韓国ブチギレ「技術だけ持ち逃げされた!?」戦闘機の国際開発めぐるトラブル 日本もかなりマズイ!?
- 乗りものニュース |
韓国当局が戦闘機の関連技術を外部に流出させたインドネシア技術者を送検。両国は戦闘機を共同で開発していましたがトラブル続きで、韓国の怒りは頂点に。一方、日本はこうしたケースに対して、かなり脆弱といえる状況です。
「社外秘資料」を持ち出そうとしたインドネシア技術者
韓国の新聞中央日報は2024年12月19日、KF-21戦闘機の関連技術を外部に流出させたとして、慶南(キョンナム)警察庁安保捜査課がインドネシア技術者5名を送検したと報じました。不正競争防止法と対外貿易法違反にあたるとしています。
2022年に初飛行した韓国のKF-21(画像:韓国防衛事業庁)。
KF-21は韓国空軍が運用しているF-5E/F戦闘機と、F-4戦闘機を後継すべく開発が進められている戦闘機です。試作1号機は2021年4月9日にロールアウトし、2022年7月19日に初飛行しています。予定では2024年の量産開始、2026年からの部隊配備とされていました。
韓国はKF-21の開発コストの自国負担を減らす目的で、外国の参加を呼びかけ、これに応えたインドネシアと2014年10月に共同開発で合意していました。
この共同開発は、インドネシアが開発分担金を出資する見返りに、韓国がKF-21の完成機と技術資料をインドネシアに提供し、インドネシアはそれを利用して国産戦闘機「IF-X」を開発するというものでした。
インドネシアは技術資料を受領する目的で、KF-21開発の主契約社であるKAI(韓国航空宇宙産業)に技術者10名を派遣したのですが、このうち5名が、KAIから持ち出しの認可されていないKF-21関連の資料6600件が入ったUSBディスクを外部に持ち出そうとして逮捕されたのだそうです。
防衛装備品の共同開発に関連した犯罪容疑のため、韓国は防衛事業庁、軍、国家情報院で構成される政府合同調査団を組織して調査にあたり、その調査結果を警察に引継ぎ、警察でも独自の捜査を行った結果、今回の送検に至ったのだそうです。
「出資するから技術ちょうだい」契約そのものがトラブル
KF-21の共同開発に関する韓国とインドネシアのトラブルは技術流出だけではなく、インドネシアの出資金に関しても、長らく両国間の懸案となっていました。
インドネシア空軍塗装のダッソー「ラファール」の模型(竹内 修撮影)。
インドネシアは当初、約1兆6000億ウォン(約1700億円)の支出を韓国に約束していましたが、その払い込みは数次に渡って遅れたうえに値切り始め、一時はインドネシアがKF-21の共同開発から離脱するのではないかとも見られていました。
インドネシアはKF-21への出資金の支払いが遅れた理由に、自国の経済状況を挙げています。しかしその一方で、インドネシアは2022年2月にフランスからダッソー・ラファール戦闘機を42機導入すると発表。2023年8月には米ボーイングとの間で、F-15EX戦闘機を24機導入する覚書に署名しています。
韓国からすれば、KF-21の出資金の支払いを渋っておきながら、より大きな資金が必要な戦闘機を他国から大量に買うのはどうよ? という話でしょう。おまけに技術情報まで外部に持ち出そうとするとするのですから、愛想を尽かすのも無理はない話です。
韓国はこれ以前に“譲歩”も提案していました。防衛事業庁は2024年8月16日にインドネシアとのKF-21の協力関係を見直し、インドネシアの出資金を同国の希望する6000億ウォン程度にまで減額する代わりに、インドネシアへ引き渡す技術情報を縮小する計画案を議決しています。
危機的なのは実は「日本」?
KF-21の共同開発をめぐって韓国とインドネシアの間に起こっている問題は、同じように次期戦闘機の国際共同開発プロジェクト「GCAP」をイギリス・イタリアと進めている日本にとって、まったく他人事ではありません。
航空自衛隊のF-35A戦闘機(画像:航空自衛隊)。
もっとも、英伊両国はユーロファイター戦闘機などで国際共同開発の経験が豊富ですし、GCAPも強固な枠組みで進められていますので、インドネシアのように一方的に出資金を値切るとか、払い込みが遅れるといった事態はまずないと見て良いでしょう。
問題なのは、イギリスとイタリアには重要な防衛機密を漏洩した個人や集団を裁くための法律が存在するのに対し、日本にはそのような法律がないことです。
その法整備には賛否両論あると思いますが、法律の不備は防衛面で不利になることがあります。
GCAPの枠組みが決まる以前、アメリカのロッキード・マーチンはF-2戦闘機の後継として、F-22戦闘機をベースにF-35戦闘機の電子機器などを搭載する戦闘機の提案を行いました。このとき「日本での生産は60%程度」としたことや、「改良作業はすべてアメリカで行う」といった付帯条件は、日本に防衛機密を漏洩した個人や集団を裁く法律がないことを懸念した、アメリカ政府の意向によって設定されたと言われています。
また航空自衛隊が導入を進めているF-35に関しても、機密の漏洩を裁く法律の不備から、同種の法律が整備されている国に比べて、セキュリティの基準が高く設定されているという話もあります。
今のところイギリス、イタリアの両国から、GCAPの機密を漏洩した個人や集団を裁く法律の整備は求められていませんが、開発作業がより進めば、両国から求められる可能性もあり得ると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
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