1日20回も戸締まり確認…「強迫性障害」に苦しみ、退職した33歳ひきこもり長男 自力で外出困難に 悩んだ社労士が切った“最後のカード”
- オトナンサー |

筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気などで就労が困難なひきこもりの人を対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。
浜田さんによると、強迫性障害や不安障害などの神経症性障害に分類される病気は、原則として、障害年金の対象外だということです。神経症性障害が原因でひきこもりの生活を送るようになった人が生きていくためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。実際に、強迫性障害が原因でひきこもりの生活を送る30代の男性とその家族を例に浜田さんが解説します。
長時間労働が原因でミスを連発するように
「長男が強迫性障害を発症後、自宅にひきこもっています。どうすればよいのでしょうか」
そのような内容で、母親が私の元に相談に訪れました。
母親によると、33歳の須藤広光さん(仮名)は、会社員だった30歳の頃に強迫性障害を発症。それが原因で会社を退職してしまったといいます。現在も再就職のめどは立っておらず、両親のいる実家でひきこもりのような生活をしているとのことです。
そこで、私は、広光さんが病院で強迫性障害と診断されるまでの経緯について、伺いました。
母親によると、広光さんは30歳当時、仕事で長時間労働を余儀なくされており、そのせいで強いストレスにさらされていたとのことです。次第に「仕事に集中できない」「ささいなミスを連発する」ということが増えていったといいます。
そのことで上司から叱責を受けるようになり、すっかり自信を失ってしまった広光さん。不安感から職場で何度も確認行為をするようになってしまいました。
時には帰宅中の電車の中で「会社の机の上に大事な書類を出しっぱなしにしていないだろうか」「パソコンはシャットダウンしただろうか」といった考えにとらわれ、あまりの不安から途中下車して会社に戻り、机の上やパソコンを何度も指さし確認をすることもあったそうです。
当時も広光さんは実家で両親と一緒に暮らしていましたが、時を同じくして家の中でも確認行為をするようになったそうです。その異変に気付いた母親が広光さんを説得し、精神科に連れて行きました。
受診の結果、医師から「強迫性障害」と診断されました。その後、薬を処方されましたが、症状の改善は見られず、むしろ悪化する一方だったそうです。
確認行為が止められないばかりか、「仕事中に手が震えて字が書けない」「パソコンのキーボードが打てない」「口が回らずうまくしゃべることができない」といった状態に陥りました。この状態では仕事にならないので、広光さんは上司と相談。しばらく休職することにしました。
仕事から離れ自宅で休んでいても、確認行為がなくなることはありませんでした。「ガスこんろの元栓を閉めたかどうか」「玄関や窓の施錠を忘れていないか」「財布の中にお金がきちんと入っているかどうか」などの確認行為をそれぞれ1日20回以上行っていたそうです。
自分でも「なぜこんなに不安になるのだろう。なぜ何回も確認してしまうのだろう」といった気持ちになるのですが、どうしてもやめることができません。
「こんな状態では、仕事を再開することはとてもできない」
そう思った広光さんは会社を退職。その後、ひきこもりのような生活を送るようになりました。
現在33歳になった広光さんは通常の日常生活を送ることが困難であり、就労も難しい状況にあるようです。そこで私は、母親に障害年金について説明することを決めました。ただし、説明をするためにはもう少しだけ情報が必要になります。母親からさらに聞き取りをしたところ、次のようなことが分かりました。
広光さんは強迫性障害で初めて病院を受診したとき、会社員として厚生年金に加入中でした。広光さんは大学を卒業してからずっと同じ会社で働いていたとのことなので、年金の未納があるというわけではありません。
そこまで確認できた私は次のような説明をしました。
「息子さんは障害厚生年金を請求することになります。障害厚生年金は1級から3級まであり、より障害状態の軽いものが3級となります。仮に障害厚生年金の3級に該当した場合、月額で5万1983円(最低保障額として。2025年度の金額)になります」
そこまで説明をした私は、いったん言葉を切りました。
さて、ここからどうしたものか。私は悩んでしまいました。
なぜなら「今回のケースはかなり難しい請求になる」と予想されるからです。そこで私は次のような質問をしてみました。
「息子さんは強迫性障害とのことですが、うつ病などの診断はついていないのでしょうか」
「はい、今のところそのような診断はありません。現在も強迫性障害で通院を続けています。それが何か問題なのでしょうか」
「実は障害年金のルール上、強迫性障害などの神経症性障害に分類される障害は、障害年金の対象になりにくいとされています。つまり、請求しても不支給となってしまう可能性が高いということです」
「そうなんですね。一体どうすればよいのでしょうか」
母親は不安そうな声でそう言いました。
社労士が下した決断は?
