災害時、大容量ポータブル電源あっても使えない!? 非常時に陥りやすい落とし穴とは【電力事業者に聞く】
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災害時に大容量ポータブル電源が使えないことも!?(画像はイメージ)
熊本地震や各地で発生する豪雨災害など、近年は災害による被害が増加傾向にあります。災害に備えて非常食を備蓄している人は多いと思いますが、インフラの遮断の影響で長期化しやすい「停電」については対策が後回しになりがちです。
災害に備えて、電気をうまく備蓄するにはどうすればよいのでしょうか。停電時に必要な電力の目安や、いざという時に役立つ蓄電術について、電力サービス「オクトパスエナジー」サービス部門 オペレーションマネージャーの染谷智也さんに聞きました。
災害時に最低限必要な電力は1日1.5~2kWh
Q.災害によって自宅が停電した場合、2~4人の世帯が1日当たり最低限生活を維持するために必要な電力の目安はどれくらいでしょうか。
染谷さん「停電時に必要な電力量は、家族構成や季節、使用する家電によって異なりますが、使う家電を絞れば通常時より大幅に抑えられます。
オール電化住宅以外の一般家庭では、平時の電力使用量は1日当たり10kWh前後が一つの目安ですが、家族4人が最低限の生活を維持する場合は、約1.5~2kWhが目安になります。停電時に『どうしても欠かせないもの』から順に積み上げると、次のようになります」
・通信、情報収集、照明:約0.5kWh
スマートフォン4台の充電(約0.1kWh)、LEDランタンやスタンドライトを数時間(約0.1kWh)、テレビを3時間程度(約0.3kWh)
・冷蔵庫:約1kWh
食料を守るために、できれば動かし続けたい家電です。
合計:約1.5kWh
さらに「電気ケトルでお湯を沸かす」「電子レンジで温める」といった調理を短時間加えても、2kWh前後に収まります。
停電時は、家族でリビングなど1つの部屋に集まって過ごすのもおすすめです。照明やテレビを1カ所にまとめられるので、使用電力を抑えられます。家族で情報を共有しやすく、お互いの様子も確認しやすいので、安心感にもつながります。
Q.停電に備えて、モバイルバッテリーやポータブル電源などを選ぶ際、「最低限これくらいの容量や機能があると安心」という具体的な判断基準を教えてください。
染谷さん「備えを選ぶときのコツは、『停電時に何を使いたいか』を先に決めることです。ありがちなのが、『大容量だから安心』と思って買ったポータブル電源で、いざという時に電気ケトルが使えなかった、という失敗です。目的に合わないものを選ばないよう、次の3段階で考えてみてください」
■スマホを充電:モバイルバッテリー
10000mAhクラスで、一般的なスマートフォンを1.5~2回程度充電できます。家族で使う場合は、1人当たり10000mAhを目安にすると安心です。
■明かりやテレビ、冷蔵庫も使いたい:ポータブル電源
家庭のコンセントで充電でき、家電もプラグを差し込むだけで使えるので手軽です。選ぶときは、「容量」と「出力」の2つをセットで確認してください。容量は、いわば電気をためる「タンクの大きさ」です。冷蔵庫を含めた最低限の1日分(約1.5〜2kWh)をまかなうなら、2kWh(2000Wh)クラスが目安です。
ただし、表示されている蓄電容量のすべてを実際に使用できるとは限りません。変換時のロスや家電の消費電力、使用環境によって稼働時間は変わるため、少し余裕を持った容量を選ぶことが大切です。
出力は、一度に供給できる電力の「勢い」です。容量が大きくても、出力が足りなければ、電気ケトルや電子レンジなど消費電力の大きい家電は動かせません。使用したい家電の定格消費電力を上回る出力があるか、複数の家電を同時に使う場合は、その合計出力にも対応できるかを確認しましょう。起動時に通常より大きな電力を必要とする家電もあるため、家電とポータブル電源の双方の仕様を確認することが重要です。
また、意外と見落としがちなのが、天井に取り付けられた照明はポータブル電源につなげないという点です。停電時の明かりには、コンセントに差して使うスタンドライトや、充電式のLEDランタンを用意しておきましょう。
ご自宅に太陽光発電がない場合は、折り畳み式の太陽光パネルも有効です。屋根に設置する太陽光発電に比べると発電量は小さく、天候にも左右されますが、停電が長引いて残量が少なくなっても、日中に発電した電気でポータブル電源を充電できます。
■家族の暮らしをできるだけ通常通りにしたい場合:家庭用蓄電池
ペットや乳幼児、高齢のご家族がいる家庭では、暑さや寒さによる影響を受けやすい方を守るためにも、停電時の室温管理や必要な家電への電力確保が重要です。家庭用蓄電池は、こうした非常時にも家庭の暮らしを支える備えの一つになります。
例えば、一般的な家庭用蓄電池の大容量モデル(10〜13kWhクラス)であれば、実際に使用できる家電や使用時間は、蓄電残量、設備構成、家電の消費電力、使用環境などによって異なりますが、使用する家電を絞ることで、蓄えた電気をより長く活用できます。
さらに太陽光発電と組み合わせれば、天候や発電量にもよりますが、停電中も日中に発電した電気で蓄電池を充電できるため、停電が長引いた際にも電気を活用しやすくなります。平時も電気代削減や環境負荷軽減に活用できるため、日常と非常時の両方に役立ちます。
非常時にバッテリーが使えないケースとは?
