学力低く高校中退…「自閉スペクトラム症」の17歳ひきこもり長男 自分の無力さに絶望 社労士が示した“再起の道しるべ”
- オトナンサー |

筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気や障害で就労が困難なひきこもりの人などを対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。
障害年金を請求するには、請求前に国民年金に加入している必要があります。また制度上、原則として、その障害で初めて病院を受診した日、いわゆる初診日から1年6カ月を経過した日以降に請求することになっています。
ただ浜田さんによると、ひきこもりの人の中には、公的年金に加入する20歳前にその障害で初めて病院を受診している人もいるということです。そのような人が障害年金を請求する場合、いつごろ請求できるのでしょうか。必要な準備も含め、浜田さんが10代のひきこもりの男性がいる家族を例に紹介します。
自分の無力さに嫌気が差しひきこもるように
私はある日、ひきこもりの息子がいる母親から相談を受け、面談を行いました。
母親によると、現在、ひきこもっているのは17歳の馬場勝さん(仮名)です。勝さんは高校中退後、ひきこもり状態に陥ってしまいました。そのことを心配した勝さんの母親は、私との面談で次のように言いました。
「長男には発達障害があります。社会に適応することが難しく、就労も厳しいのではないかと思っています。そのため、障害年金の請求を検討しています。今から請求に向けてできることをしておきたいのです」
そこで私は母親から事情を伺いました。
勝さんは幼少期の頃からぼーっとしてしまうことがあり、学校の先生の指示に理解が追い付かず、仮に行動に移せたとしても、動作がとても遅かったそうです。
勉強が苦手で国語の場合、漢字が覚えられず、音読をすると読み間違いや読み飛ばしをしてしまう状態でした。算数については計算ミスが多く、文章題で式を作ることが難しかったといいます。また、他の子とコミュニケーションを取ることが苦手で、級友の輪の中に入ることができませんでした。
そのようなことで、小学校の担任から発達障害の診療も行う小児科を紹介され、母親は勝さんを受診させました。検査の結果、勝さんは「自閉スペクトラム症」と診断されたということです。母子と小学校の先生で話し合った結果、勝さんは支援学級に移ることになりました。
その後、中学校に進学した勝さん。やはり勉強についていけず、中学校でも支援学級に入ることになりました。その学級では、小学校低学年レベルの内容を復習していたそうです。
勝さんはおとなしい性格で、級友にいじわるをされても拒否できず、ストレスでよく頭痛や腹痛を起こしていました。それでも、何とか中学校を卒業した勝さんは通信制の高校に進学。しかし不安や緊張から、学校に慣れることはなかなかできませんでした。勉強もまったくついていけなかった勝さんは次第に通学することが苦痛になり、やがて不登校になってしまいました。
「なんで自分はこんなに何もできないんだろう」
16歳の若さで人生に絶望した勝さんは高校を中退。その後、ひきこもりのような生活に陥ってしまいました。
勝さんは高校を退学した後も母親に連れられ、何とか月に1回程度の通院は続けています。それでも勝さんの状況は一向に改善することはありません。
社会に適応することも、就労することも難しい。将来へのお金に不安が残る。
勝さんと母親がそのようなことを医師に相談したところ、「障害年金の受給を検討してみたらどうか」というアドバイスを受けました。
20歳になったときに請求できるケースとは
公的年金に加入する20歳前に初診がある場合、「障害基礎年金」を請求することになります。
障害基礎年金は1級と2級があり、より障害状態が重い方が1級となっています。仮に障害基礎年金の2級に該当した場合、金額は次の通りです。
【障害基礎年金2級】
障害基礎年金 6万9308円
障害年金生活者支援給付金 5450円
合計 7万4758円
※いずれも月額換算で2025年度の金額
勝さんは小学生の頃に初診があるので、国民年金の加入が始まる20歳に達した日(20歳の誕生日の前日)に請求することができます。そこまで確認したところ、母親は次のように質問しました。
「公的年金に加入していない20歳前に初診があれば、どのようなケースでも20歳に達した日から障害基礎年金が請求できるのでしょうか」
「いいえ、必ずしもそうではありません。例えば初診が19歳1カ月目だったとします。障害年金は初診日から1年6カ月を経過した日に請求することになるので20歳7カ月目になります。よって20歳に達した日に請求するためには、初診が18歳6カ月目以前になっている必要があるのです」
「なるほど。とりあえず長男は20歳に達した日から請求ができることは分かりました。ですが、結局のところ私たち家族は一体何から始めればよいのでしょうか」
「まずは事前準備から始めることになります。具体的には『(1)日常生活の困難さを文書にまとめる』『(2)幼少期から20歳まで(請求時まで)の状況を文書にまとめておく』の2つです」
私は、まず(1)から説明しました。
「医師に診断書の作成をお願いする際、日常生活の困難さをしっかりと伝えておく必要があります。伝えるのは口頭でも構いませんが、できれば文書にした方が望ましいでしょう。文書にしておけば抜け漏れも防げますし、診察時間の短縮にもつながるからです」
そこまで説明した私は、せっかくなので勝さんの日常生活の様子を少しだけ聞き取りました。すると次のようなことが分かりました。
食事は母親が用意したものを食べています。母親が忙しいときは、勝さんが自分で用意することもあるそうです。しかし栄養バランスは全く考えていないようで「とにかくおなかがいっぱいになればよい」という考え方のようです。
例えば、インスタントラーメンや冷凍うどんを食べるときは野菜や肉などの具材を入れるのが面倒なので何も入れない、食パンの場合は何も付けずにそのまま食べるという状況とのこと。栄養バランスを考えることがないので、母親が食事の世話をしないと健康面で不安が残ります。
勝さんは整理整頓が苦手で、部屋の掃除はまったくしていないそうです。勝さんは母親が部屋に入って掃除をすることをとても嫌がるので、部屋の中は物であふれかえっています。
またあるとき、仕事で忙しかった母親は勝さんに洗濯を頼んだことがありました。すると、洗い終わった洗濯物が洗濯機の中にそのまま放置されていたそうです。母親が理由を聞くと「洗濯物を『洗う』ように言われたけど『干して』までは言われなかったから」と勝さんはきょとんとした表情で答えました。
母親が頼んだ「洗濯をお願いね」とは「洗濯物を洗って干すまで。できれば干した洗濯物を取り込むまで」を指しているはずですが、勝さんにはそれがまったく理解できなかったようです。
このエピソードから、勝さんは言外のことを理解して行動に移すことが苦手であることが伝わってきました。
母親からの聞き取りをメモした後、私は(2)の説明をしました。
「発達障害がある人は、幼少期から請求時点までの様子を『病歴・就労状況等申立書』という書類にまとめるルールになっています。病歴・就労状況等申立書はご本人や代理人が作成します。息子さんの同意が得られれば、先ほどご説明した(1)と(2)の文書は私が作成することもできます」
「それは助かります。長男にも話をして同意を得てみます」
母親はほっとした表情を見せました。
面談後、母親から「長男から同意を得た」という連絡を受け、その後も私は母親から必要な情報を聞き取りました。勝さんが20歳になったら速やかに障害年金を請求できるよう、現在も母親と連携して準備を進めています。
社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也
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