このままでは障害厚生年金の受給は難しいと思った私は、次のような提案をしました。
「知的障害や発達障害のように検査で数値が測れるものを除き、その他の精神疾患は具体的な診断の線引きが難しいとされています。そのため、強迫性障害から派生した精神病の症状を総合的に見て、障害年金の受給可否を判断されることもあります。よって、うつ病や統合失調症の診断がついていなくても、それらのような症状が出ているようであれば『その症状により日常生活がどのくらい困難であるのか』ということを軸に、医師と国に主張してみましょう」
そこまで説明した私は、確認行為以外で精神病の症状が出ていないか。母親からさらに聞き取りました。
すると、次のようなことが分かりました。
広光さんは月に1回通院をしています。危機管理能力が低下しているので、1人で外出するのは危険が伴います。そこで、母親が運転する車で病院に向かっているそうです。通院の数日前から広光さんは急に落ち着きがなくなり、通院当日は不安感を紛らわすためか、早朝から家の中を意味もなくフラフラ行ったり来たりしてしまうそうです。
社会生活に必要な書類の作成や手続きも1人ではできなくなってしまいました。以前は1人で手続きをしようとしたこともありましたが、不注意から書き間違いや記入漏れが多く発生。仮に記入できたとしても「本当にこれで大丈夫か。提出してしまうと、もう修正ができない」といった不安が強くなり、何度も確認をしてしまいます。そのせいで書類の提出期限を過ぎてしまうことがありました。
そのようなこともあり、社会生活を送る上で必要な手続きはすべて母親に代わりにやってもらっています。
夜になると不安が強くなってよく眠ることができず、1~2時間ごとに覚醒してしまうとのこと。心身共に疲れてしまい、食欲はなく食事はほとんど取れていません。また、入浴や着替えをする気力も湧かず、冬場などは1週間に一度の入浴や着替えができればよい方だといいます。
自室の掃除はおっくうに感じてしまい、自分ではまったくできません。部屋が散らかってくると、仕方がないので母親が代わりに掃除をします。服薬に関しては、錠剤の数や種類を間違えてしまうことが多かったので、今は母親に管理してもらっています。
自分の考えや意見に対して少しでも否定的な反応をされると深く傷ついてしまうようになってしまったので、現在は他人と関わることはないそうです。積極的に人と関わろうとする意欲もなく、現在は通院以外に外出することがないので、社会的に孤立状態にあります。
母親からの聞き取りを終えた私は言いました。
「今、お話しいただいた息子さんの日常生活の状況をできるだけたくさん文書にまとめていきたいと思います。その文書を医師にご覧いただき、診断書を作成してもらいましょう。また、その文書は国にも提出して日常生活の困難さを主張することにします。息子さんの同意が得られれば、私の方で請求までお手伝いすることができます」
「ぜひお願いいたします。私たちでは到底請求までこぎつけそうもありませんから。長男にも事情を説明してみます」
母親との面談後、広光さんから同意を得た私は、ヒアリングを重ね、精神病の症状またはそれに近いと思われる症状をできるだけたくさん文書にまとめていきました。その後、診断書の作成を依頼。請求に必要な書類もそろえ、障害厚生年金の請求を完了させました。
「果たして受給が認められるだろうか」
請求完了後、私の心の中には、いつまでもそのような不安がつきまとっていました。そして、請求から3カ月がたった頃、母親から報告がありました。
「おかげさまで障害厚生年金の3級が認められました。年金が入るようになって、長男も少しだけ安心できたようです。どうなることかと心配していましたが、ご協力いただいたおかげで何とかなりました。この度は本当にどうもありがとうございました」
母親のほっとした声を聞いて、私もやっと胸をなで下ろすことができました。
社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也
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