JR東日本「荷物新幹線」になぜ熱心? JR貨物はどう思ってる? 次世代新幹線も「物流」前提か
- 乗りものニュース |

鉄道網を活用した物流サービスが拡大していますが、特に熱心なのがJR東日本です。2025年秋には新幹線で荷物輸送専用車両のデビューも予定されています。なぜ同社は今、荷物輸送サービスに注力するのでしょうか。
荷物輸送の専用編成が今秋デビュー
コロナ禍以降、鉄道網を活用した物流サービスが拡大しています。JR東日本が2021年10月から始めた荷物輸送サービス「はこビュン」の定期輸送では、イチゴやサクランボなど高価格帯の果物のニーズが大きいといいます。また、地方の病院から東京の検査機関への医療用検体の輸送、機器故障時の倉庫から工場への部品輸送などの利用も広がっています。
JR東日本はE3系新幹線1編成を使い、2025年秋から荷物輸送の専用編成を走らせる(画像:JR東日本)
同様のサービスは、JR東日本と共同で行っているJR北海道を含むJR旅客6社すべてが行っていますが、その中でも特に熱心なのがJR東日本です。
現在の荷物輸送は旧車販準備室など業務用スペースに数十箱の段ボールを搭載していますが、JR東日本は2023年、2024年に1両単位で100箱単位の荷物を搭載する多量輸送トライアルを実施。2025年4月から臨時列車の2両を荷物用に充てる「大口定期運行サービス」を開始します。
さらに一歩進んだサービスとして、2025年秋に荷物輸送専用車両がデビューします。これは山形新幹線で使われていたE3系車両1編成(7両)の全座席を撤去して、1000箱単位の搭載を可能にするもの。盛岡新幹線車両センターと東京新幹線車両センター間で積み降ろしをして、盛岡~東京間のE5系「やまびこ」に併結して運転します。
これまで鉄道による物流サービスはJR貨物が一手に担ってきましたが、新幹線の参入で影響はないのでしょうか。
JR貨物に「荷物新幹線」をどう受け止めているか聞いてみると、「現在、旅客会社が行っている荷物輸送は長距離、大量輸送を得意とする当社の輸送とはニーズが異なるものと考えています」と答えます。
新聞やテレビはしばしば、JR貨物とJR旅客各社の輸送サービスをひとくくりに報じがちですが、重量物を貨車・コンテナ単位で運ぶ「貨物輸送」と、手荷物・小荷物を運ぶ「荷物輸送」は本来、明確に区分されるものです。
なぜJR東日本は荷物輸送に注力するのか
自動車が普及し、道路網が整備されるまで、鉄道は陸上交通における独占的な存在でした。鉄道でなければ荷物を全国各地へ迅速、正確に運ぶことはできなかったため、現在なら宅配便に依頼するような荷物も鉄道で送られていました。
荷物輸送は旅客列車に「荷物車」を連結、または客車の一部を「荷物車」として輸送しました。主要幹線では荷物専用列車が設定されるほどでしたが、1970年代に入ると、トラック輸送が宅配便などの多頻度少量輸送に進出。国鉄の扱い個数は1974(昭和49)年の約7億8000万個をピークに減少に転じ、1980(昭和55)年には半減しました。
荷物輸送は国鉄民営化を控えた1986(昭和61)年、新幹線を利用した「レールゴーサービス」などごく一部を除き、全廃されましたが、国鉄では貨物局が貨物輸送、旅客局が旅客輸送と荷物輸送が管轄していた経緯から、荷物輸送は旅客会社に引き継がれました。
JR東日本は法人向けの「はこビュン」に加え、個人向けに列車出発の30分前までに荷物1つから利用できる「はこビュンQuick」も展開しており、今後は日本郵政グループや日本通運グループと連携し、さらにサービスを拡大する予定です。
こうした歴史を踏まえてみると、新幹線を利用した物流サービスは約40年の時を経て復活した「荷物輸送」であり、JR貨物とは競合しない存在であることが分かるでしょう。
ではなぜJR東日本は荷物輸送サービスに注力しているのでしょうか。
2023年度の東北新幹線の旅客運輸収入は、対2018年度で9割弱の水準です。2024年度は対前年比3~4%増収する見込みですが、2019年に消費税率が改定されたことを踏まえれば、順調とは言えません。
また、東北地方は人口減少が進んでいる地域であり、旅客需要も縮小が見込まれます。そうした中、収益を最大化するためには、輸送量の減少分をこれまでと異なる形でお金に変えなければなりません。そのひとつの選択肢が荷物輸送というわけです。
東海道・山陽新幹線の「荷物輸送」の需要は?
野村総合研究所は2025年1月、新幹線荷物輸送による速達需要の潜在需要を独自に推計した結果、東海道・山陽新幹線では1列車あたり2両、その他の線区では最大1両程度の需要が見込まれるとレポートしています。
もちろんこれは「新幹線が輸送ポテンシャルを最大限に発揮した場合」の推計で、ハードルの高い目標ですが、2030年度のデビューを目指して開発が進む東北新幹線向け次期車両「E10系」では、荷物輸送用ドアを設置するなど、荷物輸送の拡大を見据えた車両構造としています。
一方、E10系は事実上の試作車両にあたる第1編成にグランクラスを設定しないことが話題となりました。量産車の仕様は今後、検討するとのことですが、「なすの」や「やまびこ」など短区間列車ではグランクラスの利用率が芳しくないことから、これら列車に充当する車両は上級座席より(積載スペースは限定的ですが)荷物輸送を優先したとも言えそうです。
前述の「大口定期運行サービス」では臨時列車の車両2両を荷物用に使用しますが、推計のように輸送量が増えれば、将来の車両は10両中1両が荷物車になる可能性もあるでしょう。
もうひとつは東京を中心に、東北、秋田、山形、北陸、上越の5方面に広がるJR東日本の新幹線ネットワークの特性です。現在は東北新幹線のみの展開ですが、他線区でも検討が進んでいます。各地の農産物、水産物など豊かな資源を東京に運び、さらにグループの商業施設で活用することでグループ全体の価値向上が期待できます。
鉄道貨物・荷物輸送はトラックドライバー不足の解決も期待されています。一度は忘れられた荷物輸送が生まれ変わるのか。10年後の姿に注目です。
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