医師のもとに自ら足を運び、つながりを作るという活動をされています。

「地道ですけど、有病者の患者さんにもスムーズに歯科治療を届けるためには、この方法が一番早いと思うんです。相手の顔が見えれば、やりとりもしやすくなります。」と多保先生はおっしゃいます。

診療の現場から見える“有病者歯科”のニーズ

有病者歯科と一口に言っても、さまざまな病気や年齢の患者さんがいらっしゃるため、連携先もさまざまです。たぼ歯科医院が対応する代表的な疾患には、糖尿病・高血圧・心疾患・骨粗鬆症・認知症・脳血管障害などがあり、高血圧の患者さんなどは、モニターで血圧を確認しながら治療をされているとのことです。
糖尿病の患者さんは特に口腔ケアが重要であり、たぼ歯科医院でも専門医と連携し、糖尿病の方の口腔ケアに取り組んでいるそう。また、多保先生から糖尿病専門医に紹介をするケースもあるそうです。

さらに、最近では、骨粗鬆症の患者さんが多く、治療時には慎重な対応が必要になると言います。

「骨粗鬆症の場合でも服用している薬によって治療時のリスクは異なります。そのため、骨粗鬆症の患者さんの治療時には、必ず整形外科の先生に確認を取っています。ただ、最近は、処方薬も変わってきてるので、飲み薬を服用されている患者さんのリスクはそれほど大きくはありませんが、注射を打っている方は慎重な対応が必要になりますね。」

そのほか、高齢者施設の患者さんの場合は、認知症や歯周病の方が多く、誤嚥性肺炎のリスクを下げるために適切なケアをされていると言います。アルツハイマー型認知症の発症には歯周病が関わっているとされており、さらに、しっかり噛める人は転倒する確率が少ないというエビデンスがあります。そのため、訪問診療時には嚥下機能のチェックや嚥下機能を高めるトレーニングも実施しているそうです。

有病者対応以外の医科歯科連携も強化

たぼ歯科医院では、有病者対応だけでなく、さまざまな診療科との連携も進めています。

「例えば、口呼吸のお子さんは、アデノイド肥大や鼻の構造に問題がある場合が多いので、当院では気道まで見えるCTで撮影をし、何らかの異常がある場合には耳鼻科へ紹介を行っています。」

そのほか、小児科と産婦人科との連携も強化されているそう。

「お子さんの場合、0歳のときに舌や軟組織を見ることがその後の治療に大きく影響します。」

しかし、行政の歯科健診は1歳半から始まります。そのため、0歳時から診療できる機会が少ないところに問題があると多保先生はおっしゃいます。そこで、医院に在籍する管理栄養士が産婦人科に出向き、妊産婦の方に離乳食のあげかたなどについての講演をし、0歳時の歯科通院の重要性を啓蒙しているとのこと。加えて、小児科の院内にパンフレットを置いてもらったりといった連携体制も整えているそうです。

持病があっても安心して通える歯科医院の見つけ方と、いま始めたい健康習慣

多保先生に持病を持つ患者さんが歯科医院を選ぶ際のポイントをお伺いしました。

「持病を持つ患者さんに対してより安全な治療を提供するために設立された有病者歯科医療学会という組織があります。有病者歯科医療学会では、有病者対応の専門的な知識を持つ歯科医師に対し、『認定医』、『専門医』、『指導医』という3つの資格を与えています。この資格を持つ歯科医師を選ぶと安心だと思います。
そのほか、口腔外科の先生も知識は豊富です。また、高齢の方の場合は、老年歯科学会に所属されている先生も高齢者医療に詳しい知識を持っていらっしゃいます。そのあたりをポイントに歯科医院を選んでいただけると、安心して治療を受けられるのではないでしょうか。」

また、先生は訪問診療などを通し、自分の歯でしっかり噛める方ほど健康を維持されていることを実感されているそう。

「生活習慣病から糖尿病や動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞につながるケースが多いです。また、医療従事者にタバコを吸う人はほとんどいません。それだけ、タバコにはリスクがあります。40代あたりからは特にタバコや食事などの生活習慣を見直し、定期的に歯医者に通って、歯と身体の健康維持に気を付けてほしいなと思います」

医科歯科連携で広がる歯科の役割──地域の健康を支えるために

有病者の患者さんを治療するうえでも医科歯科連携は欠かせないものですが、地域に住むすべての人の健康を支えるためにも医科歯科連携は必要だと多保先生はおっしゃいます。実際に、たぼ歯科医院の受診がきっかけとなり、お子さんの病気を早期に発見できたケースや嚥下機能の低下に早期対応できたケースもあります。地域の中で医科歯科連携を進めるためには、制度の整備を待つだけでなく、多保先生のように地域内においての医科と歯科の顔の見えるつながりを築く必要があるのかもしれません。
今後、行政による制度の整備が進むと各地域において、たぼ歯科医院のような「有病者を診られる」歯科医院がさらに増加すると予想されます。有病者の方が安心して歯科治療を受けられる環境の整備も進んでいくでしょう。
また、医科歯科連携は病気の早期発見や早期対策にもつながるものです。有病者の方はもちろん、持病の無い方でも、医科と連携しているかというポイントでの歯科医院選びが健康を維持するうえで重要になるでしょう。

▼取材協力

多保学（たぼまなぶ）先生　プロフィール
医療法人社団　幸誠会　たぼ歯科医院　理事長
「患者さんにとって“通いやすくて安心できる歯科医院”であるよう、スタッフ全員で力を合わせて診療に取り組んでいます。どんな方にも誠実に向き合い、地域に根ざした歯科医療を目指しています」
日本歯科大学卒業。町田市民病院や日本歯科大学附属病院などで臨床経験を積み、口腔外科・歯周病・インプラント治療に幅広く対応。日本有病者歯科医療学会指導医。米国ロマリンダ大学インプラント科大学院修了後、臨床助教授として教育にも携わる。現在は埼玉県浦和にて、子どもから高齢者・有病者まで診療可能な地域密着型歯科医院を運営。地域における医科歯科連携の推進にも取り組んでいる。

医療法人社団　幸誠会

たぼ歯科医院東口
医院住所：〒330-0056　埼玉県さいたま市浦和区東仲町11-5　ガーデンビル1F
電話番号：048-711-8241
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