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まだ使われていたの? 軍用ヘリ墜落事故、原因は「老朽化」 日本も対岸の火事と言い切れない理由

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  • 乗りものニュース
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陸軍ヘリ墜落の原因は…「それ、まだ使われていたの?」

 韓国の新聞中央日報は2026年9月10日、同年2月に京畿道加平で発生した韓国陸軍のAH-1S「コブラ」の墜落事故原因を報じました。韓国で航空機事故の原因を調査する中央事故調査委員会の会見をまとめたものです。

 委員会の共同議長をつとめる韓国航空大学安全教育院のピョン・スンチョル招聘教授は事故原因について、事故機に装着されていたT53ターボシャフト・エンジンの排気拡散器のシリンダーがエンジン中心軸からずれてしまい、振動する動力軸と圧縮機軸が互いに摩擦して高熱が発生し、動力軸の一部が溶解。溶解物が圧縮機軸に固着して、軸の回転が止まり飛行中にエンジンが停止した――と結論づけました。

 実のところ筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)はこの報道を目にして「えっ?AH-1Sまだ使われていたの?」と思ってしまいました。

陸自の機体相当の性能、韓国陸軍の墜落機

 韓国は1977年にAH-1シリーズでアメリカ海兵隊が運用していたAH-1Jを8機導入していますが、当時の韓国は現在よりも貧しく、AH-1Jの導入は8機で打ち切られてしまいました。

Large figure1 gallery52009年のソウルエアショーで展示された韓国陸軍のAH-1S(右)。これ以降韓国陸軍のAH⁻1Sをソウルエアショーでは目にしていない(竹内 修撮影)

 ただ、韓国最大の仮想敵である北朝鮮(朝鮮人民民主主義共和国)は韓国より多くの戦車や火砲を保有しており、戦車や火砲の不足を補うために、空から攻撃できるヘリコプターを必要としていました。

 このためMDヘリコプターが開発した「MD500」と呼ばれる軽ヘリコプターを武装化して使用していたのですが、1980年代に入って韓国が急激な経済成長を遂げ、財政的に余裕が生じたことから、対戦車ミサイル「TOW」と「ヘルファイア」の運用能力を追加し、電子装置などを陸上自衛隊の運用しているAH-1S相当にアップグレードしたAH-1FをAH-1Sとして62機導入することとなりました。

 韓国陸軍のAH-1Sの導入は陸上自衛隊(1998年まで)より一足早く完了しています。

 韓国では首都ソウル郊外で2年に1度「ソウルエアショー」が開催されています。筆者は2009年に開催されたソウルエアショーでAH-1Sを目にしていますが、その後のソウルエアショーにAH-1Sは姿を見せていません。陸上自衛隊(90機)よりも調達機数が少なく、また後継機「ミルオン」(LUH)が開発されていることから、筆者はAH-1Sはとうの昔に現役を退いていたものだと思っていました。

原因は「老朽化」ほぼ確定か

 ソウルエアショーのような注目を集める場所に姿を見せなくなって以後も、韓国陸軍はAH-1Sの訓練を続けていたようです。中央事故調査委員会は長期間繰り返された飛行と離着陸過程で累積した疲労がエンジン欠陥の背景にあると結論づけました。韓国陸軍関係者も、長期の離着陸訓練により「地面との衝撃などが累積しエンジン排気拡散器内部のシリンダーに微細な変形が発生したとみられる」と述べています。

 エンジンメーカーも同様の見解を示しています。AH-1Sに搭載されたT53の知的財産権は開発したアメリカのライカミング(現在はハネウェルの子会社)からオザーク・エアロワークスに移っており、事故原因の調査にもオザークが協力していますが、同社も長期の運用によって蓄積した疲労が、エンジンの故障と墜落事故の原因だと見ているようです。

 韓国陸軍はオザークに対し、排気拡散器検査周期を調整し、動力軸と圧縮機軸間の隙間を再設計するなど後続対策を取るよう要求すると共に、これまで2031年を予定していたAH-1Sの退役完了時期を前倒しすることも検討しているようです。

 前出のとおり、日本の陸上自衛隊もAH-1Sを運用しています。日本の場合は富士重工業(現SUBARU)でライセンス生産されており、韓国陸軍より調達機数が多く、調達完了時期も遅いのですが、最も新しい機体でも機齢は25年を超えており、2025年3月31日時点の保有機数は36機にまで減少しています。

 AH-1Sは富士総合火力演習や駐屯地祭などで見事なフライトを披露していますが、そのフライトを実現するための陸上自衛隊とSUBARUの苦労は、並大抵のものではないと筆者は耳にしたことがあります。

別の墜落事故も発生…搭乗員は帰らず

 韓国で事故調査結果が発表された数日前、2026年9月5日には、ギリシャのタナグラ空軍基地で行われた航空ショー「アテネ・フライングウィーク」で、同国空軍338飛行隊所属のF-4E「ファントムII」戦闘機が墜落事故を起こしています。

Large figure2 gallery6韓国陸軍のAH-1S「コブラ」(画像:韓国国防省)

 ギリシャ空軍は新造機でF-4を導入しておらず、事故機もドイツ空軍の退役機を購入して改修を加えたものでした。既にギリシャ空軍となってからだけでも20年以上は経過しています。この事故の原因についてはまだ明らかにされていませんが、老朽化によって発生したトラブルによるものの可能性も十分あります。

 前に述べた韓国陸軍のAH-1Sも、ギリシャ空軍のF-4も搭乗員(共に2名)は殉職していますが、後者は最後の最後まで同僚や見学者を事故に巻き込むまいとして、機体を制御しようとしていたことが確認されています。

 責任感の強い搭乗員の育成は簡単なことではありませんし、そのような搭乗員の生命を無駄に散らさないためには、老朽化しすぎた装備品での訓練や展示を差し控え、新しい装備品での訓練や展示に切り替えていく必要があると筆者は思います。

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