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京阪間を直通する「遅いのに一番高い列車」とは? ウワサ通りの「満席」 でも地元の人はまず乗らない!?

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京阪間、あえて「遅い」列車を選ぶ でも“おひとりさま”はつらいよ!?

 私鉄王国と呼ばれる関西では、都市間の移動で大手私鉄がJR西日本とデッドヒートを繰り広げています。なかでも大阪市~神戸市の阪神間と並んで競争が激しいのが、京都市~大阪市間の京阪間です。

Large figure1 gallery12京阪間を結ぶ各社の列車(画像:PIXTA、大塚圭一郎)

 ふだんはJR西日本東海道本線の「新快速」で移動している筆者(大塚圭一郎:共同通信社編集局経済部次長)は、在来線の電車では「遅いのに一番高い」方法で移動しました。すると、コスパ(費用対効果)が決して悪くない乗車体験ができました。

 大阪市中心部まで一本で行ける方法としては、「新快速」が京都~大阪間を最短28分で結んでいます。運賃は大人580円で、車内はクロスシートが中心のため、タイパ(時間対効果)もコスパも良い方法として定着しています。

 阪急電鉄は京都線の京都河原町~大阪梅田間が大人410円とリーズナブルですが、特急でも最短42分かかります。

 一方、JRや阪急と淀川をはさんで対岸をゆくのが京阪電気鉄道で、出町柳(京都市)から淀屋橋まで特急が最短54分で結んでいます。大人運賃は550円です。

 しかしながら、筆者が選んだのはこれらではなく、東海道新幹線でもない選択肢です。近畿日本鉄道が2022年4月に導入した観光特急「あをによし」が京都から大阪難波まで平日1時間26分、土曜・休日1時間17分で走っているのです。所要時間では東海道新幹線、新快速、阪急京都線の特急、京阪の特急のいずれにも勝てません。

 他方で、それらよりも出費がかさみます。「あをによし」は運賃に特急料金、特別車両料金が加算されるため大人で2270円が必要。しかも“特別ルール”により、大人が1人で利用する場合には2840円を支払う必要があります。

 これは座席が2席一組の「ツインシート」と、3~4人のグループがテーブルを挟んで腰かける半個室「サロンシート」のどちらかで、「おひとりさま座席」は設定していないのが理由です。したがって、ツインシートを1人で利用する場合には、子ども分の特急券・特別車両券も加算されるのです。

外観は「平安時代の高貴な色」

 そんな「遅いのに一番高い」方法をあえて選んだのは、「観光特急」とうたっている通り車窓や、豪勢な車内空間を楽しむのに良いと考えたためです。

Large figure2 gallery2平城宮跡歴史公園にある、復元された「朱雀門」(大塚圭一郎撮影)

 筆者が乗ったのは日曜日だったため京都発が16時55分発と、平日より5分遅く出発します。1日に上下8本走っているうち、京都発大阪難波行きはこの1本だけで、大阪難波発京都行きは午前中の1本だけ。残る6本は京都と近鉄奈良の間を行き来します。

 近鉄名古屋と大阪難波を結ぶ名阪特急などに用いられ、2021年に引退した12200系を改造した「あをによし」は19200系と付けられており、4両編成の1編成があります。

 外観は天平時代に高貴な色とされた紫色をベースとし、金色のラインを採用。先頭部の特徴的なデザインのエンブレムは、幸せの兆しとされる花喰鳥(はなくいどり)をデザインしています。側面には、日本最古級の校倉造(あぜくらづくり)の高床式倉庫「正倉院」(奈良市)の宝物「螺鈿紫檀五弦琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」に用いられている花柄を入れています。

 2号車には奈良県産品を使った菓子、クラフトビール、おつまみなどを取り扱う販売カウンターと、3~4人用のサロンシートがあります。

 近鉄奈良方面の先頭車となる1号車に入ると、シックな色合いのカーペットが敷かれていました。筆者が予約したツインシートは向かい合わせの座席で、間にある木目のテーブルの窓際では紺色のランプが点灯していました。

 緑色の座席は背もたれが倒れないものの、ゆったりとしています。近鉄は「家具メーカーによる特注品です」と説明しています。

 近鉄役員から「『あをによし』はターゲットのインバウンド(訪日客)から人気で、満席になることが多い」と聞いていた通り、外国人客も多く乗った車内は満席でした。

 列車は定刻に出発し、京都線のカーブを曲がって東海道新幹線の高架をくぐると右手に東寺の五重塔(国宝)が見えました。最初の停車駅は6分後に到着する近鉄丹波橋(京都市)で、その後はスピードアップして大和西大寺(奈良市)へ向かいます。

