なぜ「熱海」がここまで人気なの? 一体何がウケてるの? 「廃れた昭和の観光地」からV字回復→ホテル開業ラッシュ…現地で見えた「独特な過ごし方」
- 乗りものニュース |

新しいホテルがどんどんできている「熱海」
静岡県熱海市は、東京からもっとも近い温泉地のひとつとして、人気を集めています。その熱海にいま、新たな宿泊施設が次々に開業しています。
直近では2026年8月1日(土)に、ホテルチェーン「ヴィラフォンテーヌ」の上位ブランドリゾートホテル「ヴィラージュ熱海」がオープン。その直前の7月18日(土)には「大江戸温泉物語」グループが、老舗ホテルをリブランド、リノベーションしてオールインクルーシブリゾート「TAOYA熱海」を開業しました。さらに3月31日(火)には「ドーミーイン」の上位リゾート「ラビスタ熱海テラス」が、2025年11月1日(土)には老舗の料理旅館を温泉リゾートへとリニューアルした「熱海ホテル渚館」が、それぞれ営業開始しています。
熱海は高度成長期にその地の利を活かし、東京方面からの団体旅行を受け入れることで大きく成長しました。しかしその後、バブル崩壊や旅行需要の変化で、集客は大きく落ち込みます。一時期は“衰退した温泉地”の代名詞ともなり、観光需要に頼っていた市の経済も大打撃を受けることになりました。
こうした危機に際し、熱海市は2006年に財政危機宣言を行い、また観光地としての魅力のPRのためシティプロモーションなどに官民一体となって取り組みます。こうした努力が実を結び、2015年からは5年連続で年間宿泊者数が300万人を超えるなど、熱海は回復に向け着実に歩んできました。
去年から今年にかけての宿泊施設の開業は、すでに熱海が“復活”から“次なる成長”の段階にあると考えていいでしょう。
平日の午前10時にごった返す駅前
では、再び活況を迎えた熱海は、どんな人たちが集まり、どんな過ごし方をしているのでしょうか。7月の平日、現地を訪ね、確かめてみました。
JR熱海駅前。改札口を出て右手にホテルや旅館の送迎バスが発着するロータリーがある(植村祐介撮影)
現地に到着したのは午前10時を回った時刻、まず訪ねたのはJR熱海駅です。改札口に並ぶきっぷ自販機の前はきっぷを求める人、自販機の上の運賃表で目的地までの運賃を調べる人でごった返しています。
一般の観光地の午前10時は、「これから近隣のどこかで観光」という時間帯です。しかし熱海ではホテルや旅館をチェックアウトして、早々に帰路につく人も少なくないのでしょう。
ただ、熱海駅から放射状に南に伸びる二つの商店街に足を運ぶと、そこにはまた別の光景が広がります。
駅前商店街といえば「干物かまぼこ土産物ズラリ」ではなかった!?
熱海駅から向かって左側は「熱海仲見世通り商店街」、右側は「熱海駅前平和通り名店街」で、前者は170mほど、後者は100mほどの、どちらもアーケードを持つ商店街です。
熱海駅前にある無料の足湯「家康の湯」。山側の源泉を使った100%の温泉だ(植村祐介撮影)
一般に「駅前」「観光地」「商店街」となると、土産物店が並ぶイメージがあるでしょう。もちろん熱海にも、名産の干物やかまぼこを扱うお店が目立ちます。しかし朝の時間、それ以上に観光客を集めていたのは、カフェやスイーツのお店でした。
テレビ番組でもたびたび採り上げられている有名プリン店は、開店したばかりですが、すでに多くの男女が列を作っています。またバターをフィーチャーしたフュージョン系和菓子店の店頭でも、購入したお菓子を片手にしたグループ客が、ポーズを決めてスマホで自撮りしています。
早々とランチ営業している飲食店では、アーケードに面したテラス席で、年配のカップルがビールを片手に、早めのランチのようです。このあたりの情景は、たとえば水上や草津といった関東の別の温泉地で見る平日朝の光景とは、明らかに趣を異にしています。
さて、時間をおいて、15時ごろにあらためて駅前に戻ってきました。この時間になると、熱海駅に到着し、駅前のロータリーでホテルや旅館の送迎バスを待つ観光客が目立っていました。またタクシーを利用する人も少なくありません。
駅前の商店街は、朝よりもさらに多くの人が行き交い、人気のお店には長い行列ができています。平日でこの状況ですから、土日にはもっと賑わっているであろうことが、容易に想像できます。
その一方で、駅のきっぷ売り場にはあきらかに日帰りであろうと思われる身軽な若者の姿が見られます。彼らは土産物の袋を持つこともなく、あたかも近場の街で遊んで帰る、そんな空気感です。
遠い観光地より「近くの熱海」なのか…
このあたりを、午前に感じた駅前の雰囲気とを重ね合わせると、熱海の楽しみ方には“ほかの観光地とはちょっと違った部分”があると感じ取れました。
「平和通り名店街」は、朝から多くの観光客で賑わう。目的は散策、買い物、食事など、それぞれ(植村祐介撮影)
まずは1泊2日でも、2泊3日でも、2日間、3日間を楽しむのではなく、初日は午後ゆっくり自宅を出て、そして最終日は早めに自宅に戻るという旅行のスタイルです。1泊2日でも、ちょっとぜいたくなホテルに泊まり、温泉につかり、翌日はチェックアウトしたらゆるゆると熱海駅周辺を散策する、つまり「旅を楽しむ」よりは「時間を楽しむ」という過ごし方をするのに、熱海はちょうどいいのでしょう。
また話題のスイーツを味わい、海で遊び、温泉を楽しむだけなら、日帰りでもその目的は十分に果たせます。午後に見かけた軽装の若者は、そうした“ライトな旅”を楽しんでいたと思われます。
そんな“日常の延長での、ちょっとしたぜいたくや非日常感”的な旅のスタイルを可能としているのは、やはり熱海の“近さ”が大きくかかわっていると思われます。
東京駅からは東海道新幹線こだまで45分、自由席なら3740円です。東海道線の普通列車なら約2時間かかりますが、運賃は2000円ほど。ひと駅ぶんだけ工夫すれば、グリーン料金1000円でぜいたくもできます。
移動に大きなコストがかからないので、浮いた予算でちょっといいホテルや旅館に泊まることも可能です。そして東海道線普通列車なら、1時間に3本あるので、日帰り旅行で「好きな時間に行って、満足したら帰ってくる」という、時間に縛られない移動も可能です。
新たなホテルの開業で注目が集まる熱海は、観光コンテンツの充実で日帰り旅行の需要もさらに取り込み、これから発展を続けていくのかもしれません。
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