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坂道でもないのに? 宅配トラックがどこでもタイヤに「輪留め」をする本当の理由

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平地でも「車輪止め」はドライバーの「手順」ミスを防ぐため?

 街中でよく見かける宅配業者のトラックは、平地であるにも関わらず、丁寧に「車輪止め」をタイヤに施して、荷物をおろしているケースが少なくありません。しかし、坂道であればわかるものの、どうして平地でわざわざ「車輪止め」をするのでしょうか。

Large figure1 gallery5 駐車中の宅配トラックのタイヤには「車輪止め」がなされていることがある(2025年、松田義人撮影)

 トラック「車輪止め」は、「輪止め」「歯止め」「タイヤストッパー」とも言われる器具のことです。法的な設置義務はないようですが、元トラックドライバーの交通心理士で、近畿大学生物理工学部の島崎 敢准教授はこう解説します。

「まず、一般人には『平地』に映る道路でも、実際には微妙な傾斜があったり、錯覚で平坦に見えているだけで、意外と傾斜がかかった坂であることがあります。そのため『平らならやらない』『坂ならやる』という基準を設けても、その判断自体が難しく、ドライバーにとって余計な負担になるかもしれません。

 また、もし『坂の場合だけ設置する』という手順にした場合、『坂の手順』『平地の手順』の2種類の手順ができるわけですが、そうなると、例えば『坂で車輪止めをしているのに、外し忘れて発進してしまう』などのエラーが起きやすくなります。

 そういうエラーを起こすリスクがあるならば、手順を統一し、坂かどうかにかかわらずいつも必ず『車輪止め』と置くことにしておけば毎回の駐車ごとに『坂かどうかを判断する』余計な思考リソースを使わずに済むし、判断エラーも少なくなります。こういったドライバーの『手順』の混乱を防ぐ意味で、結果的に『どんな道路でも車輪止めをする』になっていると思います」(島崎准教授)

 つまりは「車輪止め」を「やる・やらない」の判断の負担をドライバーに課さず、むしろ「一貫してやる」とすることで、手順の混乱を防ぐ意味があるようです。また、これに加えて「宅配業者やドライバー自身の意識変化を狙う思惑もあるだろう」と、島崎准教授は言います。

「宅配業者側に立ってみると『車輪止め』は対外的なアピール(企業ブランディング)にも繋がっているようにも思います。『車輪止め』は万一ブレーキなどが壊れた場合の最後のバックアップです。この安全へのバックアップをしっかり行うことは『うちの会社はリスクを減らすために、こういうことまでやっているんですよ』という対外的なアピールになります。

 他社がやっていない中ではなおさらで、きちんと『車輪止め』をしていることは、外部から『ちゃんとした会社だ』という印象を与えるというわけです。同時に、ドライバー側にも『私たちの会社は徹底して安全対策をしている』という誇りを持ってもらうことができるでしょう」(島崎准教授)

「車輪止め」設置には労力も… それでも意義が大きいワケ

 ちなみに、元トラックドライバーの島崎准教授に「車輪止め」にかかる時間も尋ねると「わずか数秒間だろう」とも。ただし、全国の宅配トラックの台数や駐車回数を考えると、その数秒にも無視することができない人件費や労力がかかっているとも言います。

Large figure2 gallery6 日本の物流を支えるトラック(画像:写真AC)。

「作業コストをかけてでも、宅配業者が『車輪止め』をドライバーに義務付けているのは、やはりここまでに紹介した『手順ミスへのリスクヘッジ』『対外的な企業ブランディング』だと思います。つまり、その数秒間の作業コストは、『安全を担保していく』上で欠かせないものでもあると思います」(島崎准教授)

 さらに、島崎准教授はこうした宅配業者の取り組みによって、「交通社会全体の安全意識に対する波及効果も期待できそうだ」とも指摘します。

「こういった宅配業者の『車輪止め』によって『手順ミスへのリスクヘッジ』『対外的な企業ブランディング』が、結果的に交通社会全体に波及し、道路交通全体の安全意識が高まる効果はあるとも思います。宅配ドライバーは駐車ごとに『車輪止め』をする作業があり、相応の労力になっているとは思いますが、これらの事情から実に好ましい習慣だとも思います」(島崎准教授)

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