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新幹線駅なのに「快速は通過」 “のぞみ通過アナウンス”でお馴染み「東海道新幹線利用者最少駅」の実態

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市民の悲願だった「西三河の玄関口」

 東海道新幹線「のぞみ」で東京から名古屋へ向かうと、「ただいま三河安城駅を時刻どおりに通過しました。名古屋までおよそ9分……」といったアナウンスが流れます。この三河安城駅は、2025年度の新幹線の1日平均利用客が4058人で、東海道新幹線17駅の中で最少です。

Large figure1 gallery47三河安城駅(安藤昌季撮影)

 しかし、2022年度は2874人、2023年度は3432人、2024年度は3621人と、利用者が順調に増えてもいます。どのような駅なのでしょうか。

 三河安城駅の大きな特徴は、新幹線は基本的に各駅停車タイプの「こだま」が停車する一方で、並行するJR東海道本線は普通列車しか停車しないことです。特別快速・新快速・快速・区間快速といった速達列車は、すべて三河安城駅を通過します。

 隣の安城駅は快速なども停車するため、「新幹線駅=地域の代表駅」という図式も当てはまりません。さらに、JR東海リテイリング・プラスの商品紹介では、「東京から向かう場合、名古屋まで行って折り返した方が早い場合がある」ことが駅の特徴として書かれています。新幹線の停車駅にもかかわらず、目的地によっては「のぞみ」で名古屋まで行ってから在来線で戻る方が速いことがあるのです。

 三河安城駅は1988(昭和63)年3月13日、東海道新幹線と東海道本線の両方に新設されました。同じ日には、東海道新幹線に新富士駅と掛川駅も開業しています。

 現在の姿だけ見ると存在感が薄く感じられるかもしれませんが、その誕生の裏には長い誘致の歴史がありました。安城市史によると、名古屋~豊橋間への新幹線駅設置運動は1960年代後半に西三河地域全体の課題として始まり、1969(昭和44)年には新駅設置の陳情が行われています。

 その後、新駅の候補地をめぐって「幸田、岡崎、安城」の3地域が競合。1984(昭和59)年に安城市の二本木地区が候補地として決まりました。つまり、三河安城駅は単なる「安城市の駅」ではなく、西三河地域の玄関口をどこに置くかという誘致競争の末に生まれた駅なのです。

 こうした経緯から、建設費用は地元自治体などが負担する「請願駅」として計画が進められました。1985(昭和60)年には安城市が市民にも新駅建設のための募金を呼びかけており、まさに一大プロジェクトでした。総事業費は資料によって異なりますが、約135~137億円とされています。

「日本のデンマーク」と「定時通過」が個性に

 駅のデザインには、安城の歴史が反映されています。この地は明治用水による農業発展から、大正期には「日本のデンマーク」と呼ばれるほどの農業先進地でした。その歴史をテーマに、駅舎は急勾配の屋根が特徴的な北欧風の建物としてデザインされています。

 実際に駅を訪れると、新幹線と在来線の駅舎は分かれており、乗り換える際は改札を一度出て連絡通路を通る必要があります。このため「特別下車」の取り扱いが設定されています。新幹線の駅はこぢんまりとした造りですが、16両編成に対応した長いホームが東海道新幹線の駅であることを物語っています。ホームの屋根にもデンマーク風のデザインが見られ、かわいらしさを感じさせます。

 2026年8月金曜の昼過ぎに駅を訪問しました。13時24分着の東海道本線普通列車は下車が10人ほど。在来線は相対式ホーム2面2線で、名古屋方面に20人、豊橋方面に14人程度が列車を待っていました。

 新幹線だと、13時56分発の名古屋行き「こだま821号」は15人ほどが下車し、12人ほどが乗車しました。向かいの東京方面のホームでは19人ほどが列車を待っています。日中でも一定の利用客数がいるのだと理解しました。

 三河安城駅が開業した当時は周囲に田園が広がっていましたが、駅を核として市街化が進み、現在も駅南側で約17.7haの土地区画整理事業が進められています。

 また、冒頭の「定時通過放送」は今や駅の個性となっています。駅弁などを販売するJR東海リテイリング・プラスは、三河安城駅を「定時通過放送でおなじみ」と公式に表現し、2025年には駅名標や案内表示を商品化しました。

 三河安城駅は決して派手さはないものの、駅周辺は着実に発展しています。今後も利用客が増える余地はありそうと思えました。

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