フランス製戦闘機「ミラージュ」シリーズのその名のとおり幻影となったボツ機体3選
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フランス空軍の現主力戦闘機「ラファール」が採用されるまで、長らくその座は「ミラージュ」シリーズが務めてきました。しかしなかには、その名が示すとおり「蜃気楼」「幻影」となってしまったモデルも。ボツ機体3種を見ていきます。
冷戦期 米ソ製以外の選択肢だった「ミラージュ」シリーズ
航空自衛隊が運用しているF-4戦闘機や、現在でもインドなどで運用されているMiG-21など、第2次世界大戦以降に開発され、総生産機数が1000機を超えた超音速戦闘機のほとんどは、アメリカ製か旧ソ連(ロシア)製です。そうしたなかでフランスのダッソー・アビエーションが1950年代に開発した「ミラージュIII」は、ヨーロッパ諸国が開発した超音速戦闘機で唯一、総生産機数が1000機を超えています。
1956(昭和31)年に初飛行した「ミラージュIII」は空対空戦闘だけでなく、対地攻撃もできる多用途製を備えていたことに加えて、アメリカと旧ソ連に対して外交的なフリーハンドを保ちたい国々からの人気も集め、最終的に1442機が製造されています。
第1次オイルショックの影響で開発が中止された「ミラージュG8」(竹内 修撮影)
「ミラージュIII」で成功をおさめたダッソー・アビエーションはその後、1986(昭和61)年に初飛行し、現在のフランス空軍と海軍の主力戦闘機である「ラファール」(日本語で「疾風」)を開発するまで30年以上、「ミラージュ」の名を冠した戦闘機の開発と製造を続けました。
「ミラージュIII」からレーダーなどを取り外した簡易型の「ミラージュ5/50」は582機、ミラージュシリーズで唯一、水平尾翼を備えた「ミラージュF1」は740機、外観は「ミラージュIII」とよく似ていますが、操縦システムにフライ・バイ・ワイヤを導入して操縦性を高め、軽量化のため複合材料を使用するなど、同時期に開発されたアメリカのF-16に引けを取らない先進性を備えた「ミラージュ2000」は601機がそれぞれ製造されています。
成功した「ミラージュIII」の成功しなかった「V」型
「ミラージュ」はフランス語で「蜃気楼」または「幻影」を意味しますが、ミラージュシリーズの30年間以上の歴史のなかには実用化にいたらず、文字通り「蜃気楼」のように消えてしまったモデルも存在します。そのひとつがVTOL(垂直離着陸)戦闘機「ミラージュIII V」です。
VTOL用エンジンを8基搭載していた「ミラージュIII V」(竹内 修撮影)
NATO(北大西洋条約機構)は1950年代後半から、有事の際に旧ソ連の先制攻撃で飛行場が破壊された場合の反撃用として、超音速VTOL戦闘機の研究開発を進めていました。VTOL戦闘機の開発はイギリス、西ドイツ(当時)、フランスの3か国で行なわれ、超音速飛行性能をあきらめたイギリスは、紆余曲折の末に「ハリアー」シリーズの実用化にこぎつけます。一方、超音速飛行性能にこだわったフランスは、「ミラージュIII」をベースとする「ミラージュIII V」を開発しました。
「ハリアー」は排気ノズルの向きを変えることで、1基のエンジンでVTOLやホバリング(空中静止)、水平飛行を行ないますが、「ミラージュIII V」は水平飛行用のエンジン1基のほかに、垂直離着陸だけに使用するジェットエンジンを8基搭載するという、「ハリアー」に比べると凝った作りでした。
「ミラージュIII V」は1965(昭和40)年2月12日に初飛行し、1966(昭和41)年9月12日に行なわれた2号機の11回目の飛行試験ではマッハ2.03を記録しましたが、VTOL用エンジンを搭載したことによる重量の増加のため、航続距離や兵装搭載量は実用戦闘機として使えるものではありませんでした。またVTOLから水平飛行への切り替えが難しかったこともあって、「ミラージュIII V」の開発は打ち切られてしまいます。
可変翼機や大型機も 日の当たらなかった「ミラージュ」シリーズ
フランスは超音速VTOL戦闘機と並行して、1960年代半ばからSTOL(短距離離着陸)能力と高い速度性能を兼ね備えた戦闘機の導入を構想していました。開発を要請されたダッソー・アビエーションは、F-14戦闘機などに採用されている「可変翼」の採用によりこの要求を実現できると考えて、ミラージュシリーズ唯一の可変翼機「ミラージュG」を開発することとなりました。
1967(昭和42)年11月18日に初飛行した「ミラージュG」は、マッハ2.1の最大速度や、450mの滑走で離陸できる高いSTOL性能を実証しています。
「ミラージュG」を高く評価したフランス空軍は、核兵器も搭載可能な複座の長距離戦闘攻撃機型「ミラージュG4」の開発に乗り出しましたが、1965(昭和40)年に起こったゼネストで国内経済が悪化したため、より簡素な迎撃機型「ミラージュG8」の開発に方針転換を余儀なくされました。しかし「ミラージュG8」も1973(昭和48)年に発生した第1次オイルショックの影響を受けて開発がキャンセルされ、可変翼を持つミラージュも蜃気楼のように姿を消すことになります。
湾岸産油国への輸出を狙ったものの成功しなかった「ミラージュ4000」(竹内 修撮影)
その後フランスは、前に述べた「ミラージュF1」を導入しますが、同機は小型であるが故に、ヨーロッパの戦闘機商戦でF-16に敗れてしまいました。そこでダッソー・アビエーションは開発中だった「ミラージュ2000」を大型化した「ミラージュ4000」の開発に乗り出します。
「ミラージュ4000」はF-14やF-15に匹敵する大型機で、フライ・バイ・ワイヤを導入するなど両機よりも先進的な設計の戦闘機でしたが、フランス空軍はこれほどの大型戦闘機を必要としておらず、またあてにしていたサウジアラビアなども関心を示さなかったことから、試作機1機が製造されただけにとどまりました。
「蜃気楼」になってしまった3種類のミラージュの開発で培われた技術は、様々な形でその後の戦闘機開発に活用されています。このチャレンジ精神と転んでもタダでは起きないところが、現在もフランスが航空大国の地位を保っているひとつの理由なのかもしれません。
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