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「巨大輸送機、買うよ」石破総理の本気度 軍事マニアのご趣味ではなさそうなワケ

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  • 乗りものニュース
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2025年2月に訪米した石破総理大臣は、その際トランプ大統領にアメリカ製の輸送機を購入する意欲を示したと報じられました。一部報道によると、そこで名前が挙がったのは戦術輸送機「C-17」とのこと。その背景にはどのようなワケがあるのでしょうか。

石破総理がアメリカ製輸送機に熱視線

 2025年2月27日付に共同通信は、政府関係者の話として、2月7日に訪米した石破茂首相がドナルド・トランプ大統領と会談した際、同大統領にアメリカ製の輸送機を購入したいという考えを伝えていたと報じました。共同通信は石破首相が個別の機種名には言及していないものの、C-17輸送機を念頭に置いてトランプ大統領に伝えたとも報じています。

Large figure1 gallery7 アメリカ空軍のC-17輸送機(画像:アメリカ空軍)。

 C-17は最大77トンの貨物を搭載できる戦術輸送機で、同盟国のアメリカのほか同志国のイギリス、オーストラリア、カナダ、インドなど8か国とNATO(北大西洋条約機構)で採用されています。日本でも一時期、C-1輸送機の後継機として導入が検討されましたが、機体が大きく、運用できる空港が限定されることなどを理由に見送られています。

 C-17の製造ラインは2015(平成27)年に閉鎖されており、共同通信が報じたように石破首相がC-17の導入を念頭に置いてトランプ大統領に導入を打診して、それが実現するのであれば、アメリカ空軍などの中古機を購入するしかありません。

 共同通信は防衛費の増額を要求してくるであろうトランプ大統領を納得させるため、石破首相はアメリカ製防衛装備品の調達拡大に言及したと報じています。しかし、新造機に比べて価格の低い中古機の購入は、派手な金額の「ディール」(取引)を好むトランプ大統領の目には、それほど魅力的に映らないのではないかと筆者(竹内修:軍事ジャーナリスト)は思います。

 にもかかわらず石破首相がトランプ大統領にC-17の購入を打診したのであれば、それは水面下で検討されている、航空自衛隊の輸送機戦力の増強・刷新計画の一環で、C-17購入の可能性を探る目的があってのことだと筆者は思います。

 2018(平成30)年12月に閣議了承された防衛計画の大綱と、2022年12月に閣議了承された国家防衛戦略には「機動展開能力」、すなわち輸送能力を強化するという文言が盛り込まれています。航空自衛隊は2024年3月30日の時点で、C-2輸送機を16機、C-1輸送機を6機、C-130H輸送機を13機、KC-130H空中給油・輸送機を3機、KC-767空中給油・輸送機を4機、KC-46A空中給油・輸送機を2機保有しています。

 このうちC-1輸送機は2024年度中の退役が予定されており、C-130HとC-130Hを改造したKC-130Hは最も新しい機体でも1998(平成10)年度に導入されているため、老朽化が進んでいます。

実は壮大な計画かも!? C-17購入に意欲のワケ

 航空自衛隊の輸送機戦力の刷新・増強計画は、C-130HとKC-130Hの更新を機に、 機動展開能力の強化という目標を達成する手段の一つと位置づけられています。この計画の具体的な方向性はまだ定まっていないと筆者は聞き及んでいます。

Large figure2 gallery8 オーストラリア空軍の運用するC-17。2011年の東日本大震災の際には3機が日本に派遣され、救援物資の輸送で大きな役割を果たした」(画像:オーストラリア空軍)。

 その選択肢の中にはC-1の後継としてのC-2の調達を打ち切り、C-17を購入してウクライナ支援のような大規模国際貢献と、有事や大規模災害発生時のハブ空港間の輸送といった任務に充て、並行してC-130H/KC-130Hの後継機として、C-2には無い空中給油能力(飛行中に他の航空機に給油する能力)を持つ、エアバスA400MやエンブラエルKC-390などの輸送機を購入して、航空自衛隊の総合的な輸送能力と作戦能力を増強するという考えも含まれているようです。

 C-2はよくできた航空機だと思いますが、同機が開発された20世紀後半から21世紀前半と現在では、日本の置かれた環境や安全保障政策は激変しています。前に述べた空中給油能力の欠如など、C-2がその変化に適応できなくなりつつあるという考えにも、筆者は一理あると思います。

 筆者がこの計画を知ったのは最近のことなので、正直な話、にわかには信じられませんでした。しかし、国産防衛装備品に好意的な佐藤正久参議院議院が2025年2月27日に自身のX(旧Twitter)公式アカウントで、わざわざC-2の名前を出して石破首相を批判されているのを見て、C-17の導入がある程度真剣に検討されている証なのではないかと筆者は思いました。

 2025年3月4日に開催された衆議院予算委員会で、石破首相は日本共産党の田村貴昭衆議院議員からの質問に答える形で、「一般論として輸送機(戦力)の強化が必要で、輸送機は飛行距離が長く大きい方がよい」と述べ、また田村議員からのC-17は運用できる空港が限定されるのではないか?という質問に対しても「であれば世界でこれほど(C-17が)使われていない」と反論しています。

 石破首相が従前からC-17の導入に好意的であったためか、SNSでは「軍事マニア趣味で欲しがっているのではないか」といった書き込みが見受けられます。しかし、石破首相は2024年10月1日に首相に就任していますが、航空自衛隊の輸送機戦力の増強・刷新計画は遅くとも2023年には検討が開始されていたものと考えられます.

 したがって、共同通信の報道が事実だとすれば、石破首相は単なる軍事マニア趣味や、トランプ大統領の歓心を買うためではなく、首相就任前から存在していた安全保障政策の実現可能性を探る目的で、アメリカ製輸送機を購入したいという考えを、トランプ大統領に伝えたと考えるべきでしょう。

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