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史上初! 人為的に「音速突破」したロケット機 形状に隠された意味と脱出不可のコクピットで命かけた“悪魔の空域” -1946.1.19

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偶然じゃない超音速飛行をやろう! 18Gに耐える“鋼の1枚板”

 今から80年前の1946年1月19日、アメリカの高速実験機「XS-1(1948年にX-1へ改称)」が初飛行を迎えました。この機体はロケット・エンジンを積み、のちに人類で初めて音速を突破することになる飛行機です。

Large figure1 gallery5ロケット・エンジンを搭載した試験機「X-1」。後方はB-29大型爆撃機を転用した母機(画像:NASA)

 人類が公式に音速を超えたのは、翌1947年10月14日火曜日の10時29分、場所はアメリカ・カリフォルニア州モハーヴェ砂漠ミューロック乾湖の上空でした。では、いったいXS-1とはどんな航空機だったのでしょうか。

 そもそも、空気中を音が伝わる速度は、厳密には気温や空気の密度によってわずかに異なりますが、便宜上1225 km/hとされています。そして航空機の速度がどんどん向上すると、音速、そしてその突破がひとつの目標となりました。

 実は第2次世界大戦中、プロペラで推進力を得るレシプロ機が急降下によって音速を超えたというケースがあったともされますが、これは急降下にともなう偶発的なスピードであって、水平飛行で音速に達したわけではありません。それにプロペラ推進では、動力音速飛行は不可能です。

 しかし大戦末期、すでにジェット機が実用化のうえ戦力化されていました。アメリカとイギリスは戦中から音速飛行の研究を行っていましたが、終戦により本格的に音速への挑戦を開始します。特にアメリカ陸軍航空軍(のちのアメリカ空軍)は、精力的に研究を進めました。

 このような状況下、アメリカ初のジェット戦闘機P-59エアラコメットを開発したベル社で主任設計技師を務めていたロバート・ウッズが、軍の音速飛行計画の関係者に高速実験機の開発を申し出て採用されます。

 なお、この音速飛行計画は、遷音速(音速のちょい手前)から音速までの研究を段階的に行い、可能なら超音速にも研究領域を広げるというもので、極秘の扱いでした。

脱出装置なし「死ぬときは機体と一緒」命知らずのテスト飛行

 研究は当初MX-524と称されていましたが、MX-653に変更され、1945年になるとさらにXS-1(Experimental Supersonic-1)とされて、高速実験機にもこの名称が付けられました。

Large figure2 gallery6ロケット・エンジンを搭載した試験機「X-1」(画像:サンディエゴ航空宇宙博物館)。

 当時、すでに遷音速から音速へと移行する速度領域で、衝撃波や抗力の発生により機体が異常振動を起こして破損や空中分解することが知られており、「サウンド・バリアー(Sound Barrier:音の壁)」と呼ばれていました。ゆえに、転じて「悪魔の棲む空域」と称されたこともあります。この「見えない壁」を突破するため、ベルXS-1は、実に18Gに耐えられる機体強度を与えられています。

 エンジンに関しては、安定した推進力が長時間得られるジェット・エンジンと、短時間ながら爆発的な大推進力が得られるロケット・エンジンのどちらを採用するかの検討が続きましたが、最終的に後者が選ばれました。

 しかし、ロケット・エンジンは短時間しか作動せず推進力の微妙な調整も難しいため、ボーイングB-29「ス―パーフォートレス」4発重爆撃機を改造した母機の胴体下部(原型の爆弾倉を転用)に懸吊されて離陸し、空中で切り離されて発進。実験飛行終了後は、自力で着陸するという運用とされました。

 アルミ合金製セミモノコック構造の胴体の形状は、当時、超音速弾として知られていた50口径ブローニング重機関銃(12.7mm重機関銃)の弾丸と同じ形状とし、主翼には長方形の直線翼が選ばれました。実は当時、すでに後退翼のほうが音速突破には適していることが判明していましたが、実績がなかったのであえて直線翼が選ばれたのです。しかもこの直線翼、強度面を考慮してなんと1枚板造りでした。

愛妻がモチーフ「魅力的なグレニス」号が “音の壁”を壊した!

 コックピットの風防は、空気抵抗を考慮して胴体のラインに合わせられていたので、前方をはじめ全周の視界はよくありませんでした。また、レバーロック式で操作に手間がかかる搭乗ハッチしか備えていないため、寸秒を争う緊急脱出はできませんでした。

Large figure3 gallery71947年9月26日、XS-1に座った状態のチャック・イェーガー(画像:USAF)。

 ただし、高速飛行中の機外脱出は不可能であり、よしんば脱出できたとしても、主翼の位置の関係で飛び出したパイロットはほぼ確実に主翼とぶつかるため、脱出できないことは問題とはされませんでした。

 XS-1は1946年1月19日、フロリダ州パインキャッスル陸軍飛行場で初飛行します。操縦はベル社の首席テストパイロット、ジャック・ヴァレンタイン・ウーラムズで、このときは滑空飛行でした。

 以降、かなりの期間にわたって滑空飛行テストが繰り返されましたが、その間に2度、脚の故障で小さな事故を起こしています。なお、リアクション・モーターズXLR11ロケット・エンジンを作動させた動力飛行は、1946年12月9日に実施され、こちらが本来の初飛行といわれることもあるようです。

 かくして実用に供されることになったXS-1の1号機(シリアル46-026)、愛称「グラモラス・グレニス(Glamorous Glennis:魅力的なグレニス)」号は、陸軍航空軍が空軍となって約1か月後の1947年10月14日火曜日の10時29分、カリフォルニア州モハーヴェ砂漠ミューロック乾湖上空で、通算50回目のフライトにおいて水平飛行でマッハ1.06を記録します。かくして、見事サウンド・バリアーを突破したのでした。

 この時にXS-1の操縦輪を握っていたのは、チャールズ・エルウッド“チャック”イェーガー大尉で、乗機のニックネームの「グレニス」は彼の妻の名前でした。

 かくして人類は、今から78年前に音速を突破しました。そして21世紀の今日、最新の第5世代戦闘機では、スーパークルーズ(超音速巡航)できることは当然となっています。

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