日本の潜水艦は「原子力」になるのか? ミサイルVLS化で “もう通常動力だと限界” なワケ
- 乗りものニュース |

ついに「原潜」への布石か!? 動き出したVLS搭載潜水艦プロジェクト
小泉進次郎防衛大臣は2026年9月11日、原子力潜水艦(原潜)の保有に関して「あらゆる選択肢を排除せずに検討する」と述べました。
海上自衛隊が現有する国産潜水艦3種。向かって右奥からおやしお型、中央がそうりゅう型、そして左手前がたいげい型である(画像:海上自衛隊)
安全保障関連三文書の改定を前に、その原潜検討の行方に関心が高まっていますが、前出の小泉防衛大臣の発言の2か月ほど前、7月6日に防衛装備庁は三菱重工業と「次期潜水艦(VLS搭載型)のトータルシップ最適化設計に関する研究」を契約しています。契約金額は38億9950万円、研究期間は2026年度から2029年度までの予定です。
この研究は、日本の潜水艦開発を大きく前進させる可能性を秘めていると言えますが、果たして、このVLS搭載潜水艦の登場によって、日本は将来の原潜を導入する方向にシフトしていくのでしょうか。
すでに、VLS搭載潜水艦については2022年12月に策定された防衛力整備計画で、スタンド・オフ・ミサイルの運用能力向上を目的とした「潜水艦に搭載可能な垂直ミサイル発射システム(VLS)」の開発・整備として明記されていました。
そして、この計画に基づき、昨年(2025年)11月には川崎重工業に対して「水中発射型垂直発射装置の研究試作」が発注されるなど、研究は着実に進められています。
今回の三菱重工業との研究は、これらの巨大な装備品を潜水艦の限られたサイズの中にどう組み込むか、という設計(トータルシップ)の検討を行うものです。研究では、達成すべき3つの技術目標が掲げられています。
1つ目は、見つかりにくさを示す「被探知防止性能」の低下を抑える技術です。VLSを搭載すると船体が長くなるため、この性能の低下が懸念されます。そこで、装備品などを高密度に配置することで低下を食い止めます。
2つ目は、「運動性能」の低下を抑える技術です。船体が大きくなると動きが鈍くなるため、主電動機の高電圧化などで運動性能の低下を局限します。
3つ目は、ミサイル発射時の「潜水艦姿勢維持技術」です。VLSからミサイルを発射した後、船体の姿勢変動を注排水量の制御などで抑え、迅速に次の行動へ移れるようにします。これらの研究では、シミュレーションも活用して性能評価が行われる計画です。
デカすぎてディーゼルじゃ無理?「原潜」化が有力視されるワケ
現時点でVLS搭載潜水艦の具体的な大きさや性能は公表されていませんが、今回の研究目標から、その姿をある程度推測することができます。
川崎重工が作成した次期潜水艦のコンセプト案(画像:川崎重工)
まず、その大きさは海上自衛隊で最新かつ最大の潜水艦「たいげい」型(基準排水量約3000トン、長さ84.0m)を上回ることは確実視されています。搭載するVLSの数にもよりますが、基準排水量は最小でも約5000トンに達する可能性が高いと見られます。
たいげい型は世界最大級の通常動力型潜水艦で、ディーゼルエンジンとリチウムイオン電池を組み合わせたディーゼル電気推進方式を採用しています。しかし、VLS搭載潜水艦は「たいげい」型よりさらに大型化し、水中の抵抗も増えるため、これまで以上の給電能力が求められます。この莫大なエネルギーを、従来のディーゼル電気推進で賄うのは限界に近いとされています。
こうした背景からか、2025年9月に提出された「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」の報告書では、原潜を念頭に「次世代の動力を活用することの検討も含め、必要な研究を進め、技術開発」を実施することが提言されました。このように小泉大臣の発言以前から、VLS搭載潜水艦は動力の面で原潜にならざるを得ないという見方が有力です。
原潜には、通常動力型をはるかに上回る航続距離や速力、潜航時間といった圧倒的なメリットがあります。一方で、高価な建造費、原子力機関の維持・運用に必要な特殊技術、核廃棄物の処理といった重い課題も存在します。
これらを踏まえ、日本の次期VLS搭載潜水艦が「原子力」という選択をするのでしょうか。すでに韓国やオーストラリアも原潜保有を決めているなか、今後の議論の行方が注目されます。
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