高速道路に鉄道“なすすべ無し” 地図から消える「日本一短い本線」 街は“次”を見据えていた
- 乗りものニュース |

“魚の骨”になったJR北海道
北海道のJR留萌本線が、2026年3月末をもって全線廃止されます。北海道の鉄道はもはや、「ネットワーク」としての機能を失いつつあります。
廃止前の留萌駅。石狩沼田-留萌間は2023年廃止(画像:PIXTA)
国鉄がJRへと民営化した1987年、北海道内の営業キロは3176.6kmありました。当時の路線は北海道の主要都市ほぼすべてを網羅し、路線図の形は北海道の輪郭をほぼなぞっていました。
しかし、2025年時点の営業キロは2254.9kmまで減少、特に沿岸部を走る路線の多くが廃線となり、現在の路線図はさながら“魚の骨”のようです。直近では2024年4月に根室本線の富良野−新得間81.7kmが廃止となり、滝川−富良野間は「根室駅につながらない根室本線」となりました。
こうした廃線が続く原因は、旅客数の減少と、それにともなう収入減、赤字の増大です。1970年代にはじまったモータリゼーションは、1980年代から90年代にかけて「ひとり1台」のクルマ社会をつくり、さらに2000年代に入っての高速道路、無料の高規格道路の整備は、都市間連絡バス事業にとって追い風となりました。
整備から時間が経った路線を多数抱え、投資による高速化もままならず、さらに冬季の施設維持管理に多額の費用が必要なJR北海道は、“税金で作られたインフラ”を利用する自家用車や高速バスというライバルを前に、なすすべもなくなります。
このように高速道路の開通が最終的に運命を決めることになった路線の典型例が、2023年の一部廃止を経て、2026年に全線廃止となる留萌本線の深川-留萌間です。
高速道路が“とどめ”に
留萌本線の同区間は1910年、官設の留萌線として開業。ニシン漁で栄えた留萌市と道内他都市との旅客や貨物の輸送、さらに接続する他路線とともに周辺の炭鉱からの石炭輸送を支えていました。
そして国鉄時代には、その先の羽幌線(1987年廃止)へ直通する優等列車も走っていました。
しかし留萌市は1980年代から漁業、水産加工業が大きく衰退。1980年に約3万7000人だった人口は、2025年には約1万8000人と半数以下となり、少子化にともない鉄道を支える通学需要も減退します。
その一方で道路の整備は進み、2020年には「深川留萌自動車道」が全通。道央道から留萌市までがほぼ無料(深川側1区間のみ有料)の高速道路で結ばれます。
留萌市から深川市までのクルマでの所要時間は約50分で、そのまま道央道に入れば、旭川市まで約1時間半、札幌市までも約2時間です。
対して列車は、各駅停車で留萌駅から深川駅まで約1時間でしたが、1日に片道10本未満の列車しか走っていない留萌本線が利便性で劣るのは明白でした。
暗に「廃止やむなし」
この深川留萌道の開通後における留萌本線の将来像は、北海道が道内の運輸交通に関する施策の総合的な促進を図るため設置した「北海道運輸交通審議会」の「地域公共交通検討会議 鉄道ネットワーキングチーム」の検討によっても明らかでした。
同審議会が2017年2月に発表した「将来を見すえた北海道の鉄道網のあり方について」では、留萌本線は「並行する高規格幹線道路の全線開通を踏まえ、利便性の高い最適な公共交通ネットワークの確保に向け、今後の活力ある地域づくりの観点に十分配慮しながら、他の交通機関との代替も含め、地域における検討・協議を進めていく」と、暗に“廃止やむなし”の考え方が示されていたのです。
留萌本線の存続問題について、留萌市など沿線自治体は当初存続を要望していましたが、最終的にJR北海道の廃止提案を受け入れます。
2016年に末端の留萌-増毛間が廃止されたのち、2023年4月に石狩沼田-留萌間が廃止。深川-石狩沼田間14.4kmが残り、「本線」を名乗る路線としては日本一短くなっていましたが、その区間も2026年3月末で廃止され、留萌本線は地図上から姿を消すことになります。
まだ残る留萌駅、これから生まれ変わる
石狩沼田-留萌間の廃線から約1年半がたった2025年12月、実際に旧留萌駅を訪ねてみると、いかにも“本線の終点”らしい2階建ての旧駅舎は、看板類は取り外されているものの、そのままで残されていました。
留萌市街地からは「留萌IC」で深川留萌道にアクセスできる。深川北ICまでは無料区間(植村祐介撮影)
また往時の繁栄を偲ばせる駅前の広いロータリーには、周辺の商店や飲食店に立ち寄っているであろうクルマが十数台駐車していましたが、雪のなか、行き交う人影はまばらでした。
留萌市では、無償譲渡される予定のJR北海道敷地を含め、旧留萌駅および周辺を再開発し、築60年以上で老朽化に加え耐震性に課題のある市庁舎を、同じ課題を抱える市の複数の社会教育施設とともに「交流複合施設」として移転整備する方針です。
2025年度までは基本構想、基本計画を策定、さらに2026年度までに基本設計を定め、以降に実施設計、建築工事に取りかかる予定となっています。
この複合施設には道の駅、さらには市内巡回バス、都市間バスターミナル機能の停留所も設けられる予定で、新たなまちづくりの拠点としての発展が期待されます。
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