子どもが「学校に行きたくない」と訴え…「無理に行かせる」以外に親がやってはいけない“NG行為”とは【精神科医が解説】
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子どもが「学校に行きたくない」と訴えた際に親がやってはいけない行為とは?(画像はイメージ)
9月になり、多くの学校では新学期が始まりました。長い休みを挟んで久しぶりの集団生活に戻る夏休み明けは、子どもにとって心身の負担が大きい時期だといわれています。
もし子どもが「学校に行きたくない」と主張した場合、どうすればよいのでしょうか。その際に親がやってはいけない行為について、「出雲いいじまクリニック」(島根県出雲市)院長で、精神科医、心療内科医、臨床心理士の飯島慶郎さんが解説します。
親がやってはいけない3つのNG行為とは?
お子さんが突然「行きたくない」と言い出すと、親御さんは「今日休ませたら二度と行けなくなるのではないか」「早く理由を聞き出さなければ」と激しい不安や焦りに襲われるのも無理はありません。しかし、その焦りからとってしまいがちな次の3つの対応は、かえって回復を遠ざけてしまうことがあります。
(1)子どもに無理強いをする
まず避けたいのは、強い叱責や感情的なペナルティーによる無理強いです。泣いているお子さんを力づくで車に乗せて学校へ連れて行く、「怠けているだけだ」「親に恥をかかせるな」と怒鳴りつける、「他の子はみんな頑張っているのに」と比較して責め立てる、といった関わりです。
無理強いを避けるべき理由は、単に「かわいそうだから」というだけではありません。学習心理学で「恐怖条件づけ」と呼ばれるように、極度の苦痛を押し切って無理に登校させられた体験は、子どもの心の中で一種のトラウマともなり、「学校=激しい苦痛を感じる場所」という強い恐怖として深く結びついてしまう恐れがあるためです。そうなると、翌朝以降の登校のハードルはいっそう高くなってしまいます。
実際、登校支援に関する研究報告に目を向けても、専門家による支援的な関わりであっても出席日数を改善するのが主で、子どもの不安そのものをすぐに和らげることは容易ではないことが示されています。ましてや、強く叱ったり無理に登校させたりすることがお子さんの回復につながる、それを確かめた研究を、私は知りません。無理強いによって学校への苦手意識や恐怖感を強めてしまうリスクを避けるためにも、焦って登校を迫ることは控えたいところです。
(2)学校に行きたくない理由を問い詰める
2番目に控えたいのは、「どうして行きたくないの?」と理由を問い詰めてしまうことです。親御さんは理由さえ分かれば解決できると考えがちですが、子ども自身が理由をうまく言葉にできないケースが非常に多いというのが診察室での私の実感だからです。
診察室で出会う行き渋りのお子さんの背景には、うつや不安、起立性調節障害といった心身の不調や、未診断の発達特性が潜んでいることが少なくありません。
実際、国内の小児科での調査でも、不登校で受診した子ども80人の過半数(57%)に発達特性が見つかり、その約9割は不登校になって初めて診断されていました。また海外の医学レビューでも、初期は腹痛や頭痛といった体のSOSが先行しやすいことが指摘されており、私のクリニックの診療でもまさに同様の傾向です。
そもそも、心身の不調や発達の特性からくる苦しさは、普段の言葉ではうまく説明のつかないことが多いものです。たとえ大人であっても、自分の不調の原因を言葉にするのはとても難しいことです。
ましてや、体が先に悲鳴を上げているお子さんに「なぜ行けないの?」「何があったの?」と何度も問い詰めてしまうと、「責められている」と孤立感を深め、親を納得させるために無理な後付けの理由を作って問題を複雑にしてしまいかねません。
もちろん、お子さんの方から「友だちとうまくいっていない」「先生に叱られるのがこわい」などと話してくれたときは別です。それは後付けではなく、勇気を出して打ち明けてくれた大切な手がかりですから、疑わずにそのまま受け止めてあげてください。
理由を尋ねる代わりにできることとして、見えたことをそのままスマホのメモなどに書き留めておくのがおすすめです。朝は何時ごろ起きられたか、どんな日に頭やおなかが痛くなるかなど、理由は言えなくても、こうした記録はあとで学校や医療機関に相談するときの大切な手がかりになります。
(3)子どもの課題を親が肩代わりし続ける
3番目は、腫れ物に触るように、子どもがつらがる場面や日常生活の課題を大人がすべて過剰に肩代わりし続けてしまうことです。これは「ファミリー・アコモデーション」と呼ばれます。
