「ドッグファイト?古いッス…」次世代戦闘機「GCAP」、その巨体に隠された“真の狙い”と先進性 戦い方が根底から変わる?
- 乗りものニュース |

「GCAP」って結局どんな戦闘機になる?
日本、イギリス、イタリアが共同開発する次世代戦闘機「GCAP」。2026年7月にイギリスで開催されたファーンボロー国際航空ショーに展示された実物大模型を見ると、まず驚かされるのがその大きさです。この姿が完成形というわけではありませんが、巨大な機体を手がかりにすると、GCAPが目指す「第6世代」の戦い方が見えてきます。
ファーンボローに展示されたGCAPの実物大模型(布留川 司撮影)。
GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)は、日本、イギリス、イタリアの3か国が2035年の就役を目指して共同開発している次世代戦闘機です。会場に置かれた模型は非常に大きく、双発エンジンを備え、左右には大きな主翼が広がっています。
もちろん、この模型が2035年に完成するGCAPの姿をそのまま再現しているわけではありません。現在も設計作業は続いており、翼や胴体などの形状は今後変わる可能性があります。それでも、現在示されているGCAPのコンセプトが大型であることは確かです。
機体を大きくすることには、航続距離や兵器搭載量などの面で利点があります。しかし、ファーンボローのGCAPブースを取材すると、機体の大きさを考えるうえでもうひとつ重要なキーワードが見えてきました。それが「情報」です。
戦場では昔から「戦場の霧」という言葉が使われてきました。実際の戦闘では、敵がどこにいるのか、どのような戦力を持っているのか、味方がどんな状況なのか、そのすべてを正確に知ることはできません。こうした不確かな状況を「霧」にたとえた言葉です。
現代の航空戦でも、この「霧」をいかに減らすかが重要です。敵を先に発見し、その位置や種類、脅威などを把握できれば、それだけ早く次の行動を選択できます。そのため現代の戦闘機には、レーダーをはじめ、赤外線センサーや電子戦装置など、周囲の状況を知るためのさまざまな装備が搭載されています。
ファーンボローのGCAPブースでも、この「戦場の霧」を減らすことの重要性が説明されており、より大量の情報を集めて処理することで、戦場で何が起きているのかをより正確に把握することが目指されています。
レーダーが提供するデータは「1万倍」!?
ただし、高性能なセンサーをたくさん積めば、それだけで戦場の状況がよく分かるわけではありません。大量の情報がバラバラに入ってくれば、パイロットがそれぞれを確認しなければならず、かえって負担が増えてしまいます。
そこで重要になるのが、複数のセンサーから得た情報をコンピューターで統合する「データ・フュージョン」です。レーダーや赤外線センサーなどから得られた情報を組み合わせ、複雑な戦場の状況を分かりやすく整理することで、パイロットの判断を助けます。
こうした考え方自体は、現在の第5世代戦闘機F-35「ライトニングII」も備えています。ただ、F-35の基本設計は1990年代の計画にまでさかのぼり、それから約30年で半導体や通信技術は大きく進歩しました。これは携帯電話を考えると分かりやすく、2000年代の携帯電話と現在のスマートフォンでは、処理できる情報量も通信速度も大きく違います。
戦闘機でも同じように、半導体などの進歩によって、より大量の情報を扱えるようになっています。GCAPブースの担当者も、半導体の世代が変わることで情報処理能力が向上すると説明します。実際、GCAPに搭載する次世代レーダーについては、現在のシステムの「1万倍」ものデータを提供する能力がうたわれています。
それほど大量の情報を扱うとなれば、高性能なコンピューターや大きな電力、そして発生した熱を処理する冷却能力も求められます。大量のセンサーや情報処理装置を搭載するスペースに余裕を持たせられることは大型機のメリットですが、それを支える発電・冷却能力も、次世代戦闘機では重要な設計要素になるのです。
無人機も使う! 「ドッグファイト最強」より重要なこと
さらにGCAPが目指しているのは、自機のセンサーを高性能にすることだけではありません。ファーンボローのGCAPブースでは、ほかの航空機や無人機とネットワークでつながる戦い方についても紹介されていました。GCAPが集めた情報は、ネットワークを通じて他機と共有し、逆に他機が集めた情報をGCAPが受け取ることも想定されています。
ファーンボローのGCAPブースの様子(布留川 司撮影)。
より大量のデータを処理・通信できるようになれば、ネットワークでつながったほかの機体との連携も、さらに強化することができます。つまり、自機のセンサーで大量の情報を集めて統合し、さらにネットワークを通じて外部とも情報をやり取りする。こうした次世代の情報能力を重視するGCAPについて、機体開発を担う「Edgewing」は「センサー・パワーハウス(Sensor Powerhouse)」という表現を使っています。
その連携相手には無人機も含まれます。たとえばGCAPが敵を発見してその情報を無人機へ送り、逆に無人機が発見した敵の情報をGCAPが受け取るといった連携です。さらにGCAPが得た情報をもとに、別の機体が攻撃を担うといった戦い方も想定できます。GCAPは、自ら戦うだけでなく、ネットワークでつながった航空機や無人機を活用する「頭脳」のひとつにもなるわけです。
戦闘機というと、敵機と激しく旋回しながら戦う「ドッグファイト」を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、GCAPが目指しているのは単純に「ドッグファイトで最強の戦闘機」ではなさそうです。敵より早く情報を集め、それを処理して味方と共有し、さらに無人機なども利用して戦う。敵に近づいてから強い戦闘機ではなく、敵に近づく前から戦いを有利にする戦闘機。GCAPが目指しているのは、そんな姿なのかもしれません。
ファーンボローに展示された巨大な模型は、まだGCAPの完成形ではありません。しかし、その大きな姿には、戦闘機に求められる役割そのものの変化が表れているといえそうです。
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