創業から74年!? 秋葉原の老舗書店が歴史に幕 一坪のスペースに立ち続けた店主の思いは?
- 乗りものニュース |

90歳の店主がひとりで切り盛り
秋葉原駅・電気街口を出てすぐの場所にあるラジオセンター内の書店「万世書房」が、2025年12月下旬にその歴史に幕を下ろすことになりました。
JR車両が走るガード真下の中央が「秋葉原ラジオセンター」になる(斎藤雅道撮影)
同書店は、ラジオセンター1階のわずか1坪ほどのスペースに構える小さな書店です。現在の店主は90歳の霜鳥和子さん。先代店主である父親が1969年に引退したのを機に店を引き継ぎ、現在に至るまで続けてきたといいます。
店舗自体は、ラジオセンターが完成した1951年2月の開業とともにオープンしたとのことで、戦後間もない時期から約75年にわたり、秋葉原駅周辺の変遷を見守ってきました。
「昔は駅前に市場(神田青果市場)があって、ネズミが多くて苦労したこともありましたね。今は周りがすっかり大きな建物ばかりになってしまって。昔ながらのお店も減って、時代の流れを感じます」(霜鳥さん)
ラジオセンターはもともと、神田周辺の露店で営業していたラジオ関連店舗の移転先として開業しました。そのため、無線機や電子部品を扱う店は今も残っていますが、1階部分は時代の変化もあってインバウンド向け店舗が増えています。
「10年ちょっと前くらいからお人形(フィギュア)を扱うお店が増え始めて、今はカードを扱うお店も多いですね。カードが何万円もするって聞いてビックリしちゃった。今はああいうのが売れるのね」(霜鳥さん)
万世書房は、ラジオセンター内の書店ということもあり、無線・通信・電子工作関連の雑誌やムック、技術書など、通信や電子工作に特化した専門書を多く取り扱ってきました。昭和後期から平成一桁にかけてが、書店にとってもアマチュア無線にとっても全盛期だったそうです。
「今は店に来なくても(ネットで)買えるし、昔みたいに子どもが機械をいじったり電子工作をしなくなったのもありますね。昔通ってくれた若い子たちも、今では定年で地元からなかなか出て来られない人がほとんどで、本を買ってくれる人も少なくなりましたね」(霜鳥さん)
閉店理由として最も大きいのは、本が売れなくなってしまったことだといいます。具体的な金額については「恥ずかしくて言えないくらい」とのこと。ただ、年齢的に続けるのが難しくなってきた事情もあるようです。
「補聴器をつけて店に立ってるんだけど、それでも聞き取りが大変になっていてね。ちょうどいい辞め時かなと思っています。売る本も少なくなりましたしね」(霜鳥さん)
最終営業日はまだ決まっていないものの、12月中旬以降、返本作業などが終わり次第、完全閉店となる予定です。同店が閉業すると、ラジオセンター内でインバウンド向けではない店舗は、同じく開業時からある菊池無線など、わずか数店のみとなります。
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