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5月に「インフルエンザ」の集団感染相次ぐ…なぜ? 原因&対処法を医師に聞く

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学校でインフルエンザの集団感染が相次ぐ
学校でインフルエンザの集団感染が相次ぐ

 国内の学校でインフルエンザの集団感染が相次いでいます。5月16日に大分市内の私立高校で生徒497人の感染が確認されたほか、翌17日には、宮崎市が、市内の高校で生徒と職員計491人の集団感染が発生したことを公表しました。このほか、東京都調布市内の小学校でも、児童と職員計104人の感染が確認されています。

 インフルエンザといえば、冬に流行する印象がありますが、なぜこの時期に集団感染が相次いで発生しているのでしょうか。インフルエンザの感染を防ぐには、どのような対策が必要なのでしょうか。循環器内科専門医で、医療法人社団正恵会(東京都豊島区)理事長の藤井崇博(ふじい・たかひろ)さんに聞きました。

ワクチンの接種率低下などが要因

Q.そもそもインフルエンザに感染すると、どのような症状が出るのでしょうか。主な症状について、教えてください。

藤井さん「インフルエンザ感染症の主な症状は、38度以上の発熱や頭痛が突然生じるほか、全身症状として筋肉痛や関節痛、倦怠(けんたい)感も認められます。

ただ、インフルエンザワクチンの接種後に感染した場合、発熱やその他の症状が比較的軽い状態で現れることがあります。例えば、『微熱が出た』『何となく体がだるい』などです。この場合、普通の風邪と症状が似ていて、区別できないケースがあるので注意が必要です。

抵抗力の弱い乳幼児や高齢者が感染すると重症化しやすく、乳幼児の場合は中耳炎や熱性けいれん、脳症などの合併症を引き起こすほか、高齢者の場合は肺炎や気管支炎を引き起こすことがあります。また、乳幼児や高齢者以外で、もともと呼吸器系疾患のほか、心臓病や糖尿病などの基礎疾患を持つ人も合併症を引き起こしやすいです」

Q.5月以降、国内の学校でインフルエンザの集団感染が相次いでいます。なぜこの時期に感染が広がったのでしょうか。考えられる理由について、教えてください。

藤井さん「今回の事例のように、この時期に集団感染が発生した原因は、以下の3点が考えられます」

(1)ウイルス感染症は季節に関係なく流行
日本では、ウイルス感染症は冬に流行する印象が強いと思いますが、流行と温度・湿度はあまり関係性がないという報告があります。例えば、新型コロナウイルスが夏に感染が収まることはなかったかと思います。また、夏に冷房を効かせ過ぎると、鼻や喉の粘膜の機能が低下するため、ウイルス感染症にかかりやすくなります。

(2)感染対策の緩和
新型コロナウイルスが5類に移行したことで、学校でも感染対策が緩和されました。今回の大分県や宮崎県の高校で起きた事例では、流行前に体育祭が開催されたと報じられており、それが原因で集団感染が生じたと考えられます。

(3)インフルエンザワクチンの接種率の低下
コロナ渦でインフルエンザウイルスの感染者が大幅に減ったことで、自治体の助成で接種できる高齢者を除き、個人のワクチン接種率が大幅に低下しました。

ワクチンの効果は、接種してから5カ月程度で消えます。コロナ禍以前は、11月から翌年3月の間にインフルエンザワクチンを接種する人が多く、4月から5月はワクチンの効果が持続していた可能性があり、インフルエンザの発症が抑制されていたと考えられます。

Q.今後、インフルエンザの感染を予防するには、どのような対策が有効なのでしょうか。対処法について、教えてください。

藤井さん「以下の2点に取り組むことをお勧めします」

(1)流行前にインフルエンザワクチンを接種する
流行前にインフルエンザワクチンを接種することで、インフルエンザに感染したときの重症化や死亡率を下げることができます。1歳以上の乳幼児や高齢者のほか、基礎疾患のある人やそのご家族は、毎年流行前のワクチン接種をお勧めします。

インフルエンザワクチンを接種してから抗体がつくられるまでに2週間ほどかかるため、流行の2週間前までにワクチン接種を完了しておく必要があります。国内で流行するのは、毎年12月から翌年3月ごろなので、12月よりも前に接種が完了するよう計画を立てておきましょう。先述のように、ワクチンの効果は接種後、5カ月程度で消えるので注意してください。

(2)インフルエンザの感染を防ぐ
インフルエンザの感染を予防するには、特に流行期は人混みを避け、室内にいるときは換気や加湿をしっかり行ってください。そして手洗いやうがい、マスク着用を徹底し、感染ルートを断つことが大切です。

インフルエンザ以外のウイルス感染症にも有効な感染予防策を紹介します。まず、空気が乾燥すると、鼻や喉の粘膜が乾燥してヒトの異物に対するバリアー機能が低下し、異物であるウイルスが体内に侵入しやすくなります。

夏に冷房を効かせ過ぎたり、冬の寒さで体が冷えたりすると、普段はウイルスの防御に役立っている鼻や喉の粘膜表面の線毛運動が抑制され、体内にウイルスが侵入しやすくなります。室内の温度や湿度を適度に保ち、感染しにくい環境を整えることが大切です。

また、これは主に冬に当てはまるケースですが、厚着をする機会が多いと、体温調節の機能が低下するため、ウイルスに対する抵抗力が弱まるといわれています。もちろん、冬に薄着をすべきというわけではありませんが、屋外と室内は温度差が大きいので、温度に合わせて小まめな衣服の着脱を心掛けましょう。

オトナンサー編集部

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