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トップガンでおなじみ「蒸気カタパルト」に戻せ!――トランプの指示に海軍どう出る 米空母の将来が台無しに?

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空母の象徴「蒸気カタパルト」か、次世代の「電磁式」か

 アメリカのドナルド・トランプ大統領は2026年8月13日、建造が予定されているジェラルド・R・フォード級原子力空母の4番艦「ドリス・ミラー」(艦名は変更の可能性あり)から、航空機の発艦に使用するカタパルトを電磁式から蒸気式へ変更するよう指示しました。

Large figure1 gallery6ニミッツ級原子力空母の蒸気カタパルト射出されるF/A-18戦闘攻撃機(画像:アメリカ海軍)。

 1960年代から建造が始まったニミッツ級原子力空母の後継となるジェラルド・R・フォード級の1~3番艦は電磁カタパルトを採用しています。4番艦からそれを、ニミッツ級と同じ蒸気カタパルトに戻せ、という異例の指示です。

 蒸気カタパルトは、甲板に埋め込まれた蒸気駆動のピストンによって、艦載機を250km/hで射出する仕組みです。カタパルトの駆動時、立ち上る蒸気と共に航空機が発艦する姿は、映画「トップガン」の主題歌「デンジャーゾーン」など多くの映像作品でも描かれており、軍事や兵器に関心の薄い方でも「空母と言えばコレ」というイメージを持つ人が多いのではないかと思います。

 一方の電磁カタパルトは電磁力で駆動するシャトルによって航空機を射出するもので、蒸気カタパルトのような見た目の勇壮さはありませんが、複雑かつ大がかりな蒸気カタパルトに比べて少ない人員で運用できます。

 また電磁カタパルトは射出速度を55~200ノットの範囲で調整することが可能なため、有人機に比べて重量が軽いUAS(無人航空機)の射出にも適しており、蒸気カタパルトでは難しかった大型機の射出も可能となっています。

 アメリカ海軍には大型の無人空中給油機、MQ-25「スティングレイ」の配備が開始されています。MQ-25は蒸気カタパルトからの射出が可能ですが、一般的に空母艦載機は大雑把に制御される蒸気カタパルトからの加速の衝撃に耐えるために、同規模の陸上機に比べて頑丈に作らざるを得ません。今後アメリカ海軍が無人の空母艦載機の導入を進めるのであれば、電磁カタパルトからの射出を前提とする方が設計の自由度が高くなることは間違いありません。

どうも電磁カタパルトが好きではないトランプ

 トランプ大統領もUAS(無人航空機)には電磁カタパルトが有利な点は承知しているとは思うのですが、にもかかわらずジェラルド・R・フォード級のカタパルトを電磁式から蒸気式に変えるよう指示を出したのは、電磁カタパルトがまだ熟成中の技術のため、少なからぬ不具合が発生しているからです。

Large figure2 gallery7空母「福建」の甲板上で、カタパルト射出されるKJ-600早期警戒機(画像:中国人民解放軍)。

 2026年7月に行われた国防イノベーションサミットでトランプ大統領は、「電磁カタパルトは決して優れたものではなく、複雑すぎる。カタパルトが機能しなかったために、艦艇を呼び戻さねばならないケースが2度あった」と発言。「磁石に少し水が触れるだけで、もう機能しなくなる」と述べています。

 トランプ大統領は前回の大統領在任時、当時建造中だった「ジェラルド・R・フォード」を視察しています。真偽のほどは定かではありませんが、トランプ大統領はこの時の経験から電磁カタパルトに良い印象を抱いておらず、さらに同艦の電磁カタパルトのトラブルに嫌気がさして、蒸気カタパルトへの回帰を言い出したのではないかとも言われています。

 このようにトランプ大統領の蒸気カタパルト回帰は、単なる思い付きとは言えないところもあるのですが、回帰は簡単なことではないようです。

 8月20付のCNNは、アメリカのシンクタンクであるハドソン研究所のブライアン・クラーク上級研究員の話として、「ドリス・ミラー」の再設計に要する費用は「おそらく数十億ドル規模に上る」との見方を示した上で、2034年ごろとみられていた就役もずれ込む可能性があると報じています。

 アメリカ海軍は2026年9月現在、ニミッツ級10隻と「ジェラルド・R・フォード」1隻、合計11隻の原子力空母を保有していますが、2026年中の退役が予定されていたニミッツ級の1番艦「ニミッツ」はジェラルド・R・フォード級の2番艦以降の建造が遅れていることから、退役時期が先送りされています。さらに「ドリス・ミラー」が設計変更に伴い大幅に就役が送れた場合、アメリカ海軍の戦略はかなり窮屈なものになる可能性があります。

そもそもの大問題「作れなくなってる」可能性

 それ以上に問題なのは、アメリカが既に蒸気カタパルトの製造能力を失っている可能性があることです。

Large figure3 gallery8白煙を上げる蒸気カタパルトの発艦をつかさどるカタパルト・オフィサー。この光景がずっと続く可能性も(画像:アメリカ海軍)。

 蒸気カタパルトの原理は単純で、第二次世界大戦時には既に考案されています。このため自国でも簡単に開発できると考えていた国も存在しており、中国はオーストラリア海軍が運用していた蒸気カタパルトを装備する空母「メルボルン」をスクラップとして購入し、国産化に向けて徹底的に分析を行いました。

 しかし、そこで国内製造は容易ではないと判断されたことから、中国は電磁カタパルトの開発と製造に舵を切っています。

 アメリカには蒸気カタパルトを製造するノウハウはあると思いますが、蒸気カタパルトを備えたニミッツ級原子力空母の最終艦「ジョージ・H・W・ブッシュ」(発注は2001年)を建造してから四半世紀が経過しようとしています。当時蒸気カタパルトの製造に携わったエンジニアや工員の多くは第一線を退いていますので、製造技術が「ロストテクノロジー」(失われた技術)になっている可能性も否定できません、

 トランプ大統領は8月13日に「ドリス・ミラー」に装備するカタパルトの設置計画を60日以内に提出するようアメリカ海軍に求めており、海軍がトランプ大統領に屈する形での回答を提出するのかに注目が集まっています。

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