「伝説の鉄道ゲーム」生みの親、運転士不足を救うプロ向けシミュレーターを開発! 「オープニング見たらすぐ分かりますよ」 明かした壮大な構想
- 乗りものニュース |

外国人ドライバー採用に「シミュレーター」
運転手不足が深刻化するなか、特定技能制度で外国人ドライバーの採用に活路を見いだす運輸企業が広がっています。しかしながら、運転免許証の取得という関門が待ち受けており、言語の壁も乗り越えなくてはいけません。そうした運輸企業およびドライバーを目指す外国人の双方にとって“福音”となりそうな業務用自動車教習シミュレーターが登場しました。
「JAPAN TRUCK DRIVING SIMULATOR」の「免許選択」画面。大型2種免許ではバスのリアルなCGが映し出される(千葉市で大塚圭一郎撮影)
幕張メッセ(千葉市)で2026年9月に開催された世界最大級のゲーム展示会「東京ゲームショウ2026」に、ゲーム機のコントローラーなどで知られるホリ(横浜市都筑区)が新製品「JAPAN TRUCK DRIVING SIMULATOR」(JTDS)を出展しました。
JTDSは中型・大型トラックや路線バス、トレーラーを引っ張る牽引車の運転を疑似体験でき、運転免許証の取得をサポートします。言語は日本語、英語、ベトナム語、インドネシア語、中国語の5か国語に対応しています。
トラック・バス大手の日野自動車が開発に協力しただけに、3面のモニターと直径40cmのハンドル形コントローラー、アクセルとブレーキ、クラッチのペダル、シフトレバーなどのセットは本物の運転席のような迫力があります。国内外の自動車教習所などでドライバー養成に活用されることを想定しており、2026年10月にも出荷を始めます。
このJTDSを開発したのは、一世を風靡したゲームの大物開発者です。筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)が十数年来存じ上げている当人を直撃したところ、この先の驚くべき構想を打ち明けてくれました。
この大物開発者とは、爆発的なヒット作となったタイトーの鉄道シミュレーションゲーム「電車でGO!」シリーズの生みの親、齋藤 晃さん(ホリ開発2部勤務)です。
「電車でGO!」は第1作が1997年にゲームセンターにお目見えすると、誰もが鉄道運転士の仕事を疑似体験できるとあって話題を呼び、ゲームソフト第1作は出荷本数が100万本を超えるミリオンセラーとなりました。現在はゲーム機「電車でGO!!」シリーズに継承されています。
齋藤さんに「JTDSと『電車でGO!』の共通点はありますか」と尋ねたところ、「オープニングを見たらすぐに分かりますよ。体験してみてください」とシミュレーターの運転席に座るように促されました。
ペーパードライバーぶりが丸出しに…
「すぐに分かりますよ」という言葉通り、「電車でGO!」のテイストが早速出現しました。「免許選択」の画面では左右のボタンを押して取りたい免許の種類を選び、「大型2種免許」ならばバス、「中型牽引免許」ならば牽引車とトレーラーのそれぞれリアルなCGが浮かび上がってきます。
「JAPAN TRUCK DRIVING SIMULATOR」のセット。運転席をリアルに本格再現した3画面筐体となっている(画像:ホリ)
これは「電車でGO!」でプレーする路線などを選ぶ画面を思い起こさせます。筆者が「『電車でGO!』を始めるときのわくわくした気分を思い出します」と申し上げると齋藤さんは微笑んでこう解説しました。「派手な演出ではありませんが、万人の方ができるような一番良い形で、分かりやすいデザインにしました」
まるで本物のトラックまたはバスの運転席に飛び込んだかのような操作機器も、職人肌の齋藤さんのこだわりが詰まっています。一例として本物さながらのシフトレバーは、オートマチックトランスミッション(AT、自動変速)とマニュアルトランスミッション(MT、手動変速)の両方のモードを用意しています。
齋藤さんは「電車でGO!」のゲーム機の操作部分を設計した際、「ボタンを付ければ十分だ」という社内の声を押し返し、「(加速用の)マスコンハンドルとブレーキハンドルを付けないと臨場感が出ない」と社内を説得して回りました。リアルさを追求するためには妥協を許さない姿勢が、JTDSでもまんべんなく発揮されていました。
