子どもを叱るときに決して使ってはいけない言葉とは。大声で怒鳴らなくても自然にしつけができる「喜びを分かち合う力」の育て方
- マイナビウーマン |

友だちと仲良くできる子になってほしい。人の気持ちに優しく寄り添える子に育ってほしい。親として自然な願いだと思います。では、子どもが豊かな社会性を育むにあたって、私たちはどんなことを大切にしていけば良いのでしょう。
\子育ては過保護でいい。/
児童精神科医として50年にわたり、多くの子どもと保護者に接してきた佐々木正美先生が伝える子どもの心とからだの発達のために本当に大切にしたいこと。
子育て中のママ・パパの悩みに寄り添う佐々木先生のメッセージを、書籍『子育てのきほん 新装版』(ポプラ社)から一部抜粋してお届けします。
子どもが喜ぶことを親が喜ぶことで、「喜びを分かち合う力」が育ちます
※画像はイメージです
私が非常に尊敬するふたりの研究者がいます。ひとりはアンリ・ワロン(1879~1962年)です。この人は、フランスの発達心理学者、精神科医で、教育者でもありました。20世紀を代表する心理学者のひとり、スイスのジャン・ピアジェ(1896~1980年)とほぼ同じ時期に活躍した人です。
ワロンはこんなふうに言っています。
「喜びを分かち合う力を育てるということは、子どもが喜ぶことをしてあげる、ということだ」
私がずっと言い続けている「赤ちゃんが喜ぶことをしてあげなさい」というのは、こういうことなのです。
親が子どもをあやし、喜ばせること。しかもそれを親自身が喜びとしているということ。これが「喜びを分かち合う力を育てる」ことにつながるのだということです。
子どもが親にくすぐられたり、いないいないばあをしてもらったり、抱っこしてもらったりして、キャッキャと声を上げて喜び、親は子どもが喜ぶ姿を見て喜ぶ。この状態こそが、子どもにとって最大の喜びなのだと。
子どもは、自分をあやしてくれる親が心からそれを楽しみ、笑う自分を見て笑ってくれると、さらに喜びます。
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子どもはこうした喜びを知ることで、人と交わることの喜びを知るようになっていくのです。
この感覚は乳児期の後期から少しずつ育っていきます。
ワロンは非常に詳細に赤ちゃんが発育していくプロセスを研究しつづけました。その結果、人間は乳児期の前半に「気持ちがいいこと、楽しいことを与えられるとうれしい」という感覚を持つようになりますが、乳児期後半になると「喜びを与えてくれる大人も喜んでいないと、楽しくない」という感覚を持つようになってくることがわかったのです。
大人がいやいや抱っこしたり、あやしたりしても、赤ちゃんはあまり喜びを感じないのです。逆にいえば、大人がうれしそうにあやしてくれると、大喜びするようになる。乳児期後半になると「自分が笑うと、お母さんも喜んでくれる」ということがわかるようになるんですね。それが「いっしょに喜び合いたい」「いっしょに喜ぶともっと楽しい」という気持ちにつながる。これが「喜びを分かち合う」ということの出発点になるのです。
ワロンが、長年にわたる観察と研究の末に行き着いたのが「お互いに喜び合うことが、人間の最大の喜びであり、これが人間的なコミュニケーションの根源である」ということで、「この力は乳児期後半から育ち始める」という結論でした。
私もワロンの考える通りだと思います。
喜びを分かち合う力が育つと、子どもはやがてお母さんの悲しみも理解できるようになります
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そしてもうひとつ付け加えるならば、喜びを分かち合う力が育てば育つほど、少し遅れるようにして悲しみをも分かち合う力が育ってくるのです。
悲しみを分かち合う力は意識的に「育てる」ものではありません。子どもが喜ぶことを喜んでしてあげるなかで、喜びを親子で共有することでしか育ちません。そうした時間を最初は親子で、やがて先生や友達と共有していくうちに、悲しみを分かち合う力は育っていきます。他者の心の痛みや、悲しみを理解する「思いやり」は、ともに喜び合うことを知って、初めて育っていくものなのです。
しつけをする必要があるときにも、「いけないことをすると、お母さんが悲しむ」ということがわかるようになる。お母さんの「怒り」ではなく、「悲しみ」を理解できるようになるのです。「ああ、お母さんが悲しがっている」という気持ちが理解できることで、初めて叱られたことの意味も少しずつわかるようになります。
子どもが喜ぶことをしてあげていれば、やがて大声で怒ったり、怒鳴らなくても、自然にしつけもできるということです。
「してはダメ」「これはダメ」と言うよりも「こうしたらいいよ」「こうしたほうがいい」とおだやかに、何度も根気強く諭し、そして待つことです。
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「あれが欲しいこれが欲しい」と店の前で泣きわめく子どもを見ると、どうしてもお母さんは叱りたくなるでしょう。けれど、なんでそんなに泣くのかといえば「泣かなくては買ってもらえないことがわかっているから」です。お母さんは「泣けば買ってもらえると思っているから泣くのだ」と思うかもしれないけれど、これは大きな違いです。その子には「泣かなくても買ってもらえた」という経験が少ないのです。おやつひとつでも、小さなおもちゃでも、「どれが欲しい?」「これがいい」と言って、それを買ってもらった経験がほとんどないのだと思います。
その子が泣くのは「このおもちゃがどうしても欲しい」からではありません。お母さんに自分の言うことをもっときいてほしい、ということなのです。
「いじめっ子」は悲しみを分かち合う力が育っていない子どもです
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ワロンの著作を読み返していると、近年とくにしみじみと感じることがあります。全国の小中学校で「いじめ」が問題になっていることです。小中学校に限らず、高校、大学、会社でも状況は変わりがありません。
「いじめっ子」─友達をいじめる子というのは、友達と悲しみを分かち合う力がない子なのです。ほとんどのケースが、うんと小さいときに親と喜びを分かち合うことがなかった、あるいはとても少なかったという子たちです。
子どもを喜ばせることがなによりの喜びだ、と思って育ててもらった経験がなかったのでしょうね。喜びを分かち合うことを知らない子は、悲しみを分かち合うことができない。いじめっ子というのはその典型的な姿です。
保育園などで、ほかの子をいじめる子がいた場合、私は「いじめられた子をなぐさめるのではなく、いじめた子を抱きしめてあげてください」といつもアドバイスをしています。
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もちろんいじめられた子にもケアをしてあげる必要もありますが、もっと気をつけて見てあげてほしいのはいじめた子のほうです。「もうしてはいけない」と言うのではなく、「○○ちゃんも悲しいんだよね」と言ってあげるだけでいい。
ほとんどの場合、子ども自身もいじめることが楽しくてやっているわけではないのです。悪いということがわかっています。だからこそ「やってはいけない」「二度としないでね」という言葉は使うべきではないのです。乱暴なことをした子、いじめた子は、いじめられた子ども以上に傷ついた子どもだからです。
これは家庭でも同じことで、「そういうことをする子は大嫌い」「そんなことをしたらもう家においてあげない」というような言葉で叱ってはいけません。
そう感じさせる言葉を使わないでください。
叱ることがあってもあなたを見放したり、嫌いになったりはしないのだ、ということをなによりも伝えてあげてほしいのです。
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この続きは、是非書籍でご覧ください。
『子育てのきほん 新装版』(ポプラ社)
※本記事は、『子育てのきほん 新装版』著:佐々木 正美、イラスト:100%ORANGE/ポプラ社)より抜粋・再編集して作成しました。
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