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技術屋の理想&ドイツ空軍のムチャ振りに泣かされた悲運の爆撃機「ハインケルHe177」

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  • 乗りものニュース
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第2次大戦中の4発エンジン搭載の大型爆撃機というと、アメリカやイギリスの機体がメジャーですが、ドイツでも作られていました。ただ、なかには双子エンジンという異形の機体も。どんな構造なのか、戦歴はどうだったのでしょうか。

ドイツ初の戦略爆撃機になりそこねた異形機

 一般的に戦略爆撃機というと、大型の機体が高々度から大量の爆弾を落とす(降らせる)というイメージが強いかもしれません。実際、第2次世界大戦時のB-17やB-29、ベトナム戦争時のB-52などはそのような描かれ方が多くされています。
 
 しかし、なかには「戦略爆撃機」である4発エンジン機に、単発エンジン機と同様の急降下爆撃を行わせようとした例もあります。そのなかでも特に異色ともいえる機体が、ドイツのハインケルHe177「グライフ」です。

Large 211101 he177 01ドイツ空軍のハインケルHe177「グライフ」爆撃機(画像:イギリス帝国戦争博物館/IWM)。

 He177「グライフ」が生まれたのは1930年代後半のこと。当時のドイツ空軍は、陸軍の装甲部隊と連携して、敵の地上目標をユンカースJu87「スツーカ」急降下爆撃機でたたくような運用方法をメインに据えていました。敵の首都(政府中枢)や重工業地帯、油田などいわゆる“戦略目標”をたたきに行くのではなく、味方部隊(陸軍)の進撃を助けるように敵を攻撃する、いわゆる“戦術目標”を撃破することから、「戦術空軍」といわれる性格の強い空軍でした。

 しかし、ドイツは北の大国ソビエト連邦(現ロシア)との戦いは避けられないと考えていたことから、1930年代には、対ソ連戦を念頭に置いた戦略爆撃の概念も考えるようになります。その最右翼だったのが、ドイツ空軍の初代総参謀長ヴァルター・ヴェーファー中将でした。彼は、ソ連領深奥のウラル山脈まで爆撃に行ける重爆撃機(当時はまだ戦略爆撃機という呼称はなかった)を求めたのです。もしドイツ空軍が早い時期にそのような爆撃機を保有したなら、戦略空軍になっていたかも知れません。

エンジンナセルが最大の空気抵抗 なら数減らそう

 ところが1936(昭和11)年6月3日に、空軍トップのヴェーファー中将が航空機事故で逝去すると、ドイツ空軍は結局、陸軍との密接な連携に重点をおいた戦術空軍へと大きく舵を切って行きます。ただ、そのようななかでも一応ドイツ空軍は、長距離爆撃機を開発しようと、「A計画」なるプロジェクトを始動させました。

 このA計画に、航空機メーカーのハインケル社が名乗りを上げます。P1041計画と名付けられたプランはドイツ空軍とのすり合わせを経て、1937(昭和12)年11月に「He177」という公式呼称が付与されています。なお同機は航続距離や爆弾搭載量などの面で、ドイツ空軍にとって初めての戦略爆撃機といえる機体でした。

Large 211101 he177 02ドイツ空軍のハインケルHe177「グライフ」爆撃機。イギリス空軍の手によってテストが行われているときのものなので、イギリスの国籍標識に描き替えられている(画像:イギリス帝国戦争博物館/IWM)。

 He177の注目すべき点は、4発エンジン機であるにもかかわらずプロペラが2組しかなく、一見すると双発エンジン機のように見えるところです。これは、ダイムラー・ベンツ製のDB601液冷エンジン2基を結合させた、いわゆる「双子エンジン」と呼ばれるDB606を採用したからです(後期にはDB605の双子化エンジンであるDB 610に換装)。このような構造にした場合のメリットは、飛行時に最大の空気抵抗となるエンジンナセル(エンジンカバー)部が4発エンジンであるにもかかわらず左右ふたつで済むため、空気抵抗の減少を図ることが可能という点にあります。

 当時のエンジン技術では、空冷星型エンジンを前後につないだ双子化で出力向上を図ることは比較的容易に可能でしたが、液冷エンジンを横に並べて双子化を図るのは、それなりに難しいことでした。

