中国の航空会社が減便しても「大した影響はない」本当か? 日本人が“できなくなること”とは
- 乗りものニュース |

「大勢には影響ない」は本当か?
日本と中国との関係の悪化に伴い、中国系航空会社の日本行き路線の減便が広がっています。
中国東方航空のA321の機内。シート生地はごわっとした材質で、パーソナルモニターの設置はない(後藤一泰撮影)
こうした事態について、SNSでは「中国人観光客が減るのでオーバーツーリズムが解消される」「中国人観光客は日本でも中国系旅行会社を使い、中国系資本のホテルに泊まるので、経済的な影響はそれほどない」という意見が多く見られます。
もちろんそれはある意味正しい分析ですが、実はこの減便が、海外渡航を考える日本人旅行者にも大きな影響を与える可能性があることをご存じでしょうか。
日本と海外を結ぶ航空路線について、JAL(日本航空)やANA(全日空)など日本のFSC(フルサービス航空会社)を中心に考えると、その発着地は羽田国際空港、成田国際空港、中部国際空港、関西国際空港の「4大国際空港」にほぼ集約されます。
つまり日本の地方都市から日本のFSCを使い海外に出かけるときは、上記のいずれかの空港まで空路もしくは陸路で移動して乗り換える必要があります。
ところが中国系のFSCは、中国の主要都市とこれら4大国際空港に加え、日本の地方都市を結ぶ航空路線を数多く開設しています。
たとえば中国の3大FSCのひとつである中国国際航空は、北京、上海、杭州、大連、天津などと新千歳空港、仙台空港、広島空港、福岡空港、那覇空港などとの間に直行便を飛ばしています。残るふたつの中国東方航空、中国南方航空も同様です。
そしてこうした「中国の主要都市−日本の地方都市」を直接結ぶ航空路線は、日本の地方都市を訪れる中国人観光客の便利な手段となっているだけではありません。それら日本の地方都市およびその周辺に住む人々にとって、前記の4大国際空港に足を運ぶことなく海外に出かけることができる便利なゲートウェイとなっているのです。
ここで「両国間の関係が冷え込むなか、中国に観光に行く日本人なんて、それほど多くないのでは?」と思われる人も多いでしょう。確かに、こうした海外に出かける日本人の目的地が中国国内であれば、その影響は限定的とも言えるかもしれません。しかし問題はもう少し複雑です。
「中国経由」でぐんと広がる選択肢が消える…
実は上記の北京、上海、杭州、大連、天津など中国の大都市の空港は、さらにそこから第三国へも数多くの航空路線のネットワークを持っています。そして日本の地方空港からこれらの空港を経由して、それら第三国に飛ぶ旅行者が少なからず存在します。
日本にも多く就航する中国南方航空の機体(画像:PIXTA)
所要時間については、東南アジアや中東、ヨーロッパの都市を目的地とする場合、日本の4大国際空港を利用するよりもトータルではあまり変わらない、もしくは利用便によってはより短くなることもあります。
さらに運賃も非常に魅力的です。時期や路線によっては、出発する都市から4大国際空港まで、国内を移動するレベルの費用で、海外に行ける例もあるのです。
たとえば新潟空港(新潟県)からタイの首都バンコクのスワンナプーム国際空港までの格安航空券をOTA(オンライン旅行会社)で購入すると、最安値となる中国東方航空では、往復3万円を下回ることもあります。もちろんこれは燃油サーチャージ込みの金額です。
もちろん、中国系航空会社の機内では日本語でのきめ細やかな応接はありませんし、機内エンタメも日本語対応していないなど、JALやANAのような“おもてなし”を期待するのはいささか無理がありますし、シートピッチも狭いなど、設備も見劣りすることは否めません。ただそれでもLCCよりは十分に広く、無料の機内食もあり、さらに一定量の預け入れ荷物は無料です。
LCCを使うために新潟から成田国際空港や関西国際空港まで移動するだけでも2万円以上の費用がかかることを考えれば、海外旅行の足としては十分に割り切れるレベルでしょう。同様の例は、小松空港(石川県)、那覇空港(沖縄県)などでも見られます。
もし中国の主要都市と日本の地方都市を結ぶ航空路線の運休が長引けば、こうした日本の地方都市から中国を経由して第三国という格安航空券の存在が危ぶまれることになります。
もちろん、それら地方都市からは、韓国の航空会社を利用し、仁川空港を経由して第三国へというルートもありますが、こちらは中国経由に比べ割高です。また選択肢が少なくなることは旅行者にとってけっして有利に働くとは言えません。
誰もが自由に、格安で海外旅行を楽しむため、こうした政治の対立による航空路線の減便がなくなることを期待したいと思います。
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