 この先、面白いダイヤが待ち受けていました。

奈良でほとんどの人が降りちゃった! 代わりに乗ってきたのは

 17時23分に到着した大和西大寺では1分停車し、運転士が交代しました。ここからは奈良線に入りますが、方向転換して大阪難波方面へと走るのではなく、同じ進行方向で4.4km離れた近鉄奈良へと走るのです。

Large figure3 gallery13大和西大寺駅での「あをによし」の運転士交代(大塚圭一郎撮影)

 列車は平城宮跡歴史公園を通り、進行方向右手の目の前にある窓からは平城京的の正門を復元した「朱雀門」が視界に入りました。公園を抜けると、2000年に閉店した「奈良そごう」を引き継いだ白亜の巨大な商業施設「ミ・ナーラ」(奈良市)があります。そごう時代には回転展望レストランとして営業していた最上階の7階にある円盤状の施設が目を引きます。

 新大宮を通り過ぎると、録音された車内放送の「まもなく奈良、奈良に到着します」という声が響きました。すると、周りの乗客のほとんどが席を立ちました。「あをによし」は古都の京都市と奈良市を結ぶのが大きな役割で、京都と大阪難波を「完乗」する利用者は少ないのです。

 なお、近鉄の車内放送は、近鉄奈良や近鉄名古屋のように「近鉄」を冠した駅名では「近鉄」を省きます。行き先表示も同じで、「奈良」や「名古屋」と表記しています。一方、大和西大寺に着く前の車内放送は「大和西大寺、西大寺に到着します」と1回目に正式な駅名を言った後、2回目では「大和」を省略しました。

 17時28分に地下駅の近鉄奈良に到着。ここでは6分停車し、空いた座席が埋まっていきました。乗り込んできたのは外国人客が目立ち、日本人客は限られました。近鉄役員がターゲットを訪日客だと明かした通りで、背景にはこんな事情があります。

「あをによし」は近鉄奈良から大阪難波まで38分かかり、同じ日曜・祝日ダイヤならば1本前の17時26分発急行、1本後の17時36分発快速急行より、所要時間が1分早いに過ぎないのです。

 この区間を「あをによし」に2~4人で乗ると大人1人当たり730円の追加料金がかかります。「あをによし」のような希有な運行体系を除くと近鉄奈良は始発駅で、通勤形電車で運行する急行や快速急行でも座れる場合がほとんど。そのため日本人には「これで十分」と考える利用者が多いようです。

奈良線の車窓のヤマ場も!

 近鉄奈良から反対方向に走り出すと、「次は学園前(奈良市)に止まります」と案内されました。ところが、その前の駅にも止まるという珍現象が待ち受けていました。

 停車したのは、15分前に訪れたばかりの大和西大寺です。一方、プラットホームの発車案内は「通過」と表示しています。これは扉が開かない「運転停車」のためで、20秒余り停車した後に再び動き出しました。

 学園前、生駒(奈良県生駒市)に停車後、奈良線の車窓のヤマ場となる景色が近づいてきました。生駒の西隣の石切(東大阪市)と、その2駅先の枚岡(ひらおか、同市)の間から進行方向右手を眺めた車窓です。

 坂を下りながら大阪平野を一望でき、高さ300mと西日本で最も高い超高層ビル「あべのハルカス」や、大阪市・梅田などのビル群が視界に入りました。

 布施(東大阪市)で近鉄大阪線と合流した後、列車はJR西日本大阪環状線や大阪メトロ千日前線と接続する鶴橋(大阪市)、大阪上本町を経て定刻の18時12分に大阪難波の3番線に滑り込みました。

 同じホームには後続の快速急行が3分後に到着予定です。よって、車掌らが全ての利用者が下車したのを確認すると、回送列車として慌ただしく引き上げ線に入っていきました。

 京都と現在の大阪難波を直通する近鉄特急は1973~92年に走っていましたが、直通需要が限られていたためいったん廃止されました。2022年登場の「あおによし」は、約30年ぶりの直通復活でした。「遅いのに一番高い」方法ではありますが、京都・奈良・大阪と関西をよりよく知るのに「急がば回れ」の経路となる、コスパの優れた選択肢でした。

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