「約170億円の無人機」を一気に17機ください! 防衛省の要求数が“爆増”した理由 トリプルピンチの解決策は“民”にあり?
- 乗りものニュース |

航空機の取得数としては空前の規模に
防衛省は2026年8月31日に発表した令和9(2027)年度予算の概算要求に、UAS(無人航空機システム)MQ-9B「シーガーディアン」の17機の取得費として、2922億円を盛り込みました。
海上保安庁ですでに運用されているMQ-9B「シーガーディアン」(画像:海上保安庁)
MQ-9Bは既に海上保安庁が沿岸の警戒監視用に運用している大型UASで、防衛省調達分は海上自衛隊によって運用されます。防衛省のMQ-9Bの調達は令和7年度(2024年度)から開始されていますが、今年度(令和8年度/2025年度)の調達数が4機、地上装置を含めた取得費が約765億円であったことを考えると、17機、2922億円という調達要求数と要求額の増え方には驚かされるものがあります。
この数は、年末の公表が予定されている防衛関連三文書を反映した令和9年度予算案で事業費が決定する「事項要求」の形で防衛省から要求されていますので、予算成立の段階でも大幅に減少することはないと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。要求額については、為替相場や物価変動などの影響により、さらに増大する可能性もあるでしょう。
防衛省・自衛隊は無人防衛装備品、いわゆる「無人防衛アセット」の活用を、「新しい戦い方」の柱の一つと位置づけていますので、MQ-9Bの調達要求数と要求額が大きくなるのは当然なのですが、単純計算で1機あたり約171億円の航空機17機の取得費を概算要求に盛り込んだことは、筆者の記憶している限りにおいて、過去には無かったと思います。
それにもかかわらず防衛省が大量要求に踏み切った理由は、3つあると考えられます。
令和9年度概算要求で重視すると明言されている9項目の中には、太平洋・シーレーン(島国日本の生存に不可欠な商船の海路)防衛が含まれています。
航空自衛隊で戦闘機を運用できる基地は太平洋岸には青森県の三沢基地のみです。このため太平洋岸の防衛力強化には、航空機の展開能力を向上させていく必要があります。それには航続距離の長い海上自衛隊のP-1哨戒機の増勢が一策であり、令和9年度概算要求にはP-1の取得費も盛り込まれています。
ただ、P-1は2025年に会計検査院から不具合と稼働率の低さを指摘されており、防衛省がこの指摘に明確な改善策を示せないと、令和9年度予算案ではP-1の取得要求は見送られる可能性があります。その場合、既に海上保安庁で成果を挙げているMQ-9Bの大量取得の必要性はさらに高まります。これが一つ目の理由です。
「内部的なピンチ」を打開するシーガーディアン
航空自衛隊は敵性UASなどの脅威度の低い経空目標への緊急発進に、有人機ではなくUASを活用することを検討しており、今年度予算に試験費が計上されています。
海上自衛隊が試験運用していた際の「シーガーディアン」(画像:海上自衛隊第2航空群)
実際に航空自衛隊が緊急発進にUASを用いる場合、速度性能の高いMQ-28「ゴーストバット」のようなジェットエンジンで飛行するUASを導入することになると思いますが、今年度に経費が計上された試験は、海上自衛隊のMQ-9Bを借りて行われる予定となっています。
海上自衛隊の任務に支障を生じることなく、この運用試験をスムーズに行うためにはまとまった数のMQ-9Bが必要となります。これが令和9年度概算要求でMQ-9Bの大量取得が求められた二つ目の理由と考えられます。
概算要求にはMQ-9Bの運用と整備を行う要員の養成を民間に委託するための経費も要求されており、海上自衛隊が導入する艦載型小型UAV(無人航空機)「V-BAT」についても、要員養成を民間企業に委託する経費が要求されています。
自衛隊は少子化や若年労働者の価値観の変容から人員の募集が思うに任せなくなっており、これまで自衛隊内で行われてきた装備品の要員養成を、部内で行うことが困難になりつつあります。
その点でMQ-9Bは操縦要員以外、航空機の操縦資格を必要としません。またその他の要員の教育も航空機を飛ばしておこなう必要がありませんので、要員養成の民間委託は有人航空機ほど難しくありません。また、有人航空機の場合は機体を大きく分解して詳細な検査や部品交換、修理を行う大規模な整備、いわゆる「IRAN」(Inspection and Repairing As Necessary)も必要ですが、MQ-9BにはIRANも不要です。
このため日常的な整備を行う整備要員の養成を民間企業に委託することは有人航空機に比べて容易ですし、IRANを必要としないため、定期的にメーカーへ送って行う重整備の経費も節約できます。
これはMQ-9BやV-BATに限った話ではありませんが、無人アセットは要員の養成だけでなく、運用でも民間活力を活用する、いわゆる「アウトソーシング」をどこまで進められるかが、成否の鍵を握るのではないかと思います。
太平洋岸の監視能力の強化という喫緊の課題と、少子化や厳しさを増す安全保障環境の中で、防衛を成立させるための無人アセットの活用という中長期的な課題をクリアするため、MQ-9Bの大量調達が要求されたのではないでしょうか。
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