デカすぎて東京に近づけません! JAMSTECが誇る「巨漢」に乗ってきた 船体の“底なしプール” 何のため?
- 乗りものニュース |

富士山の麓に広がる駿河湾。そこに面した清水港に日本最大級の探査船がいます。JAMSTECが保有する「ちきゅう」は長さや重さだけでなく高さもビッグ! なぜ、ここまで大きいか実際に乗ってハナシを聞いてきました。
清水を拠点に活動 JAMSTECが保有する最も大きな船
日本で一番高い山といえば富士山。では、日本で最も深い湾といわれたらドコをイメージするでしょうか。その答えは駿河湾です。
清水港に停泊するJAMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」(乗りものニュース編集部撮影)。
日本一高い山と日本一深い湾、両方に面しているのが静岡県ですが、その県庁所在地である静岡市の清水港に、日本最大級の探査船がいます。
その船の名は「ちきゅう」。同船はJAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)が保有する地球深部探査船で、その大きさは全長210m、幅38m、総トン数は5万7000トン強もあります。
「ちきゅう」がここまで大きい理由、それは同船が担っている役割にあります。「ちきゅう」は海底下を掘削して地層を採取し、さまざまな分析や研究を行うのが目的です。最大で水深2500m、海底下7000mまで掘削可能ですが、この能力は科学掘削の分野では世界最高レベルにあるとのこと。ここまでの大深度掘削を可能にするために相応の船体サイズが必要になったとも言えます。
船体中央にそびえたつ巨大なデリック(やぐら)こそ、そのためのもので、ここでは1本約10m、重さ約350kgあるドリルパイプを海底下の掘削ポイントに降ろしていきます。こうした作業を行うために、デリックの高さは70m(ドリルフロアから)もあります。ちなみに、船底から計測するとその高さは130mにも達するのだとか。この数値は30階建て高層ビルとほぼ同じです。
ちなみに、ここまで大きくかつ背が高いため、港の入り口に橋がかかっている東京港や横浜港には入ることができないのだとか。また、JAMSTECの本部は神奈川県の横須賀市にありますが、同機構が保有する他の船が接岸可能な横須賀本部岸壁にも同じく入れません。こうした理由や太平洋への行き来のしやすさなどから清水港を拠点に活動しています。
研究区画は4階建て
船体中央のデリック直下が掘削作業のメインステージといえる掘削フロア(ドリルフロア)になります。ここには、掘削機器を操作するための部屋「ドリラーズハウス」があります。室内には「ドリラー」と呼ばれる掘削クルーの専用席(サイバーチェア)があり、掘削作業の責任者から指示を受け、モニターやフロアの作業を見ながらジョイスティックなどを巧みに操って掘削機器を動かします。
「ちきゅう」の船体中央、掘削フロアにある「ドリラーズハウス」。いうなれば掘削の操作司令室といった場所だ(乗りものニュース編集部撮影)。
掘削フロアの下層には「ムーンプール」という開口部があり、ここからドリルパイプなどを海中へと降ろします。40mのドリルパイプ(1本10m×4で1セット)を海中に降ろす時間は、気象条件にもよるものの約5分かかるので、1時間だと500mほどだそう。なので、水深3000mだと、そのエリアの海底に届くドリルパイプを降ろすだけでも6時間程度かかるといいます。
そこからようやく掘削が始まるのですが、掘削の速さは地層の硬さにもよるものの、1時間に3mから30mなので、もしそこが硬い地層だった場合、10m掘り進むのに数時間かかるとのことでした。そのため、ドリルフロアは24時間体制で昼夜を問わず稼働することも。
ドリルパイプが目的の深度へ達すると、先端中心の開口部直上に設置され、地層を採取します。こうしてサンプル採取器「コアバーレル」が採った「コアサンプル(コア試料)」は、パイプ内を通るワイヤーで船上へと引き上げられたのち船首側にある研究区画へと移送されます。
