軽巡が潜航する感じ!? アメリカ本土を目指した“潜水空母” 旧海軍「伊400」の顛末は
- 乗りものニュース |
旧日本海軍の潜水艦「伊400」が1944年の1月18日に進水しました。「潜水空母」の異名を持つ同艦の任務はアメリカ本土の攻撃。水上機を搭載のうえ潜航し、アメリカ東海岸を目指そうとしますが、当時の戦況がそれを許しませんでした。
「潜水空母」の異名
1944(昭和19)年の今日、旧日本海軍の潜水艦「伊400」が進水しました。「潜水空母」の異名を持つ同艦は、太平洋を横断しアメリカ東海岸を攻撃しようと目論んでいました。
「伊400」の建造目的は、戦略的任務に従事させることでした。水上攻撃機を搭載のうえアメリカ本土付近まで潜航したら、そこで攻撃機を発進し、ワシントンやニューヨークといった政治・経済の中枢を攻撃しようと計画されたのです。直接の被害は限定的でも、大都市上空に「日の丸」をつけた攻撃機が飛来して爆弾を落とせば、アメリカ世論に大きな影響を与えることが期待できると軍の上層部は考えました。
旧日本海軍の潜水艦「伊400」(画像:アメリカ海軍)。
「伊400」は全長122m、水上排水量3500トンあまり、水中排水量6500トンあまり、航続距離は3万7500海里(約7万km:水上)。これは軽巡洋艦並みの大きさで、通常型潜水艦としては、2012(平成24)年に就役した中国の潜水艦発射弾道弾実験艦032型(NATOコード名「清」、水中排水量6628トン)まで、その記録は破られませんでした。水上攻撃機は3機搭載できました。
計画では18隻竣工 しかし実際は3隻に留まる
1944(昭和19)年12月末、「伊400」は竣工します。しかしすでに戦局は悪化の一途をたどっており、日本本土は連日激しい空襲にさらされ、物資や燃料も欠乏していました。そのような戦況にあって、「伊400」のアメリカ本土攻撃は変更を余儀なくされました。
旧日本海軍の潜水艦「伊400」。三陸沖で駆逐艦「ブルー」に拿捕された直後の写真(画像:アメリカ海軍)。
1945(昭和20)年5月に同盟国ドイツが降伏すると、米英艦隊が大西洋方面から移動してくると予想され、いったんは攻撃目標がパナマ運河とされます。しかし効果が薄いと、ウルシー環礁(現・ミクロネシア連邦)に攻撃目標が再度変更されました。ここはアメリカ空母艦隊の停泊地でした。
7月末、「伊400」は同型艦「伊401」とともに青森県の大湊を出撃します。水上攻撃機を特攻作戦に使用する計画で、偽装のため機体にはアメリカ国籍を示す星条旗が施されました。攻撃予定日は8月17日でした。
しかし周知の通り、その2日前の8月15日に日本は無条件降伏します。攻撃は中止となり、「伊400」「伊401」は日本へ帰還することになりました。偽装までした水上攻撃機も実戦投入されることなく、海中へ投棄されました。
その帰路、2隻は三陸沖でアメリカ軍の駆逐艦と潜水艦に拿捕されます。アメリカ軍兵士はその大きさと、潜水艦に航空機を搭載するという発想に、たいそう驚いたそうです。2隻は1946(昭和21)年1月にアメリカ本土で技術調査されると、その後、ハワイ近海で標的艦とされ撃沈処分されました。
最終的に伊400型は「伊400」「伊401」「伊402」の3隻が完成しました。しかし、戦局の悪化や竣工時期が終戦間際だったことなどから、いずれもその本領を発揮できたとはいえないでしょう。
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