ハンドルについては、トラックの運転を疑似体験できるチェコ企業のゲームソフト「Euro Truck Simulator 2」向けのコントローラーを活用できたそうです。
筆者は路線バス運転手になるために必要な大型2種免許を目指すコースを選んだものの、大いに不安でした。筆者は普通車のほかに8t中型車も可能な運転免許証を持っており、一応は「優良ドライバー(ゴールド免許)」です。
ところが、公共交通機関で移動することを是とし、マイカーも持っていない典型的なペーパードライバーなのが実態。MT車を運転したのは、自動車教習所に通っていた三十数年前が最後です。
そこで「走行練習」をATモードで挑戦することにしました。パーキングブレーキを外してシフトレバーを「D」に入れると、ブレーキペダルを解除してアクセルペダルをおそるおそる踏み込みました。
自動車教習所のコースを矢印に沿って運転するのですが、ハンドル操作になかなか慣れず左折する際に縁石を踏み、停止標識では急ブレーキをかけました。車線変更の矢印に気づくのに遅れ、慌ててハンドルを切ったものの方向指示器を出しそびれる場面も。本物の路線バスならば、乗客から悲鳴が出かねないお粗末さです。
「山陰本線の教訓」も忘れヒドすぎる結果に
極めつけだったのは歩行者の飛び出しで、筆者はブレーキが間に合いませんでした。このとき、「しまった、『電車でGO!』の山陰本線での危険予知の教訓を忘れていました」と口走り、齋藤さんを失笑させました。
「電車でGO!」の山陰本線の亀岡(京都府亀岡市)から京都までキハ58形の普通列車を運転するコースでは、嵯峨嵐山から太秦までの区間で「緊急停止」が表示されることがあります。この場合にはトラックが踏切に立ち往生しており、非常ブレーキをかけて衝突を回避するのがミッションとなります。回避に成功すれば得点に当たる「秒」が加算されますが、衝突してしまった場合には持っている「秒」を引かれてしまいます。
同じく齋藤さんが携わっている上、安全運転が至上命題のドライバーを養成する自動車教習シミュレーターならば、危険予知能力を問わないはずがありません。実力不足に加え、心構えが甘いことまで露呈してしまいました。
齋藤さんに横で指導していただく特権があったにもかかわらず七転八倒し、“不良ドライバー”ぶりをいかんなく発揮した筆者の運転は「もう少し頑張りましょう」と不合格の判定。「やっぱりこのままペーパードライバーでいよう」との決意を新たにしました。
家庭用ゲーム作らないないんですか!?
約1年半かけて運転教習に関する調査を積み重ね、「あらゆる要素を準備した上で、2025年10月から一気呵成に開発を進めた」という齋藤さんの職人技をいかんなく発揮したJTDS。
「JAPAN TRUCK DRIVING SIMULATOR」などを展示した東京ゲームショウ2026のホリのブース(千葉市で大塚圭一郎撮影)
齋藤さんは「お客様からは『今までこのような製品がなかったので、登場を待っていた』という声ももらった」と打ち明け、「外国人の人材を受け入れていかないと日本社会が立ちゆかなくなっている中で、活用してもらって運輸業界を下支えできればいい」と意気込みます。
運輸業界の人手不足の緩和に向け、業務用自動車教習シミュレーターが果たすべき役割が大きいことは疑う余地がありません。その一方で「電車でGO!」の生みの親である齋藤さんには、家庭用ゲーム機で遊べるソフトも開発してほしいと願ってしまいます。
そこで、「家庭用ゲームソフトにも展開する計画はないのですか」と直撃すると、齋藤さんは「家庭で遊べるゲームへの展開も視野に入れて、お客様の声を聞いているところです」と明らかにしました。実現すれば「バスの運転手になりたいという夢を持つ子どもが腕を上達でき、人手不足の緩和に一役買えるかもしれない」との夢を描きます。
タイトーというレールを外れても、大物開発者が敷いてきたシミュレーターの路線は「電車でGO!」からしっかりと枝葉を広げていました。
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