研究区画は4階建てで、まずコアサンプルの切断や初期処理(4階)、X線CTスキャンなどでの各種観察(3階)、精細分析(2階)などが行われます。なお最下層の1階は倉庫や会議室、図書室などがあり、ここでデータ解析やレポート作成などが行われます。
「ちきゅう」の定員は200名で、研究航海の際は190人程度が乗り込むこともあります。乗員は大きく「船を動かす人」「掘削する人」「研究する人」「生活を支える人」に分類することができ、彼らが一丸となることで、同船が担うプロジェクトを支えています。
「動いちゃダメ!」ピンポイントで留まるための特殊な装備
過去、「ちきゅう」はオーストラリア沖や東アフリカ沖など、日本から遠く離れた場所でも活動しており、また民間企業の業務を請け負うなどもしているとのこと。ミッション海域までに長駆足を運ぶ必要があるのはもちろんのこと、その役割上、到着したら今度は、同一海域から動かず、長期にわたって留まり続けなければなりません。乗員は数か月ものあいだ、洋上生活を余儀なくされることもあると言います。
「ちきゅう」のブリッジ(操舵室)。船を一定の場所に維持する操作に1人、船内の状況を把握して作業許可を出すのに1人。基本的にはこの2人だけで操船できる設備を備えている(乗りものニュース編集部)。
なお、海底を掘るために同じ場所に船を留め置きますが、その際「ちきゅう」はアンカー(錨)を使っているわけではありません。強い風や潮の速い海域でも同一地点に留まれるのは、「自動船位保持システム(DPS)」を備えているからです。
そもそも「ちきゅう」には、舵(ラダー)がありません。では、どうやって回頭しているかというと、それは複数備えた「アジマススラスタ」を動かすことで行っています。「アジマススラスタ」とは、水平方向に360度回転可能なポッドにプロペラを装備したもののこと。「ちきゅう」は、これを船底の船首側に3基、船尾側に3基、計6基備えており、それぞれ任意の方向に向けることで前後進や左右の回頭だけでなく、波や風の強いなかでもヘリコプターのように同一エリアに留まることが可能です。
このアジマススラスタと、人工衛星によるGNSS(全地球測位システム)および、海底に設置されたトランスポンダ(音響応答装置)の測位によって正確に割り出された位置データを組み合わせることで、DPSで自動的に同一地点に留まることができるのです。
「ちきゅう」は現在、日本とヨーロッパが主導する国際海洋科学掘削計画(IODP3)の主力船として用いられています。IODP3のプロジェクトには、巨大地震発生のしくみ、将来の地球規模での環境変動の解明、海底下生命圏をはじめとする未踏のフロンティアへの挑戦などがあります。
「ちきゅう」が竣工したのは2005年7月29日のこと。すなわち今年(2025)年は「ちきゅう」が活動を開始してからちょうど20年の節目でもあります。世界最高水準の科学掘削能力を備える日本唯一の船として、今後も同船は人類の未来を拓くさまざまな海洋研究のために活動し続けます。
【動画】建造費500億円超!? 未知なる地球深部を探査する巨大船「ちきゅう」の謎に迫る!
実は損している?
ニュースを読んでポイントが貯まるサービスがあるのを知っていますか?ポイントサイトのECナビでは好きなニュースを読んでポイントを貯めることができるのです。(※ECナビはPeXの姉妹サイトです。)今日読んだニュースが実はお小遣いになるとしたら、ちょっと嬉しいですよね。
ポイントの貯め方はニュースを読む以外にも、アンケート回答や日々のネットショッピングなど多数あるので、好きな貯め方でOK!無料で登録できてすぐに利用できます。貯まったポイントはPeXを通じて現金やAmazonギフトカードなどに交換できます。
運営実績も15年以上!700万人以上の方がポイントを貯めています。毎日好きなニュースを読んでお小遣いを貯めてみませんか?
簡単無料登録はこちらYOUの気持ち聞かせてよ!
いいね | ![]() |
|
---|---|---|
ムカムカ | ![]() |
|
悲しい | ![]() |
|
ふ〜ん | ![]() |
