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今の子どもに必須なのは「プログラミング」ではない。“AI時代を生き延びる”ため本当に必要な学び・体験とは

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  • マイナビウーマン
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急速に実用化が進むAI。すでに生活に浸透しているAIの技術は、今の子どもたちが社会に出るころにはますます進化しているでしょう。AIとの共存が当たり前となった現代を、親子でどう生きていくか。公立はこだて未来大学システム情報学部教授で『AIの世界へようこそ』の著者・美馬のゆり先生へのインタビュー第2回。

AI時代に必要なのは、特別な体験よりも日常生活に根付いた体験

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――AI時代を生きる子どもたちには、どんな学びが必要でしょうか。

美馬 私たちは生まれてから大人になるまでに、さまざまなことを学んできました。それは学校で教科書を通して習ったことよりも、日常生活の中でできるようになったことのほうがはるかに多いですよね。保護者の方はその日常生活の中での学びに光をあてて、自分がしてきたことを思い出してほしいと思います。

――例をあげるとすれば、どのようなことでしょう。

美馬 今、毎日を生きるために必要なこと、例えば自転車に乗るとか、料理をするとか、人と会話をするとか。そのようなことは学校で教科書を使って習ったというよりも、日常の生活の中で、あるいはお友達と遊ぶ中で培われたものです。だから日常生活の中にあることも学習であり、教育でもあります。一番の学びの場である生活の中で、親としてどういう環境を与えてあげるべきなのか、ぜひ考えてみてください。

――AI時代でも変わらず、教科書以外で学べること、学校の外での学びが大切なのですね。

美馬 従来と変わらないどころか、そういった経験がますます重要になっていきます。学校もこれから変わっていくでしょうけど、教育現場が変わるのを待っているだけではもう遅い。おうちでできることはたくさんあると思います。

――家庭ではどんなことをすればいいでしょうか。

美馬 男女にかかわらず、家のことを一緒にお手伝いしてもらいましょう。一人で生きていく力をつけるために、家事をできるように。手間はかかるけど、調理をするときに何か手伝ってもらったり、一緒に洗濯物を干してみたり……生活する中での知恵を、体を使って体験してもらうといいと思います。何かに触るとか、においやあたたかみを感じるとか、そうした体験がこれからはますます大切になるでしょう。

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――生身の体を使って体験することがより重要になってくるのですね。

美馬 そうですね。ただ、「鉄棒で逆上がりの練習をしましょう」というような具体的な運動ではなく、たとえば休みの日に公園で駆け回る、木に触れる、転んだときに何が起こるのかを体感する、そんな日常の体験が大切です。外に出れば、自然にさまざまな問題や課題に直面しますよね。

また、子どもは葉っぱなどを拾ってくるかもしれません。そんなとき、会話の続くようなことを話してみてください。葉っぱを分類しようとか、どうして色が変わっていくのかな、とか。そうした疑問を、親自身が答えを知っていなくてもいいから投げかけてみるといいでしょう。「木が紅葉するときはてっぺんの葉から色が変わっていくのか、下の葉から変わっていくのかどっちだろう」とか、そんなことでもいいと思いますよ。

――本当に身近なことでいいんですね。

美馬 そのとき不思議に思ったものをあげていくことから始めると親も子も考えやすいと思います。今となっては学校などでプログラミングを習う機会もあると思いますが、それこそ今後、AIでできてしまいます。だから、そもそも「プログラムでこういうものを作りたい」という“問題”。問題を考える力のほうがより重要です。自分が面倒くさいことをどうやったらプログラムで解決できるかな、とAIに依頼する。解決策はAIを使いながら考えられるので、「問題の作り方」のほうが、人間には大事です。

食卓を囲んでも、会話がなければ「一緒にごはんを食べていない」のと同じ

――体を使った体験のほかに、重要なことはありますか。

美馬 勉強においても、全部自分の頭の中で暗記しておくことが必要、という状況はだいぶ変わってきています。もし漢字を忘れても、AIに聞けばすぐに出てくるわけです。これからは自分が今欲している、必要としている情報をどうやってどこから見つけてくるか、見つけた情報が本当なのか判断する力が必要になってきます。

――情報を判断する力はどのように身につければよいでしょう。

美馬 おうちの中での会話が重要です。子どもが中高生になると、家でごはんを一緒に食べていてもみんながそれぞれのスマホを見ていることがありますね。それでは一緒にごはんを食べていることにはなりません。未就学児のころから、家族で一緒にごはんを食べて、その中で今日何があったとか、どういうことがあったとかを話して言葉にすることを習慣にしてほしいと思います。

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――親子での会話で、身近な話題以外にしたほうがいい話題はありますか。

美馬 子どもが理解できそうな内容で、世の中で起こっていること=時事問題なども会話に入れていくといいですね。今の子どもたちが大人になるころにどうなっているか考えてみると、グローバル化が進んで外国がルーツの人と一緒に働く場面が増えているでしょう。そのときに、いろいろな考え方や宗教、経験を持った人たちがいる、ということを理解するには、海外ではどんなことが起こっているか知ることが欠かせません。

日常的に「ワールドニュース」のような世界の最新ニュースを一緒に見て話題にすることも重要だと思いますね。あまり悲惨なものは見せられないかもしれないけれど、例えば、今イスラエルとガザで戦争が起きていて、おうちがなくなった子どもたちがいたり、がれきの中で何かを探している人がいたり、ケガをした人がいる。そういうことが世の中では起こっているというのを知る。いろいろな状況の人たちがいる、と知ることが大切です。世界にはもっと大変な人たちがいる、という話もしてほしいと思います。

――子どもが海外のことに興味を持たなくても、積極的に話したほうがいいのでしょうか。

美馬 議論をしようとしても子どもがつまらないときは、ただ一緒にニュースを見るだけでいいと思います。ごはんの時間にテレビで世界のニュースをつけてただ流しておくとか。食事の時間はテレビを消す家庭方針であれば、食後など別の時間でも。保護者が日頃から世界のニュースに関心を持つことも大事ですね。

――そうですね。親子で日常のこと、世界のニュースに目を向けたいと思います。

***

次回は、AI時代を生きる子どもたちに伝えたいことをうかがいます(12月27日更新予定)。

今回インタビューした美馬のゆり先生が、AI時代を生きる子どもたちに向けてAIの基礎知識をまとめた『AIの世界へようこそ 未来を変えるあなたへ』(Gakken)。イラストや図解を交えながら、AIの歴史や最新技術、AIが抱える問題、未来の可能性までを幅広く網羅しています。
AI時代を生きる子どもたちがどのような未来を目指して生きていくべきか、まさにこれからの時代に必読の一冊。

※本書は図書館向け商品です。学校や公共図書館にない場合は、購入のリクエストをして頂けます。個人でご購入いただく際は、お近くの書店でご注文いただくか、ネット書店をご利用ください。

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『AIの世界へようこそ 未来を変えるあなたへ』(Gakken)

(文:佐藤華奈子/取材・編集:マイナビ子育て編集部)

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