成田空港LCCバス統合 競合から連携へ大転換 何があった? 現場から自然発生の提案とは
- 乗りものニュース |

東京駅と成田空港を片道1000円で結ぶ格安バス2路線が統合します。激しく競合しながら人気を集めてきた両者は、なぜ統合に至ったのでしょうか。旧来の「リムジンバス」とのすみ分けも含め、成田アクセスはますます変化しそうです。
どちらも片道1000円「東京シャトル」「THEアクセス成田」統合
東京駅と成田空港を結ぶ空港連絡バスのうち、低運賃で人気を集めていたふたつの路線が、2020年2月1日(土)に統合されることが各事業者から発表されました。京成バスなど3社が共同運行する「東京シャトル」と、平和交通やジェイアールバス関東などが共同運行する「THEアクセス成田」の2路線です。
統合後の新しい路線愛称は「AIRPORT BUS『TYO-NRT』(エアポートバス東京・成田)」。東京発、空港発合わせて毎日284便と、国内の高速バスや空港連絡バス路線のなかでは群を抜く便数となり、引き続き片道1000円(早朝、深夜便を除く)という運賃が継続されます。
上が「東京シャトル」、下が「THEアクセス成田」(画像:京成バス/中島洋平)。
2012(平成24)年7月に「東京シャトル」が、翌8月に「THEアクセス成田」が運行を開始して以来、両路線は競合関係にありました。一方が増便すればもう一方も増便し、2019年10月の消費税率改定後も、双方とも値上げをしていません。競合のなかで、両者がウェブ上の広告展開やメディア露出を積極的に行い、それが双方の認知度を高める好循環も続いていました。ただ、その人気の高さによって、「希望の時間帯に乗車できない」「乗車バス停や乗り方がわかりづらい」という課題も生まれていました。
激しい競争から一転、両陣営がパートナーとして路線統合するに至った背景を探ります。
「羽田の国際線化」への対抗策として誕生 片道500円だったかも?
東京都心部と成田空港を結ぶバス路線は、従来、おもに東京空港交通が運行していました。車体側面に「Airport Limousine」と書かれた、オレンジの車体色のいわゆる「リムジンバス」です。都内の高級ホテルに直接乗り入れるなどのサービスを提供し、運賃は片道3000円前後でした。
一方、2009(平成21)年、政府が羽田空港も国際線用として活用する方針を打ち出すと、成田空港は、空港どうしの競争に備え「都心から遠い」という評価を覆す必要性に迫られます。その一環として同空港は、格安運賃の空港連絡バスを運行できないか、調査を始めました。このころ、東京駅~茨城空港線が茨城県の補助金により片道500円(航空利用者のみ)で運行し空港利用者の増加に貢献したことから、成田の関係者も東京駅発着の格安バスについて「片道500円」を期待していたようです。
さすがに500円は無理でしたが、2012(平成24)年、前述した2つの路線が片道1000円で開業しました。両路線は、成田空港がLCC(格安航空会社)を積極的に誘致したことと関連して「LCCバス」とも呼ばれますが、LCC利用者に限定せず誰でも乗車することができます。低運賃が人気を集め、両路線とも増便を繰り返しました。
東京駅JRバスターミナルにおける「THEアクセス成田」乗車待ちの列(2019年12月、成定竜一撮影)。
ただ、人気ゆえの課題も生まれました。東京駅では、双方の乗車場所が徒歩で5分ほど離れていたため、「東京シャトル」の乗客が間違って「THEアクセス成田」のバス停に行ってしまい予約便に乗り遅れる、ということも起こっています。なお、「THEアクセス成田」は2014(平成26)年にジェイアールバス関東が参入し、東京駅のJRバスターミナル発着に変更されています。
一方、成田空港発の便は両路線でバス停を共有し、また予約制をとっていません。ただ両者で乗車券の発券方法が異なるため、わかりづらい状況が続いています。「東京シャトル」は夜間早朝を除き空港内の京成バスチケットカウンターでの発券ですが、「THEアクセス成田」は全便が車内で運賃を支払う先着順乗車であるため、始発バス停である第3ターミナルで満席になってしまうと、下流に当たる第1ターミナルで乗車できないケースも起こっていました。
内部からも「共同運行化しては」の声 路線統合へ
高速バスや空港連絡バスどうしの競合はほかにも見られますが、高頻度運行の短距離路線で、これほどまでに競い合う例は特別です。ふだんは積極的なマーケティング活動をあまり行わない事業者どうしが、ウェブ上の広告などを積極的に展開しているのは、お互いに「負けたくない」という意識の強い表われといえます。
また、成田空港のバス停で荷物の積み込みなどを担当する両路線のスタッフが、発車のたびに野球の「攻守交代」のように入れ替わるシーンは、一般の利用者には不自然に感じられていたはずです。より利用しやすくしてほしいという要望は、利用者から、バス事業者にも成田空港にも多く寄せられていたといいます。
東京駅の「東京シャトル」乗り場は路上にある(2019年12月、成定竜一撮影)。
京成バスは路線統合に至った経緯を次のように話します。
「現場からは自然発生的に『共同運行化してはどうか』と声が挙がりました。そこで、お客様の立場で、本来あるべきなのはどのような運行形態か、原点に立ち戻って議論をしました」
今回の統合により利用しやすくなる当路線は、ますます人気を集めると予測されます。では、東京空港交通などが運行する従来のリムジンバスとの関係はどうなるのでしょうか。
「リムジンバス」「LCCバス」すみ分け可能?
現在のところ、格安運賃を売りにするバス路線は当路線のほか、東京駅と有楽町駅のあいだにある鍛冶橋駐車場を発着する「有楽町シャトル」と、大崎駅発着の「成田シャトル」だけです。なお「有楽町シャトル」は「東京シャトル」「THEアクセス成田」とともに統合され「エアポートバス東京・成田」へ名称が変わります。
一方のリムジンバスは、新宿や横浜などの主要駅のほか、都内のホテル、郊外の住宅地へ充実した路線網を築いています。海外からの出張ビジネスパーソンは、交通やホテルを選ぶ際に十分な費用をかける傾向が強いことから、高級ホテルやオフィスビルへの直通需要は減らないと考えられます。また郊外路線は、京王や東急といったリムジンバスの共同運行事業者が、大手私鉄系ならではの沿線における販売力で、引き続き認知度を向上させています。その意味で、格安路線とリムジンバスは住み分けが可能です。
ただし、格安路線が新たに増加するようなことがあれば、状況は一変するでしょう。車両設備や接客といった高いサービスレベルと、運賃のバランスのとり方について、東京空港交通やその共同運行会社は、いまのうちに研究を進める必要があるかもしれません。
大崎駅西口バスターミナルに停まる「成田シャトル」。ウィラーエクスプレスと京成グループが共同運行(2016年10月、中島洋平撮影)。
「東京シャトル」「THEアクセス成田」のスタート直後、筆者(成定竜一:高速バスマーケティング研究所代表)は、ある運行事業者の当時の経営者から「これまで、自分たちから乗客を『獲りに行く』と考えたことはなかったが、積極的に集客するという経験をした。あなたが言っていることが少しわかった」と述懐されたことがあります。高速バスの分野に一定の競争原理を導入し、運賃制度を柔軟にすることで、民間事業者の活力をより引き出すことができると国の会議などで主張してきた筆者にとっては、光栄に感じるひと言でした。その後、約7年間の激しい競争に費やした労力やコストを、決して無駄にすることなく、そこで得た気づきを全国の事業者も積極的に学び、活用することが求められています。
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