Q.バッテリー類は「買っておくだけ」ではいざという時に使えないケースもあると聞きます。放電対策や、日常時と非常時を分けない考え方、いわゆるフェーズフリー的な使い方のコツを教えてください。
染谷さん「よくあるのが、『防災袋に入れておいたモバイルバッテリーを、いざ停電時に取り出したら残量がゼロだった』というケースです。モバイルバッテリーやポータブル電源は、使わずに置いておくだけでも少しずつ放電(自然放電)します。数か月に一度は残量を確認し、充電しておくことが大切です。
フェーズフリーの観点では、普段から使うことが一番のメンテナンスになります。モバイルバッテリーは外出時に、ポータブル電源はキャンプやベランダでの作業などに使えば、充電状態の確認や動作チェックが自然にでき、いざという時にも使い慣れた状態で扱えます。私自身もモバイルバッテリーを普段から使っており、残量のほか、本体に膨らみや異常な熱がないかを確認しながら使用しています。
おすすめなのが、年に一度、家族で『おうち停電リハーサル』を行うことです。夜に家の照明を消し、ランタンやポータブル電源だけで過ごしてみると、『明かりが足りない』『充電ケーブルが見当たらない』など、実際に困ることや不足している備えが見えてきます。防災の日などに合わせて行えば、子どもと一緒に防災を自分ごととして学び、家族に必要な備えを確認する機会にもなります。
家庭用蓄電池は、日常的に充放電しながら使うこと自体がフェーズフリーな備えになります。スマートフォンのアプリで、残量や発電・使用の状況をいつでも確認できる製品もあります。ただし、普段使いで電気を使い切ってしまうと、停電時に残量が足りなくなることもあります。停電に備えて一定の残量を常に確保しておく設定ができる製品もあるため、平時の節電と非常時の備えのバランスを、家庭に合わせて決めておくとよいでしょう」
バッテリーによる事故を防ぐには?
Q.ポータブル電源やモバイルバッテリーを非常時に使用・保管する際、過熱や発火事故などを防ぐために絶対にやってはいけないことはありますか。
染谷さん「事故を防ぐには、まず購入時に安全性を確認できる製品を選ぶことが大切です。モバイルバッテリーは、国の安全基準を満たしていることを示す『PSEマーク』の表示が義務付けられているので、必ず確認してください。ポータブル電源は本体がPSEマークの対象外ですが、充電に使うACアダプターには表示が必要なので、そちらを確認するとよいでしょう。また、極端に安価で、メーカーの所在や問い合わせ先が不明な製品は避け、リコール対象になっていないかも確認しておくと安心です。
誤った保管や使用は、発火や事故につながります。保管・使用時にやってはいけないのは、主に次のようなことです」
・夏場の車内や直射日光が当たる場所、暖房器具の近くなど、高温になる場所に置くこと
・落下させたり、強い衝撃や圧力を加えたりすること
衝撃や圧力を加えた直後は異常がなくても、後から発火することがあります。
・「膨らんでいる」「異臭がする」「異常に熱くなる」などの異変があるのに使い続けること
・浸水した製品や水ぬれした製品をそのまま使うこと
外見が乾いていても、内部に残った水分で後日ショートする恐れがあります。
・製品の出力を超える家電をつなぐことや、純正品・対応品以外の充電器やケーブルを使うこと
特に災害時は、避難所や車中泊など、普段と違う環境で使うことが多くなります。充電中はできるだけ目の届く場所に置き、就寝中の充電は避けるなど、平時以上に慎重に扱うことが大切です。また、不要になったバッテリーは一般ごみに出さず、自治体のルールや回収拠点に従って処分してください。
オトナンサー編集部
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