「朝起こすのを完全に諦める」「外出の機会をすべて免除する」「本人が嫌がる話題を家庭内で一切タブーにする」といった過度な配慮が当たります。苦しむわが子を前にして誰もがとってしまう自然な防衛行動です。
不安の強いお子さんをもつ親御さんについての研究報告でも、7割以上の人が、つらさを感じながらそれでも肩代わりを続けていました。しかし、すべての負担や刺激を大人が先回りして取り除き続けてしまうと、結果としてお子さんが「思っていたよりも大丈夫だった」と確かめる機会が遠のき、かえって家庭の外へ踏み出すハードルが高くなってしまう側面もあります。
子どもが次の一歩を踏み出すために親ができること
なお、ここまで読んで心当たりがあると感じた方々もいらっしゃるかもしれません。どれもお子さんを思うからこそ出てしまう反応で、一度や二度の対応で何かが決まってしまうわけではありません。「この前は強く言い過ぎたね」と伝え直すところから、十分にやり直していけます。
では、お子さんが無理なく次の一歩を踏み出せるようにするには、どのような環境を整えていけばよいのでしょうか。子どもを叱咤激励して無理に鍛え直そうとするのではなく、周囲の大人が「無理なく踏み出せる足場」を整えてあげることが何よりの助けになります。具体的には、次の3つのステップで環境を整えていくことをおすすめします。
(1)体のリズムを整える
1つ目は、「身体のリズム」を焦らず静かに整えてあげることです。夏休みの間に朝ゴロゴロして過ごしていると、立ち上がったときに血圧を保つ体の力が落ちてしまい、朝起き上がることが物理的につらくなってしまいます。体の水分や血圧の調整に関する実験研究でも、体を動かすだけでは足りず、水分と塩分をきちんと取ることがそろって初めて、立ちくらみしにくい状態が保たれると報告されています。
朝起きたらまずコップ1杯の水やみそ汁を飲ませてあげるなど、体が動くためのスイッチを入れてあげることがおすすめです。
なお腎臓や心臓の病気などで水分や塩分の量を主治医から指示されているお子さんは、その指示の方を優先してください。
また、夜更かしが続くと体内時計はすぐにずれてしまいますが、一晩で無理に戻そうと焦らず、夜のスマホや照明を控えめにしながら、数日かけて就寝と起床の時間を少しずつ早めていきます。
(2)家庭を安心できる場所にする
2つ目は家庭を「責められる場所」にせず、安心して心を休められる場所にすることです。
英国で約10万人の中高生に聞いた大規模な調査でも、夏休みの間に孤独を感じていた子ほど、学校が始まってからの心の状態がよくなかったことが分かっています。これは夏休みに留守番をさせたご家庭が悪かったという話ではなく、安心してつながれる相手がいることが、子どもにとってそれだけ大きいということです。
そして私が診察室で感じるのは、行き渋りのあるお子さんの多くが「親をがっかりさせてしまうこと」をとても気にしている、ということです。「行くの? 行かないの?」という押し問答はいったんお休みにして、好きな話題でおしゃべりをしたり一緒にご飯を食べたりしながら、「学校に行けなくても、あなたの居場所はここにあるよ」と伝えてあげてください。
親から安心感を得られることが、子どもの心のエネルギーを回復させる大きな支えになります。
(3)学校と協力する
3つ目は、「行くか休むか(100か0か)」ではなく、「少しずつ戻れる小さな階段」を学校と一緒につくることです。
不安への対処を扱った心理学の知見でも、不安のぶり返しを防ぐ上で大切なのは、無理に我慢を重ねることよりも「思っていたよりも大丈夫だった」という経験を積み重ねることだとされています。
だからこそ、久しぶりの教室にいきなり戻ることを目指すのではなく、別室・保健室・オンラインといったさまざまな場面を使って、小さな「大丈夫だった」を積み重ねていくことが有効なのです。「朝から夕方まで教室で過ごす」か「一日中家で休む」かの二者択一しかないと、弱っているお子さんは「休む」しか選べなくなってしまいます。
「保健室や別室で1時間だけ過ごしてみる」「放課後にプリントを受け取りに行くだけにする」「オンラインで朝の会だけつなぐ」「玄関で先生にあいさつして帰る」といった小さなステップを、あらかじめ学校の先生と相談して用意しておくことが大切です。
学校の事情によっては、すぐに別室やオンラインを用意できないこともあります。その場合は「朝、学校に行く日と同じ服に着替えてみる」「夕方に少し外を歩いてみる」など、家庭の中で始められる小さな一歩からでもかまいません。これは決して「甘え」や「わがまま」ではなく、心と体に無理をさせずに回復していくための、大切な一歩だと考えています。
オトナンサー編集部
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