 加えて、He177にはとんでもない要求が空軍から課せられます。

「急降下爆撃こそベスト!」に振り回される

 1938(昭和13)年のこと、当時の航空省技術局長だったエルンスト・ウーデット少将が、ハインケルに対して本機に急降下爆撃能力を付加するよう命じたのです。ウーデットといえば、戦間期に急降下爆撃の先進国だったアメリカでその薫陶を受け、ドイツ空軍に急降下爆撃技術を普及させた、いわば「急降下爆撃の信奉者」でした。彼は、双発エンジン構造のJu88でも急降下爆撃ができるのだから、本機にもできるものと気楽に考えていた節がありました。

 これに対し、ハインケルは大反対します。外観は双発機ですが実質4発機で、しかもJu88よりもはるかに重いHe177に急降下爆撃能力を付加するのは困難だからでした。しかし、このようなハインケルの抗議は退けられ、空軍の要求に従ってHe177に急降下爆撃能力が付け加えられることになったのです。

Large 211101 he177 03ドイツ空軍のハインケルHe177「グライフ」爆撃機。イギリス空軍の手によってテストが行われているときのものなので、イギリスの国籍標識に描き替えられている(画像:イギリス帝国戦争博物館/IWM)。

 かくしてHe177は、液冷エンジンの双子化と急降下爆撃能力の付加という、ふたつの難題を課せられてしまいました。そして案の定、この両方の問題への対処に苦労した結果、本機の実用化に遅れが生じるようになります。

 結局、急降下爆撃能力の付加については撤回されました。考えてみれば、ボーイングB-29「スーパーフォートレス」やアヴロ「ランカスター」といった鈍重な4発爆撃機に急降下爆撃能力を求めるような、無茶な要求だったからです。

 また、火災や故障を起こしやすい双子エンジンについても、エンジンそのものの換装やエンジン周りの設計修正、整備の強化などで対応し、最終的にはそこそこ高性能な「4発爆撃機」として運用できるようになりました。

戦略爆撃機として開発されるも戦況がそれを許さず

 かくしてHe177には、「グライフ」の愛称が付与されます。これは頭が鷲、体が獅子という伝説上の生き物、すなわち「グリフォン(鷲獅子)」のことを指すドイツ語です。

 本機は当初、洋上攻撃任務に従事。そのなかで、世界初の実用空対艦ミサイルであるヘンシェルHs293の運用能力が付与された機体も一部ありました。また第2次世界大戦のヨーロッパ戦線における分岐点となったといわれる「スターリングラードの戦い」では、輸送機とともに同地への空輸任務にも従事しています。

Large 211101 he177 04ドイツ空軍のハインケルHe177「グライフ」爆撃機(画像:イギリス帝国戦争博物館/IWM)。

 He177は1200機弱作られたそうですが、本格的に運用を始めたころにはドイツが劣勢となっていたことなどから、アメリカやイギリスの4発重爆撃機のように大編隊を組んで敵国の中枢部を爆撃するという、戦略爆撃機としての本来の任務に投入されることはありませんでした。とはいえ1944(昭和19)年初頭には、イギリス本土に対する嫌がらせ規模の夜間爆撃作戦「シュタインボック」に出撃しており、戦略爆撃機としての運用が全く行われなかったわけではありません。

 しかし、実戦への投入後もエンジン・トラブルはついて回ったようで、エンジンに起因する火災で失われた機体は、他の機種に比べて多かったと伝えられます。この問題を解決するには、構造が複雑な双子エンジンを用いた4発化に見切りをつけ、単純にB-17やB-29、アヴロ「ランカスター」のようにエンジン4発を主翼に並列搭載すればよいだけのことでした。実際、ハインケル社もそのように構造を大きく改めたHe277を計画し、開発は部分的に進められたものの、戦局の悪化により、結局、部分開発の段階で断念されています。

 このように、グライフはせっかくドイツ空軍初の戦略爆撃機として開発されたにもかかわらず、メーカーの技術者が航空機としての理想を追求し、あげくドイツ空軍が急降下爆撃能力を要求した結果、必要な時に間に合わなかった、悲運の機体といえるでしょう。登場時期が大幅に遅くならなければ、本来の任務である戦略爆撃で、違う戦果を挙げることができたかもしれません。

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